見出し画像

生活のたのしみ展@note 始動について。

「これ、じつはかなり大変な話じゃないですか?」

打ち合わせを終えて、大好きなおそば屋さん「蕎麦きり みよた」の前に並んでいたとき、はたと気づいてぼくは言った。一緒に並んでいたほぼ日・永田泰大さんはあきれたように笑う。「だから言ったじゃないですか、それ大変ですよって!」。しかし、もはやここはポイント・オブ・ノー・リターン。引き返すことのできないところまで事態は進行している。なんといっても「こういうのをやりましょう」と言い出したのは、ぼく自身なのである。戦慄をおぼえながらぼくは席につき、辛味肉つけそばを注文した。

 ◇ ◇ ◇

みなさま、こんにちは。ライターの古賀史健と申します。ふだんは個人用の note を週日更新しているのですが、訳あって今回、ほぼ日さんが開催するイベント「生活のたのしみ展」の連動 note アカウントを運営させていただくことになりました。

もともとのきっかけは、明日6月6日に発売される『古賀史健がまとめた糸井重里のこと。』という「糸井重里の自伝のような」文庫本です。

この本の執筆にあたっていた昨年末だったか、あるいは今年の頭だったか、担当編集でもある永田さんから、「いつごろの発売をめざしましょう? いや、急がせるつもりはまったくないのですが」というソフトな催促をいただきました。いろんな締切に追われて頭がパニック状態だったぼくは、かなり当てずっぽうに「6月6日にしましょう!」と即答しました。

ほぼ日の創刊記念日であり、20周年記念日でもある2018年6月6日。この日に発売するのは、なんとなく感慨深いし、こういう「自伝のような本」を出す意義もありそうだ。そして遅筆家なぼくにとっても、ずるずる先送りできない「このタイミングしかありえない締切」となってくれる。永田さんの了解を得て、われながらナイスアイデアだと思って執筆活動に励んでいたところ、今度は糸井さんから気になる情報を入手します。

「今年は創刊記念日にあわせて〝たのしみ展〟をやるんだよね」。

生活のたのしみ展——。それは、株式会社ほぼ日が企画・運営する、セレクトショップ通りのような、フェス(お祭り)のような、不思議で、にぎやかで、たのしく前向きなエネルギーにあふれた、その場にいるだけで元気になってくる、どこにもなくて形容のしようもない、とくべつな商店街イベントです。

だったらこの本を「生活のたのしみ展」で販売しよう。なにがなんでも6月に間に合わせよう。そして当然、ぼく自身もそこに参加して、スタッフのひとりとしてたくさんの人にこの本を届けよう。ラストスパートに、俄然力が入りました。

そしてどうやら発売が間に合うらしい、当初のスケジュールどおり、6月6日に刊行できるらしい、となったとき、「じゃあ、どうしよう?」の打ち合わせがはじまります。

もちろん「生活のたのしみ展」会場の一角で、この本を発売するのは問題ない。でも、それだけじゃおもしろくない。せっかくこれだけの「場」があるのだから、なにかおもしろいことをやろう。おおぜいのお客さんにとってもおもしろく、ぼくたち自身にとってもおもしろい、なにかをやろう。

最初に出てきたプランは、本の発売イベントの定番ともいえる、著者サイン会でした。糸井さんとぼくが本にサインをする。ぼくのサインなんてじゃまでしかないだろうけれど、サインをもらっているあいだ糸井さんとお話しすることができる。自分がひとりの読者だった場合で考えても、じゅうぶんすぎるほどうれしいイベントです。でも、サイン会だったら「ここ」じゃなくてもできる。もっとおもしろくて、「ここ」じゃないとできないなにかを考えよう。議論はふりだしに戻ります。

続いて「トークイベントはどうだろう?」という案が出ました。

誰としゃべるのか、なにをしゃべるのかはともかく、会場のどこかでトークイベントを開催する。たしかに人選さえ間違わなければおもしろい催しになりそうだけど、どこか違和感というか、恐怖心というか、滑る予感が拭えません。

これまで何度もトークイベント的な場に駆り出されたことはあるのですが、どうにも「ああ。おれ、いいこと言ってるなあ」と自分に酔えた経験がないのです、ぼくは。そしてトークイベントとは、ある程度は自分に酔える人がやってこそ、おもしろくなると思うのです。そもそも「しゃべり」が苦手だったからこそ、ライターの仕事を選んだぼくですから、トークイベントで誰かをよろこばせる自信なんて、まるで持ち合わせていないのです。ああ、おしゃべりはむずかしいなあ、どうしようかなあ。


と、そんなことを考えていたとき、ふと浮かんだプランが「だったらもう、書こう」でした。


この「生活のたのしみ展」というイベントについて、現場からの実況中継のように、なにかを書こう。それがいちばん自分らしい参加のあり方じゃないか。もちろん、ほぼ日読者ならご存知のように、ほぼ日には永田さんを筆頭とする乗組員の方々が随時更新する「テキスト中継」という名物コーナーがある。それとバッティングしないなにかを、ぼくも書こう。


じゃあ、なにを書くのか?

いろいろと考えまわった結果、けっきょくぼくが伝えたいのは「ひと」なんだと気づきました。

ほぼ日が開催するイベントのなにがすごいって、そこに集まる「ひと」なんですよね。

乗組員やスタッフの方々はもちろん、お客さんの一人ひとりがほんとにすごい。やさしさと、思いやりと、あかるさと、一緒に「場」をつくろうとする意志と、この「場」をおなかいっぱいたのしみ尽くそうとする気持ちに、毎回くらくらしちゃうんです。

そこでぼくは「生活のたのしみ展」の期間中、会場でたくさんのひとに声をかけ、お話を伺い、そのインタビュー記事をここにまとめていく、という企画にチャレンジすることにしました。

冒頭に申し上げたとおり、きっといま思っている以上に大変です。お客さんや、ほぼ日の乗組員の方々、それからアルバイトの方々など、どなたにどれくらいの話を伺えるのか、何本くらいの記事をアップできるのかさっぱりわかりません。ですが、とってもたのしそうだし、やりたいし、やります。

(こういうパネルをもってお声がけしますので、もしよかったら話をしてあげてください。お顔写真も掲載させていただけると、うれしいです)


そしてまた、ぼくの会社のライター・田中裕子さんには、同じこのアカウントで「生活のたのしみ展」各ブースの紹介記事を書いてもらう予定です。彼女について、その他の詳細については明日、また書いていきますね。ぼくも彼女も、このイベントに参加できること、とてもうれしく思っています。

それではどうぞ、「生活のたのしみ展」が終了する6月11日(月)までのあいだ、よろしくお付き合いくださいませ。