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〜ライブレポート〜中村佳穂 うたのげんざいち2022

ブザーが鳴り、それまで流れていた音楽、ヒトの動き、話し声、全てが無くなった。あるのは、照明とピアノだけ。

右袖から中村佳穂が黒くて大きなベールに身を包みやってくる。「竜とそばかすの姫」の竜を思い浮かべた。

見かけは黒く醜い(全然醜くはなかった)が、そこから奏でられるピアノの音は優しくやわらかい。ポロンポロンと音が弾んで転がっているようだった。

即興の詩を音楽に合わせていつものように歌う。話す。その時曲名は分からなかったが、Twitterで見る限りBeatlesのblackbirdという曲も歌っていたらしい。

前奏が即興だからこそ、次に何の曲が来るかワクワクする。次に始まったのはGUM。あのグルーヴをピアノひとつでやってみせ、そして歌う。すごい。そんな簡単な言葉しか思いつかない。

続いて、アイアムア主人公。始まった瞬間、胸の高鳴りを感じる。あ、スイッチが入った。自分の中のスイッチが。


ライブってやっぱり非日常な空間で、最初の曲から没入することってあんまりない。ただ、何かをキッカケにして、ライブにのめり込める瞬間がある。その後はもう周りの人は視界に入らなくなり、ただステージのみを見つめ、音を聴くようになる。

今回のライブのスイッチは、このアイアムア主人公だった。イントロをアカペラで歌いはじめたその瞬間だった。耳が本当に心地いい。ラップとメロディとリズムと全てが心地よかった。

座ったままで手を叩くことでしか音を発散できない状態がもどかしかった。その分音を身体の中に溜め込むことが出来たのだけれども。会場のど真ん中に座っていて、全身で音のシャワーを浴びていたような感覚だった。

続いては聞いたことのない曲。タンゴっぽいちょっと砕けた感じの曲。曲名は悪口?って言っていたかな。評論家気取りで、役者気取りで自分の言葉を持たない人に批判されたってどうだっていい。何を言われたって自分の言葉で表現していく。そんな想いを感じた。

「舟を編む」っていう言葉が歌詞の中にあって、三浦しをんの「舟を編む」から取ってきたのかなとか思ったり。一回読んだことのある小説で、辞書を作っていくヒトの物語、言葉を大切にする人の小説だった。
発する一つ一つの言葉に情熱を注いでいる部分で共通してるなと。(もう一度読み直そうかな)。

お次は2曲続けてシャロン、SHE'S GONE。シャロンはそれほど何回も聴いたわけではないが、シャロンと優しく呼びかける歌声が透明で美しかった。どうやったらあんなに細く強く柔らかい声が出せるのだろうか。

曲は途切れることなくSHE'S GONEへ。優しく包み込まれるようなシャロンの伴奏から転調して、一気に浮遊感が生まれる。ピアノの音にエフェクトがかかりステージはさらに異空間へ。

曲が終わり、また即興が始まる。次の曲は何かなと楽しみにしていたら、なんと、なんと、なんと、

上原ひろみが出てきた。

会場、大熱狂。

ドーパミンドバドバ。身体中が熱くなる。その後はもうね、記憶ちょっと飛んだ(笑)

出てきて1曲目にやった曲はPOiNTっていうみたい。
転がるように愛してっていう言葉が頭の中に残ってる。

上原ひろみの音は踊ってるみたいだった。中村佳穂と一緒にフォークダンスしてるみたい。お互いを引き立て合い、楽しんでいた。どっちも個性的なはずなのに、お互いを打ち消し合わないってやっぱりプロだなぁと。

次に披露されたのはさよならクレール。待ってました。曲がリリースされてから何回も聴いてきた。今日のライブ、ピアノの弾き語りってことを会場についてから知ったから、どんなアレンジされるのか楽しみでしかなかった。

ひろみちゃん(そう呼んでって言ってたみたいなんで今更ながら勝手に呼ぶ)の伴奏に乗っかると原曲の勢いはそのまま、ジャジーな雰囲気に。

途中のセッション的なところ、これ歌に戻れる?ってくらい訳わからん音遊びしてたのに、決めるところはバシッと決めて、ラストスパートへ。

ブレイクする最後のパート。あの声だけになる瞬間がとてつもなく好きだ。その後のアウトロ、パーカスの部分も余すことなくピアノで表現される。

原曲は音が迫ってくる感じだけど、ライブでは自分が風船になって、音という空気が体の中に吹き込まれていくような感覚だった。最初は意外と優しい音でくるか!って思っていたけど、だんだんと緊張感が高まっていく。最後には風船の口を解いて、ゆっくり元に戻すように柔らかい音になる。

曲が終わり、その延長線上でひろみちゃんが伴奏を弾き続けたまま、中村佳穂はマイクを握り会場の真ん中へ。伴奏に乗せて言葉を紡いでいく。

「分かるからあなたの悲しみが分かるなんて言えないことは分かるよ。」

どこかで聞いたことがあるような言葉だったけど、今日のライブで言った言葉は間違いなく中村佳穂から出てきた言葉だった。

それから始まる、忘れっぽい天使。

みんな悲しさを持ちあわせて生きているし、時間が経てばこの悲しさは消えていくかもしれない。この苦しみの後には何か良いことがある。分かってる。そんなことは分かってる。でも、私はいまの悲しみをどうにかしたいんだ。どうにかしてほしいんだ。

こんな歌詞の曲。
そして、こんな人に対して、

上手く慰められたらいいんだけれど。

この言葉で曲は終わる。

曲前の言葉はこの最後の言葉に対する中村佳穂なりの答えじゃないのかなとライブを振り返って思う。

気付けば泣いていたなぁ。ボロ泣き。実際この時どんな想いで、とかは考えていない。ただただピアノと歌声で泣いた。やっぱり音に浸れるのはライブの醍醐味。 

ここでひろみちゃんは退場し、中村佳穂のソロへ戻る。次のアルバムに入るであろう曲が始まった。この前の期間限定のライブ配信でやってたのかな、聴き覚えがあった。夜の東京の街を走りながら聴きたい曲。アルバムが待ち遠しい。

そして、最後の曲。ついに来ました。アイミル。これは本当に歌詞が好き。分かりやすくて力強い曲で、聴くたびに元気をもらえる。曲が進むにつれて、みんな手拍子を始めて会場が一体になる。

間奏の部分、本当は急にリズムを変えてお客さんを驚かせよう(?)としていたのかもしれないけれど、手拍子が始まったから間奏の直前に、「次速くなるよ!」ってちゃんと教えてくれた(笑)

そんなところからも、どんな時もみんなで音楽を楽しもうという気持ちが伝わってくる。そして会場もボルテージMAXだった。

楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、気付けばライブが終わって中村佳穂が拍手とともに会場から出ていく。

しかし、拍手は止むことなく段々と拍手の粒が揃って行く。そう、コロナ禍ならではのアンコール。

ただこの拍手でのアンコール、みんなの気持ちが昂まるとともに拍手のスピードが上がって4拍子→8拍子へ。速くなりすぎると、8拍子→4拍子へ。またスピードが上がって4拍子→8拍子→4拍子→・・・の繰り返しになるのだが、、、(あるあるじゃないですか?)

今回のアンコールは一定のリズムを保ち続けていた!!
中村佳穂が早着替えをしていたために、長時間の拍手だったのに!!!(早くないとは言ってない)

そして早着替えを完了させた中村佳穂がステージに現れる。もうこの時点で最高よね。アンコール1曲目は今日リリースされたばかりのHankだった。

ストリングスの音とはまた違った優しい音色で、ホロホロと音が溢れていく。優しく優しく言葉が溢れていく。
会場の体温がほんのりあったかくなるような感じ。

曲名の由来はメロディ(歌詞?)が思い浮かんだ時に近くに阪急百貨店があったからだとか。(笑)それで意味を調べたら「糸の束」でいい感じだったので、そのまま曲名になったということらしい。

さよならクレールの「クレール」も思い浮かんだ言葉を調べてみたら光っていう意味で、そのまま使用したって言ってた。語感から言葉を選んで曲が生まれるって面白いなって思った。

そしてアンコール2曲目は、ひろみちゃんがステージに戻ってきて、口移しロマンスをピアノ2台で演奏する。

どこまで合わせていてどこまでが即興なのか全く分からなかった。というか、中村佳穂こんなにピアノ上手かったっけ?ってなった。もちろん上手いのは分かってたけど、上原ひろみとここまでやり合えるほどだったとは。

それに、1月末にオファーかけたと笑いながら言ってたけど、今日2/4よ?(笑)こんなクオリティ高いもの出来る?いつ練習したんよ(笑)

アンコールが終わり拍手喝采のなか、2人が退場する。あぁ、今まで行ったライブの中でも最高のライブだったかもしれないと思った。ら。

拍手が鳴り止まない。え?もしかしてアンコールアゲインある?いやぁ、まさかね。とか思っていたら、本当にもう一回出てきて、「言われたらいつまでもやっちゃうよ〜」なんて言いながらひろみちゃんと2人で悪口を再演してくれた。

本当に最後の最後の一曲。ただただ楽しいっていう気持ちしかなかった。歌詞とか曲調はそんな感じじゃないんだけど(笑)

今日のライブは間違いなくこれまでで最高のライブだった。上原ひろみの生演奏が聴けるっていうサプライズもあって、一生忘れられないライブになるだろう。これ以上のライブはないんじゃないかという一方で、これからもこの最高を更新していく中村佳穂のげんざいちを見せてくれるのだろうなという期待もしている。楽しみでしかない。

途中からの文章は一晩寝てから書いているので曖昧な部分もあるけど、総じておしゃべりしてるよなライブだった。

こんな音はどう?それもいいね!じゃあこれは?最高じゃん!そんな会話が聞こえてきそうなステージだった。

記憶をなんとかたどって感じたことをつらつらと書いてたら最終的に4,000字超えた。読みにくい部分も、間違っている部分もたくさんあると思うけど、この感動を忘れないために残します。

セトリは覚えきれなかったので、Twitterにあげていた方の曲目を参考にしました。ありがとうございます。

次のライブも絶対行きます。

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