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つる草のように

ここにいて毎日詩を編むようになったのはもう随分前のことのようにも思うし、つい数日前のような気もしてしまうのだ。

この場所には毎日ほとんど変化というものがない。

そして穏やかに静かにただ時間が過ぎてゆく。


毎日毎日詩を編んでいる。
毎日毎日変わらずに。

こんな暮らしがあるなんて知らずにずっと生きていた。

こうしてここにいることは僕の望んでいたことなのだ。
たぶん、きっと。

風が吹き抜けて行った。
冷たくはなかった。

髪の毛が揺れた。
心も揺れた。

そうしたら言葉がふっと降りてきた。
美しい言葉だ。

その言葉を毎日開くノートに書いて、何回も読み直す。
繰り返し、繰り返し。

一言一言の言葉の意味と響き、
何回も何回も、繰り返し繰り返し、見直して書き直して並べ替えてまた書いて。

言葉の持つ優しさと厳しさと残酷と。

言葉はいつも心の中を映しだしてくれて僕をどこかに運んでいくんだ。
どこまでも、どこまでも、どこまでも、どこまでも。


時間なんて概念は多分ここにはないんだと思う。

来る日も来る日もおんなじで、なんにも変わっては行かない。
何にも変わらない。

変わらないんだけど変わっているような気もする。

わからないんだ。
わからないんだ。
わからないんだ。
わからないんだ。

そしてノートは埋まっていく。

僕の綴った言葉がここにぎっしりと詰まっていて過ごしてきた日々の中から生まれてきた言葉たちが整然と並んでいてどこにもいかずにここにある。

言葉は生きていて成長して伸びていく。
つる草のように。

しなやかなそのつるはするすると伸びて行き建物も地面も森も川も山も海も全部覆いつくしてしまいそうな勢いなのだ。

形のない言葉が形のあるものを包み込み動かして人の心を変えていく。

人の心だけでなく生活も変えていく。

だから言葉を綴ることは、詩を編むということは本当に大切なことなのだ、と思うのだけど、実際は何も生まないものとして片づけられてしまっている。

どうしようもない。
どうしようもないけれど、それでも僕は詩を編み続ける。

ここにいて、時のないここにいて、誰にも読まれることのない言葉を綴り続けている。
言葉をつなぎ続けている。




ありがとうございます。 嬉しいです。 みなさまにもいいことがたくさんたくさんありますように。