【童話】緑のない色えんぴつ
二十年ほど昔、五月をむかえても肌寒い年がありました。ゴールデンウイークにそぐわない雨がふり、都会のマンションで暮らすアキラくんは、家の中でお絵かきをしていました。
「ねえ、緑の色えんぴつ知らない?」
「知らなーい」
つみ木遊びをしている弟のタカシくんは、そっぽをむいて答えました。
「昨日使ってたでしょ」
「その時はあったもん」
すると、アキラくんはつみ木遊びのじゃまをして、せっかくできた小さなお城をこわしてしまいました。
「お母さん! お兄ちゃんがいじめる!」
「悪いの