どうやら、「中国が、銅の高品位原料(素材)の輸入を減らしている」らしいのです。帰結する先は、平たく言うと「自分でつくれるもんね」とのこと。安価で仕入れた鉱石や、スクラップ原料を使いこなして、マージナブルな製品づくりを行っている模様です。
MINING.COM 記事の概要
引用記事の概要は、下記の通りです。
銅の高品位原料とか素材って?
おそらく、この記事で言及されている、「unwrought copper and copper products」というのは、世界各国の輸出入に係る貿易コードとして知られているHSコードに紐づいています。
7403の概要
74類という区分が、「銅及びその製品」を指します。その中で、高品位原料(素材)は、74類03番を中心に定義づけされています。
さらに、この分類を深堀してゆきます。結論、「銅の原料・素材と言っても、一口に括ることが難しいんだね」ということです。
「精製銅」とは
「銅合金」とは
「マスターアロイ」とは
「銅・亜鉛合金(黄銅)」とは
「銅・すず合金(青銅)」とは
「銅・ニッケル・亜鉛合金(洋白)」とは
「銅・ニッケル合金」とは
日本の産業が、今後も生き生きと発展するための方策
高品位原料
おそらく、当該記事の中で言及されている数字は、「HS: 740319」までの銅含有が比較的高い原料・素材に対応しているものと考えられます。
どの程度まで、コード区分をもとに分析された内容なのか判断しかねますが、「高品位」で括ることで、川上の銅製錬・製品メーカーの動きが把握できます。最終的には、「国家が、付加価値の高い銅製品をどのように扱っていくのか」といったことがうかがい知れるようになります。
その他の合金
言い換えると、「HS: 740319」以下、細分化されたその他のHSコードをもとに、「銅・亜鉛合金(黄銅)メーカー」界隈の動きだったり、「銅・すず合金(青銅)メーカー」界隈の動きが推測できます。
一般的には、高品位な原料・素材(精度の要求される製品群)は、ハイテクを筆頭とした付加価値の高い産業に素材として利用されるか、その他の合金メーカーの原料として利用されます。
中国における、黄銅・青銅(合金)界隈の原料事情は、若干特殊なので、詳細については、今後の投稿で明らかにしてゆきたいと思います。
未来予想図
今後、仮に「中国が、銅製品の地産地消に固執する」のであれば、動脈業界におけるサプライチェーンの抜本的な変革は不可避です。これまで、中国に必要とされていた付加価値の高い製品群が売れなくなります。
そして、もし「中国が、今後も、自身の経済圏の中から安価な鉱石や、スクラップ原料を安定的に調達できる」のであれば、静脈業界におけるサプライチェーンの抜本的な変革は不可避です。これまで、中国に必要とされていた石ころ、クズが売れなくなります。
この手の話は、単純に「中国が、付加価値の高い銅製品の輸入を減らした」と一言で括ってしまうと、その前後にある壮大なライフサイクルが見えなくなってしまいます。
悠長に、「そのうち、『また売ってください』とか言って、擦り寄ってくるぜ、あいつら」みたいな思想では、時代に取り残されかねません。
今般の“動き”は、日本のニッチな産業・動静脈が一丸となり、「国としての資源政策を高らかに宣言する」必要性を強く認識させるものです。
一生懸命、大国に抗おうとしても、結局は後ろ向きな意見しか出ないでしょう。そうではなく、「日本が発揮できる強みをどう活かすのか」であったり、「(大国と)どのように共存していくのか」、「彼らの弱みを補完できるか」など、日本の産業が、今後も生き生きと発展するための方策が必要なのではないかと考える次第です。