見出し画像

たんぽぽ、FF7のクラウド君を語る

クラウド君

この物語の主人公のクラウド君なのです!
FF7という物語は彼の物語なのです
わたしはこのキャラクターがとっても好きなんですけど、その理由は彼がどこにでもいる弱い人間だからなのです。

彼の少年時代は孤独でした
憧れの女の子に声をかける勇気さえ持てない彼は、いつもひとりぼっち
さみしがり屋で臆病で…それによって荒れてしまったりした弱い少年でした

そんな彼にも転機が訪れます
14歳の時にミッドガルに出て神羅カンパニーの”ソルジャー”になることを目指しました
当時はウータイとの戦争もあり、ソルジャーは皆の憧れの的でした
クラウド君も当時の多くの少年と同じように憧れたのです
あの英雄”セフィロス”に

でも動機はすごく個人的な話で、もちろん世界を救うとかそういうのじゃなくて
今まで自分を認めてくれなかった村の人を見返すために
そして気になるあの子に認めてもらうために
その小さな決意を満点の星空の下、意中のその子に伝えるのでした

で、そのあと上京して神羅カンパニーに入社することはしたんですけど、もちろんソルジャーにはなれませんでした!

ソルジャーと言えば神羅のエリート部隊、一番下のランクの3rdだってそうそうなれるものでは無いのです
なにせ最高ランクの1stともすれば、世界に数人しかいないわけですから
別に伝説の勇者の血を引いてたりするわけでもない平凡な一般人のクラウド君がなれるはずもなく、一般兵として任務に従事していくわけです。

もうこの時点ですごい親しみが持てるキャラクターなのです!
だってこんな経験、みなさん大なり小なりあるわけじゃないですか
そんなわけで等身大の、どこにでもいるような平凡な少年
臆病で寂しがりやで、でも優しくてちょっとだけ一歩を踏み出す勇気を持つ少年
それがクラウド君なのです

そんな彼にも転機が訪れます
あの英雄セフィロスと、親友のソルジャー1st同行の元
故郷ニブルヘイムの調査任務を行うことになりました。
これには困りました
ソルジャーになって故郷に錦を飾るはずが、自分はただの一般兵
決意を誓ったあの子にも合わす顔が無い
故郷の村の入り口で、彼女の姿を見つけてしまった彼は
堪らず自身の顔をマスクで隠したのでした

簡単な任務だと思われていましたが、セフィロスが任務地で”何か”を発見してから様相が変わります
ひどく動揺した様子のセフィロスは、ニブルヘイムに在った”神羅屋敷”と呼ばれる古い研究施設にこもりきりになります
昼夜問わずに資料を読み漁り続けるセフィロスに、村人や同僚のソルジャーたちも困惑を隠せないまま、数日が過ぎます。

そして、英雄セフィロスは凶行に及びます

錯乱なのか乱心なのか、それとも確信の上なのか
セフィロスは村人を次々と凶刃にかけ、村に火を放ちます
おそらくクラウド君の唯一の肉親であるお母さんも、セフィロスさんの手にかかり亡くなっています

事の次第に気が付いたクラウド君は悲しむ間もなくセフィロスさんを追います
向かった先は初期の任務地であったニブルヘイム魔晄炉
セフィロスさんはそこに居ると確信を持って

クラウド君がたどり着いた時にはもはや悲惨な有様でした
セフィロスに斬られ重傷を負った幼馴染と、止めようとした同僚の無残な姿を目の当たりにして、クラウド君は覚悟を決めます

本来英雄セフィロスに一般兵であるクラウド君が敵うはずがありませんでした
一回は不意を突いて一撃を与えたものの、止めを刺そうとしたところであっさりと返り討ちにされます
クラウド君の身体を貫く正宗
死に至る傷を負いながらもクラウド君は諦めません
最期の力を振り絞り、セフィロスさんをライフストリームに叩き落します

クラウド君はやり遂げました
焼き払われた故郷の恨みを晴らすために
好きなあの子を救うために

幸い、と言えるかわかりませんが、クラウド君と親友のソルジャーさんは神羅カンパニーに回収され一命を取り留めました
そして貴重なサンプルとして実験体という形で数年間監禁されることになります

ある日監視の隙をついて親友のソルジャーさんの手引きの元、監禁されていた神羅屋敷から逃げ出します。
この時クラウド君は重度の魔晄中毒、つまり強い魔晄の光を浴び続けた結果により自我を失った状態でした
なんとか追っ手を撒いて、ミッドガルに向かう途中、ヒッチハイクでもしたのでしょうトラックの荷台の上で、親友のソルジャーさんはクラウド君にかたりかけます
ミッドガルで何でも屋でも二人で始めようと

しかし神羅の追っ手に追いつかれ、二人はミッドガルの鼻先で離ればなれになってしまいました。
ミッドガルで何でも屋をやる
親友のこの言葉を理解していたのかどうかわからぬままミッドガルに歩き出すクラウド君
その手には親友の使っていた大剣が握られているのでした

ミッドガルのスラム街にある駅のプラットフォームで、うめき声を上げながら座り込むクラウド君
この世界では珍しい光景では無いのでしょう、見て見ぬふりをする住人達
そんな中、声をかける一人の女性が居ます
生き別れた幼馴染の女の子でした

彼女に名前を呼ばれた瞬間、彼に変化が起きます
実験と称して彼に埋め込まれたジェノバ因子には特性があり、身近な人間の心を読み取り姿や声を変えることができます
この時クラウド君は幼馴染の心を読み取り、彼女の理想とするクラウドに成りすましました
ソルジャー1stとして活躍するクラウド・ストライフに

幼馴染の子は彼を反神羅組織”アバランチ”というテログループに誘います
ファイナルファンタジー7の本編はここから始まります

プレイヤーが最初に目にするクラウド君は、元神羅のエリート部隊、ソルジャーのクラス1st!
トップクラスの戦闘能力を持ち、常に慌てず冷静沈着、ピンチの時にも軽口をたたき華麗にミッションをこなす
これが彼の思い描く理想のクラウドでした
身体能力は実験によりソルジャーと同等になり、振る舞いは親友のソルジャー1stを真似る
一見にして完璧な物語の主人公!
幼馴染も、周りの人物も、プレイヤーも彼に信頼を寄せます

でも、
ちょっとした言葉尻
幼馴染との記憶の齟齬
ちぐはぐな言動と行動
ささやく内の声
そしてセフィロス…

様々な要因から不信が芽生えます
彼は本当にクラウドなのか?
クラウドでなければ何者なのか

信じたい幼馴染
信頼する仲間
そして信じられない自分自身を抱え
物語は進みます

ここはゲーム的にも非常に上手い誘導の仕方だと思いました
演出の一つとしてクラウド君が操作できない状況がちょくちょく出てきます
プレイヤーがプレイヤーキャラクターを操作できない
さらには何者かがわからない
これはゲームプレイングに置いて実に効果的な演出だと思いました

そして、その不信不安はセフィロスとの再会をもって極点を迎えます
白日の下にさらされるクラウド君
彼のまとったソルジャー1stのクラウドという仮面は無残にもはぎとられます

ここで彼が放った言葉を引用します

「特にティファ……さん。本当にごめんなさい」
「いろいろ良くしてくれたのに……何て言ったらいいのか……俺、クラウドにはなりきれませんでした」
「ティファさん……いつか何処かで本当のクラウド君に会えるといいですね」

このセリフを聞いたときに私は頭を殴られたような衝撃を受けました
いままでプレイヤーの分身として操作していたキャラが何者かわからないのです

このセリフを聞いて混乱する仲間たちの中
幼馴染の女の子は声も無く崩れ落ちるのでした

わたしはこのセリフには二つの意味があると思っています
一つは言葉通りのままです
ここに至るまでに、セフィロス(ジェノバの擬態)によって、クラウド君は散々自分が偽物だと、ニブルヘイムのクラウドとは別人なのだと心理操作されます(これはプレイヤーに対してのミスリードも兼ねていると思われます)
よってクラウドではない別人という刷り込みの元の発言と取れます

もう一つはクラウド君の本心からの謝罪です
彼は自分の思い描くクラウドになれませんでした
故郷のみんなを見返すって決めたのに
幼馴染の女の子と約束したのに
期待に沿えず、願いを叶えられず
かと言ってそのことを伝える勇気も持てず
現状の、本当の自分が認めらえず
ずっと理想のクラウドを演じてきた
そんな彼の本心からの謝罪

「俺、クラウドにはなりきれませんでした。」 ごめんなさい
「いつか何処かで本当のクラウド君に会えるといいですね」 さようなら

好きなあの子への、ニブルヘイムのクラウド君の謝罪と別れの言葉
わたしはそんな気がするのです

その後、クラウド君は再びライフストリームに身を落とし、精神世界で自分を探す旅に出ます

幼馴染の力を借りて精神世界で自分と向き合うクラウド君
ここで彼はニブルヘイムでの日々、挫折した過去、そしてセフィロスに立ち向かった自分を取り戻します
ソルジャーになれなかった弱い自分を
幼馴染を守るために立ち向かった強い自分を

こうして彼は最後の戦いに赴きます
すべてを滅茶苦茶にされてしまった元凶を倒すため
過去を決別するために
そして未来を取り戻すために

「よし、行こうよ みんな」

最後の戦いに挑むさいの、この素朴な言い回しが
本来の彼の帰還を表しているのだと思います

冒頭でも申し上げましたが、私はクラウドというキャラクターが大好きです
臆病で寂しがりやで、でも優しくて好きな人を守るための勇気をもった青年
FF7はそんなどこにでも居そうなありふれた人物が世界を救う話なんだと
わたしは思います


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?