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【俳句】【短歌】の記事

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俳句・短歌関係の記事をまとめました。
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2020年9月の記事一覧

【随筆】米津玄師の歌にみる短詩型文学

 歌は旋律のみにより評価されないだろう。作者からも、映像からも独立した純然たる言の葉として相対したとき、秘められた言霊が真に立ち上がってくるのである。  本稿は米津玄師氏の歌を主に俳句の視点で、私個人の感想を述べたものである。ウェブ上では既に、歌の解釈を巡り多くの評論が発表されている。それらの解釈の上書きにならないよう、一俳人が前提知識なく歌詞(テクスト)と相対したときの気付きを述べ、新たな議論の端緒となれば幸いである。また、米津玄師氏及びその関係者へ最大限の敬意を表して執

【俳句】助詞「の」の効用

 俳句を俳句たらしめるものは何であろうか。ひとつに、意味の次元に留まらず、音韻、詩情の世界へ飛翔する点である。  俳句は五七五、わずか十七音で構成される世界最短の詩型である。そのため、一音に重みがあり、散文の場合のそれよりもはるかに与える影響が大きい。そして、俳句には、切れ字の概念が存在し、例えば「に」を「や」に変えるだけで、立ち上がる風景が大きく変わってくる。よく引き合いに出される芭蕉の「古池や蛙飛びこむ水のおと」と「古池に蛙飛びこむ水のおと」の違いである。後者は散文を五