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『戦争』と『平和』について実質的に考える

~ Amazonレビューより転載 ~

宇野常寛責任編集『PLANETS 10』

およそ3年ぶりに発行された本誌は、『【特集】「戦争」と「平和」の現在形。』
戦争を取り扱うとスポンサーが付き難く、これをテーマにするかだいぶ悩まれたようですが、編集長が抱く興味の範囲や趣味嗜好がそのまま出るのが「雑誌」の真骨頂。その選択は大正解でした!

まず、「安倍晋三」や「9条」といった文言はほとんど紙面に登場しません。そんな狭義の戦争論は「月刊H◯n◯d◯」や「週間◯曜日」で存分にやってください。ここで扱われるのはもっと広義の戦争についての考察です。

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・映画が総力戦を生み、テレビが冷戦を支えたように、インターネットはテロリズムと歩調を同じくしているのだ。(宇野常寛)

・戦争を語る言葉をリセットしないと、右左で対立して空回りするだけだと思います。(伊勢崎賢治)
・もはや国際社会が安保理を通して対策しようとしても、事態が改善しない。(黒井文太郎)
・「国益とは、選択肢の数だ」という考え方に触れました。自国の選択肢、同盟国の選択肢をどのように増やしていくかが、およそ外交の基本目標なのだと思います。(橘宏樹)

・ 積極的平和論的に「平和」の言い換えは「安定」ですし、消極的平和論的には「安全保障」ですね。(藤井宏一郎)

・戦争はゲームを使い、ゲームも戦争を使ってきた。しかし、ゲームは単に戦争の想像力を加速させるだけのツールではない。(井上明人)

・リアルな殺傷行為それ自体にはそれほど多くの人を惹きつけるような快楽性はないと思うんですよ。(簗瀬洋平)
・つまりVRでリアリティを提示していくことは、ロマンティシズムに駆り立てる一瞬の高揚というものを中和する上では役に立つ。(栗原一貴)
・「テロを決行するのは、とりあえず今日のログインボーナスをもらってから考えよう」みたいなダメさ加減まで持っていければ有効になるかもしれない。(西田健志)

・原爆も終戦も、ピリオドでもなんでもない。むしろ先のこと、そこからさらに先までどんどん流れていってしまうこと。そういう視点でこそ、戦争は本来描かれないといけなかったんではないかと。(片渕須直)

・どこで起こってもおかしくないから、戦線というのは存在しない。「劇場型のテロ」という言い方があるけど、それ以前にテロって本来そういうものなわけ。(押井守)

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時代背景によって変遷する戦争の形。戦争が起こるメカニズム。テロを起こす「個人」とそのバックボーンとなる国家や宗教といった「共同幻想」について。逆に「平和」とはどういう状態?などなど…

多面的かつ本質的な議論が繰り広げられています。SNSとTVワイドショーの結託によってインターネットポピュリズムが蔓延する中で、ここに立ち上っているのはまさに〈評論〉です。編集者であり評論家である宇野氏の手腕が冴え渡っています。

巻頭と巻末で繰り広げられている「遅いインターネット計画」。
インターネットの特性である「速さ」は「ポピュリズム」との諸刃の刃である。ならば、より遅く・より深く。
「雑誌」的な場を作り、「評論」を復権する。問題意識を同じくする読者たちと新たな船出を図っているとのこと。

宇野氏とPLANETSの今後に期待しています。

P.S. 戦争特集以外にも読み応えある記事満載です。イケハヤランド潜入記とか、雑誌「走るひと」とのコラボとか。(この影響で先週から走り始めました 笑)

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