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【俳句】【短歌】の記事

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俳句・短歌関係の記事をまとめました。
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#飯田蛇笏

【俳句】助詞「の」の効用

 俳句を俳句たらしめるものは何であろうか。ひとつに、意味の次元に留まらず、音韻、詩情の世界へ飛翔する点である。  俳句は五七五、わずか十七音で構成される世界最短の詩型である。そのため、一音に重みがあり、散文の場合のそれよりもはるかに与える影響が大きい。そして、俳句には、切れ字の概念が存在し、例えば「に」を「や」に変えるだけで、立ち上がる風景が大きく変わってくる。よく引き合いに出される芭蕉の「古池や蛙飛びこむ水のおと」と「古池に蛙飛びこむ水のおと」の違いである。後者は散文を五

第五十四回蛇笏賞にみる鎮魂歌

 蛇笏賞は、俳句における数ある賞のなかで最も名誉ある賞といわれている。甲斐国の俳人、飯田蛇笏氏の名前を由来にもつ。令和二年の今年は「柿本多映俳句集成」が受賞した。選考委員、満場一致の受賞であった。作者の柿本多映氏は一九二八年滋賀県大津市に生まれ、四十代後半から句作を開始し、桂信子賞、現代俳句大賞、俳句四季大賞、詩歌文学館賞と輝かしい経歴をもつ。  今回は、その「柿本多映俳句集成」より、いくつかの句を紹介したい。選句と解釈は、私の主観であり、いわゆる独断と偏見がみられるかもし