甘い水
ただ蛇口をひねっただけで出てくる水をこんなにも美味しいと思ったことは今までなかった。大きなグラスにたっぷり汲んで、ごくごくと喉を鳴らして、僕はそのなんの変哲もない水を飲み干した。
乾ききっていた僕のからだの中に、その水は浸み込んでじわじわと末端の細部まで広がってゆく。乾ききっていたからだが、その水のおかげで柔らかにしっとりとしてゆくのが自覚できた。
僕は今、生きている。
自然にそう思うことができた。
当たり前のように目覚め、当たり前のように動く。
そのことに何の感慨もないまま、今まで僕は生きてきた。
僕はしあわせだったんだ。
本当は、ものすごく。
もう一杯、水を飲みたくなったので、ここでこのお話はおしまい。
またね。
ありがとうございます。 嬉しいです。 みなさまにもいいことがたくさんたくさんありますように。