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【銅相場】中国が、銅の高品位原料(素材)の輸入を減らしている

どうやら、「中国が、銅の高品位原料(素材)の輸入を減らしている」らしいのです。帰結する先は、平たく言うと「自分でつくれるもんね」とのこと。安価で仕入れた鉱石や、スクラップ原料を使いこなして、マージナブルな製品づくりを行っている模様です。


MINING.COM 記事の概要

引用記事の概要は、下記の通りです。

  • 中国が高品位原料の輸入を前年比5%減らす

  • 高品位の原料とは、「陰極銅、精製銅、合金銅、銅半製品」を指す

  • 中国の精製銅生産量を前年比15.5%増やす

  • 銅鉱石、銅精鉱の輸入量を前年比10.9%増やす

  • 高品位原料の輸入を年初来10%減らす

China’s copper imports declined 5% in August from a year earlier. Imports of unwrought copper and copper products totaled 473,330 metric tons in August, data from the General Administration of Customs showed.

The data includes anode, refined, alloy and semi-finished copper. Rising domestic output this year is also weighing on demand for imported copper.

Last month, China’s refined copper output jumped 15.5% year-on-year to a record 989,000 tons, slightly exceeding expectations, according to Shanghai Metals Market (SMM).

Strong domestic production boosted demand for raw materials, with imports of copper ore and concentrate rising to a record 2.7 million tons in August, up 10.9% from August 2022 and a record high.

For the first eight months of 2023, China’s unwrought copper and copper products imports fell 10% to 3.51 million tons compared with a year earlier, the customs data showed.

Copper for delivery in September was down 0.61% on the Comex market in New York, touching $3.76 per pound ($8,272 per tonne).

https://www.mining.com/copper-price-falls-while-china-imports-decline/

銅の高品位原料とか素材って?

おそらく、この記事で言及されている、「unwrought copper and copper products」というのは、世界各国の輸出入に係る貿易コードとして知られているHSコードに紐づいています。

7403の概要

74類という区分が、「銅及びその製品」を指します。その中で、高品位原料(素材)は、74類03番を中心に定義づけされています。

銅の高品位原料、素材を示すHSコード

さらに、この分類を深堀してゆきます。結論、「銅の原料・素材と言っても、一口に括ることが難しいんだね」ということです。

「精製銅」とは

「精製銅」とは、銅の含有量が全重量の 99.85%以上である金属及び銅の含有量が全重量の 97.5%以上であり、かつ、銅以外の元素の含有量が全重量に対してそれぞれ次の表に掲げる限度を超えない金属をいう。

https://www.customs.go.jp/yusyutu/2022_01_01/data/74r.pdf
精製銅(その他の元素)

「銅合金」とは

「銅合金」とは、含有する元素のうち銅の重量が最大の金属(粗銅を除く。)で次のいずれかのものをいう。
(ⅰ) 銅以外の元素の少なくとも一の含有量が全重量に対してそれぞれ⒜の表に掲げる限度を超えるもの
(ⅱ) 銅以外の元素の含有量の合計が全重量の 2.5%を超えるもの

https://www.customs.go.jp/yusyutu/2022_01_01/data/74r.pdf

「マスターアロイ」とは

「マスターアロイ」とは、銅と他の元素の合金(銅の含有量が全重量の 10%を超えるものに限る。)で、実用上圧延及び鍛造のいずれにも適せず、かつ、通常その他の合金の製造の際の添加用又は非鉄金属の冶金の際の脱酸用、脱硫用その他これらに類する用途に供するものをいう。ただし、りんの含有量が全重量の 15%を超えるりん銅は、第 28.53 項に属する。

「銅・亜鉛合金(黄銅)」とは

「銅・亜鉛合金(黄銅)」とは、銅と亜鉛の合金(銅及び亜鉛以外の元素を含有するかしないかを問わない。)をいうものとし、銅及び亜鉛以外の元素を含有する場合には、15-74 注-2 次のすべての要件を満たすものをいう。
銅以外の含有する元素のうち亜鉛の重量が最大であること。ニッケルの含有量が全重量の5%未満であること(銅・ニッケル・亜鉛合金(洋白)
参照)。すずの含有量が全重量の3%未満であること(銅・すず合金(青銅)参照)。

https://www.customs.go.jp/yusyutu/2022_01_01/data/74r.pdf

「銅・すず合金(青銅)」とは

「銅・すず合金(青銅)」とは、銅とすずの合金(銅及びすず以外の元素を含有するかしないかを問わない。)をいうものとし、銅及びすず以外の元素を含有する場合には、銅以外の含有する元素のうちすずの重量が最大であるものをいう。ただし、すずの含有量が全重量の3%以上であり、かつ、亜鉛の含有量が全重量の 10%未満である場合には、含有する亜鉛の重量がすずの重量を超えるものも含む。

https://www.customs.go.jp/yusyutu/2022_01_01/data/74r.pdf

「銅・ニッケル・亜鉛合金(洋白)」とは

「銅・ニッケル・亜鉛合金(洋白)」とは、銅とニッケルと亜鉛の合金(銅、ニッケル及び亜鉛以外の元素を含有するかしないかを問わない。)で、ニッケルの含有量が全重量の5%以上のものをいう(銅・亜鉛合金(黄銅)参照)。

https://www.customs.go.jp/yusyutu/2022_01_01/data/74r.pdf

「銅・ニッケル合金」とは

「銅・ニッケル合金」とは、銅とニッケルの合金(銅及びニッケル以外の元素を含有するかしないかを問わないものとし、亜鉛の含有量が全重量の1%以下のものに限る。)をいうものとし、銅及びニッケル以外の元素を含有する場合には、銅以外の元素のうちニッケルの重量が最大であるものをいう。

https://www.customs.go.jp/yusyutu/2022_01_01/data/74r.pdf

日本の産業が、今後も生き生きと発展するための方策

高品位原料

おそらく、当該記事の中で言及されている数字は、「HS: 740319」までの銅含有が比較的高い原料・素材に対応しているものと考えられます。

どの程度まで、コード区分をもとに分析された内容なのか判断しかねますが、「高品位」で括ることで、川上の銅製錬・製品メーカーの動きが把握できます。最終的には、「国家が、付加価値の高い銅製品をどのように扱っていくのか」といったことがうかがい知れるようになります。

その他の合金

言い換えると、「HS: 740319」以下、細分化されたその他のHSコードをもとに、「銅・亜鉛合金(黄銅)メーカー」界隈の動きだったり、「銅・すず合金(青銅)メーカー」界隈の動きが推測できます。

一般的には、高品位な原料・素材(精度の要求される製品群)は、ハイテクを筆頭とした付加価値の高い産業に素材として利用されるか、その他の合金メーカーの原料として利用されます。

中国における、黄銅・青銅(合金)界隈の原料事情は、若干特殊なので、詳細については、今後の投稿で明らかにしてゆきたいと思います。

未来予想図

今後、仮に「中国が、銅製品の地産地消に固執する」のであれば、動脈業界におけるサプライチェーンの抜本的な変革は不可避です。これまで、中国に必要とされていた付加価値の高い製品群が売れなくなります。

そして、もし「中国が、今後も、自身の経済圏の中から安価な鉱石や、スクラップ原料を安定的に調達できる」のであれば、静脈業界におけるサプライチェーンの抜本的な変革は不可避です。これまで、中国に必要とされていた石ころ、クズが売れなくなります。

この手の話は、単純に「中国が、付加価値の高い銅製品の輸入を減らした」と一言で括ってしまうと、その前後にある壮大なライフサイクルが見えなくなってしまいます。

悠長に、「そのうち、『また売ってください』とか言って、擦り寄ってくるぜ、あいつら」みたいな思想では、時代に取り残されかねません

今般の“動き”は、日本のニッチな産業・動静脈が一丸となり、「国としての資源政策を高らかに宣言する」必要性を強く認識させるものです。

一生懸命、大国に抗おうとしても、結局は後ろ向きな意見しか出ないでしょう。そうではなく、「日本が発揮できる強みをどう活かすのか」であったり、「(大国と)どのように共存していくのか」、「彼らの弱みを補完できるか」など、日本の産業が、今後も生き生きと発展するための方策が必要なのではないかと考える次第です。

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