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「清浄島」を読む

直木賞時候補にもなった、そして北海道に根を張った作風で好評の女流作家河﨑秋子さんの新作「清浄島」を読んだ。エキノコックスというのいは寄生虫でそれが人間の身体に入る事で死の危険性もある病気。元は主にキツネの体内に住み、そこからネズミや犬、ネコ、土地、水を介して人間に危険を及ぼすようだ。解明されない病気は住民にとって呪いとなり、間違った解釈で差別を生んだり、病の撲滅の妨げになる。そして特効薬も開発はできてない。
昨日は日本でコロナ患者が7万人でて200人が命を落としている。すでに国民は数字にも対策にも無関心になってしまった。コロナが広まって3年目、ワクチン以外何も進んでなく、世界は開き直りウィズコロナという言葉が支配している。
エキノコックスとコロナ。全く違う流行病ではあるけれど、撲滅させる難しさをこの本を読んで感じた。
礼文島という島でエキノコックスが密かに流行し、キツネからネズミにそして犬やネコに移り、それに接した人間の体内に入ったのではないかという憶測の元研究員として一人送り込まれた土橋。島の人間には、この病がどういうものでどう防がなければならないか理解されない。小さな島には島なりの風習も生活もある。よそものの先生の話をそうですかと簡単に受け入れられない。研究も簡単に結果は出ず自分のしていることに疑問も感じる。初めての長期の研究員を受け入れたため施設も決して快適ではない。少しずつ島の役所の人、島民の心とつながり始めた頃、札幌からきた応援部隊と共に残酷な決断を下すことになる。

それでもこの病は礼文島以外でも出てしまい、もっと大きな街で起こってしまいネットで調べるといまだに撲滅していなく、稀に北海道だけでなく本土でも発生している。土橋の苦労は無駄にはなってないが、病との戦いは新しい世代で今も続いている。

この小さな島で起こった山火事、その後村を救おうとしてキツネをいれた事が皮肉にも礼文島に病を持ってきてしまった。そしてこの因果は人の中にもある。どんな所にも歴史がありそれがよくも悪くも続いて村を大都市を国を世界を創っていく。

決して重すぎない、夢中で読める傑作小説です。

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