マガジンのカバー画像

【俳句】【短歌】の記事

41
俳句・短歌関係の記事をまとめました。
運営しているクリエイター

#長谷川櫂

【俳句】新年詠の鑑賞

 新年、開口よい言葉で始めたい。親戚が集う、旧友と会う。仕事のかたもいるかもしれない。去年と今年の境目は、自然科学の目でみれば、連続したひとつの点だが、何か特別な瞬間をみいだすのが文化である。文学である。  俳人の虚子(正岡子規の弟子)は、「去年今年貫く棒の如きもの」と詠んだ。棒は時間軸の意のみならず、伝統文化の本義、その地で生き続けてきた人々の志を表しているように思えてならない。宮中の歌会始もそのひとつだろう。  言葉は情報の単なる伝達手段に過ぎないだろうか。万葉時代の歌

『太陽の門』俳人・長谷川櫂をよむ

 毎年、蝉が啼き始める頃になると、自然と思い出されることがある。それは戦争である。私は戦争経験者ではないため、戦争について語る資格はないかもしれない。しかし、代々語り継がれてきた経験を自己の感性をもって照らし、智慧へと昇華させることはそれなりの意義があると考えている。  角川「俳句」七月号の冒頭に、特別作品五十句『太陽の門』が掲載されている。戦争という悲劇への鎮魂が主題である。作者の長谷川櫂氏は俳壇における第一人者といって過言ではない人物であり、格調高く重厚な句風という印象