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【Live2DモデリングTips】それ、実物はどう動く? 『当たり前』を大切に!

 はじめまして、谷屋楽です。
 このたび『みんなのLive2D LAB』の企画開始に伴い、お誘い頂いて記事を執筆させていただく運びとなりました。
 折角の機会なので、僕が普段気を付けているどんなモデリングでも共通して使える考え方・それにともなう小技をお話させて頂ければと思います。

 ……と言っても、具体的な形が見えなければ「それでどんなモデリングができるの?」と気になりますよね。
 ちょっとだけ自己紹介と前置きを挟みますので、前置きはいいから内容が見たい! という方は【3.これが全てに通じる!『当たり前』を大切に!】の記事本文まで飛んでください。


1.書いている人について 

 先ずは自己紹介を。
 Live2Dモデラーをしていたり、自分でもVTuberをしていたり、音屋だったりアンソロ作家だったりと色々している人間ではありますが、ややこしいので今はモデリング関連のこと以外は置いておくとして……。

 何より現物を見る事が一番だと思いますので、自分が関わったお仕事をまとめたモーメントを貼り付けておきます。
 この記事を書いている谷屋楽はこんなお仕事をしている人です!

 とにかく見せたい仕事が多すぎるのでモーメントを見てください。
 個人勢に全力を尽くしたり、ホロライブさんに関わらせて頂いたりしてます。

また、モデリングのTipsに興味を持って見に来て頂いている方であればこのあたりのツイートも参考になるかもしれませんね!
(画像クリックでリンク)

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 上記お仕事の通り僕はキャラクターモデリングを専門としておりますので、今回の記事もキャラクターモデリングを前提とした話になります。


2.この記事を参考にするために 

 この記事は初心者~中級者に向けた記事になります。
 基礎的な考え方の話なので始める前に知っておけば得をすると思いますし、誰かが教えてくれるわけでもないので中級者の方にとっても〝ハッ〟と気付ける知識になれば嬉しく思います。

 初心者の方は、前提としてLive2D公式マニュアルの『基本チュートリアル』の項を履修しておきましょう。これさえこなせばモデリングが出来るようになるぞ!

 今は色々と書籍や資料が溢れていますが、僕はこれだけで勉強しました。
 
「これから学ぶのにお勧めの書籍を教えてください」と言われたら迷わず公式チュートリアルと返します。公式の充実はありがたいですね。
 また、今回はテンプレート機能は使用しない前提で話を進めますので基本チュートリアルだけ読んで頂ければ構いません。
 興味が湧いたら適時調べてみるのもよいと思います。

 どこまでを中級者とするかは……自分を上級者だと思ってなければ中級者でいいのではないでしょうか!

 きみが中級者を脱出したと思うまでが中級者だ!

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3.これが全てに通じる!『当たり前』を大切に!

 まずは今回の記事に使用するモデルの紹介です。

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 キャラクターデザイン、イラスト、モデリング、中身。すべて僕です。
 折角の機会なのでここぞとばかりにアピールしていこうと思います。

 ……さて。【これが全てに通じる! 『当たり前』を大切に!】
 項目名からして大口を叩いていますがどういう事でしょう。
 これは本当に文字通りなのですが、全編を通して不自然な動きを付けなければ自然になるということを意識していきましょう。

 それでは、ここよりこの記事は、意識するべき『当たり前』を列挙していく事になります。謙遜ではありません。本当に当たり前の事しか書かないので覚悟して下さい。

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・人体は伸縮しない
 はい、当たり前ですね。石を投げないでください、本当に大事な事なんです。
 例えば……自分がモデリング初心者であると仮定してください。髪揺れを付けるときに、ハンドルを操作して左右に揺らすとしますね。
 その時、髪の長さが変わっていませんか?

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 しかし、これでは上手くいきません。
 髪の毛は生え際からぶら下がって生えています。(当たり前ポイント!)
 つまり、揺れの支点からの直線距離が変わってはいけないわけです。
 初心者の時によくある、物理演算を付けたら髪の毛がびよんびよんする現象はこちらが原因になります。

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 初心者は大抵やらかすと思います。僕もやりました。
 知識ゼロからいきなりこれをやらなかった人はモデリングが向いているので誇ってください! すごい!

 では上記のまとめと、この法則どおりに最後まで仕上げたものがこちら。

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 さて、完成品を見たところでさらにもう一点。
 この『生え際からの距離』を意識する考え方は、パーツの位置関係を考えるときも重宝します。

 『下を向いたら髪の毛が垂れ下がるから、前髪の先端を目の下まで移動させて……』と、立体感を意識するあなた。それ、生え際の位置はそのままに、前髪を伸ばしていませんか?

 勿論前髪は伸び縮みしません。正面を向いたとき、常に生え際からの長さは一定です。頭が下を向いた事で前髪が下がるのなら、頭と一緒に生え際の位置も下がっているのが正しい形となるわけです。

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 しかし上記の論、モデリング慣れした方の中には違和感を感じた方もいるのではないでしょうか。そうです、もちろん物理的な例外があります。
 それがこちらの当たり前ポイント。

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・我々は立体を正面から見ている。

 イラストというものは、あくまで正面から立体を切り取ったものにすぎません。
 カメラに対して平行ではない部分は奥に続いていることになります。

 つまり、髪の毛そのものは伸縮しませんが、例えば生え際が頭頂部にある場合、頭頂部から正面を繋ぐ部分については引き伸ばして表現できるのです。

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 このように、常に「実際の人体はどう見えて、どう動くのか?」を意識する事が、
 『当たり前を大切にする』という考え方になります。

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4.実例! ありがち『当たり前』集!

 それでは同じように、軽くではありますがいくつかヒントとなる一例を記載していきましょう。

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・前にあるものは前にあり、後ろにあるものは後ろにある。

 当たり前すぎる……! けれど、これ、とっても大事なんです。
 イラストレーターの方や、パーツを調整する中級者の方にお尋ねします。シャツの襟のパーツ分け、どうしていますか?

 大抵の場合は一枚になってしまっている事の多いパーツですが、もちろんこのままでは裏面が首にめり込みます。

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 同じパーツでも、間に挟まれたパーツより前にある部分は表に、後ろにある部分は裏に。細かなパーツ分けがモデリング時の快適さと最終的なクオリティを救います。

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・そのパーツ、どこから動く?

 腕を大きく上げてみてください。ぐぐ、っと。腕を突き上げるように。

 はい、ありがとうございます。
 では今、あなたの腕はどこを根元にして持ち上がったのか分かりますか?

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 ……そう、鎖骨からです。肩ではありません。
 
このように、肩を上げたと思っていても、実際に一番大きく動くパーツが肩だとしても、その大本が違う部位であることは多いです。
 頭と首の関係性などはまさにそうですね。(頭を横に倒す事を『首を傾げる』と言いますもんね!)

 また、パーツの付け根以外にも口角に連動して下瞼も持ち上がる眉毛に引っ張られて瞼が動くなど、意識外の場所が動いている事はいくらでもあります。
 人体の構造としてどこがどう動いているのか、『当たり前』をよく意識しなおすと、モデリングに応用できる事だらけだったりしますよ!

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・関節は肉の中にある!

 引き続き、関節に関する『当たり前』です。
 人の身体って、関節の無い部分が曲がることはないわけですね。
 そりゃあそうです。では、こんなにも当たり前の事で初心者~中級者がミスをしがちな部位とは何処のことなのでしょうか?

 ……そうです、首です。

 いやいや首の骨って関節の塊じゃん。どこでも曲がるでしょ。と実際の骨を想像しながらツッコんだあなたは賢い。とても重要な考え方なので大切にして下さい。

 どこでも曲がるのは正しいのですが、しかし関節には可動範囲があります。曲がらない所は限界以上に曲がらないのです。下の画像のように見た目上の接点で一気に曲げてしまうと、途中で無理にへし折れてしまっている事になります。

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 なので、どこから曲げるべきかと言うと……。あなたの鎖骨のくぼみに指を当ててみてください。そして首を傾けましょう。力を込めて突っ込むと喉が締まりますから軽くですよ。

 ……ね? そこ、動いていませんか?

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 首は回転の支点が見た目よりも奥まったところにあるので、首は横に倒すとほんの少し横にスライドして見えます。
 おおよそ首の付け根である鎖骨の裏から先は、肋骨が邪魔だからそんなに曲がらないでしょぐらいの感覚でOKだろうと考えています。

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 関節は肉の中にある!
 首以外にも使えるので、覚えておきましょう!

- * - * - * - * -

 さくっと記述するだけでも、これだけの『当たり前』があります。
 上記の取りまとめをさせて頂くなら、「言われてみればそうだよね!」と思うような事が、綺麗なモデリングにおいて何よりも重要だと僕は考えています。

 違和感を感じたら『当たり前』探し、覚えておくとワンランク上がる考え方ではないかな、と思います。

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5.実践! 『当たり前』を実現するためのテクニック!

 さて、上を踏まえて。
 補足がてら、「どうすれば実現できるの?」という実用的なテクニックを記述していきましょう。


・はじめに関節を置いてしまおう!

 これは僕がモデリング作業で変形を始める前に毎回やる工程なのですが、まず、イラスト上の関節に沿って回転デフォーマを置いてしまいます。

 これをする事で何処が曲がるのかが一発で分かるようになりますし、正しい位置に置けば動きの破綻も生まれません。
 どの程度大きく動かすか次第ではありますが、実際に動かしたときに途切れてしまう接合部をグルーで繋いでおくのも楽でいいですね。

 肩を上まで挙げる、などのように大きな動作をさせたい場合は筋肉の動きが絡んでくるので、適時手動で調整しましょう。あなたの気合いを応援しています。

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・横は横にしか動かない!

 例えば、顔を横に向けたい。
 そこで、奥行きに沿って丸みを帯びたもの……前髪などの変形で、『とりあえず丸みをつけてそれっぽくすればいい』と思っていませんか?

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 しかしこれ、始点と終点だけを見ればパッと見良さそうに見えるのですが、動かすと違和感を生む事が多いです。これ、「横を向いた」だけではなく、パーツの形自体が変形してしまっているんですね。

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 では、これを解決するために、とてもシンプルな解決法を紹介します。

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 おわかり頂けただろうか……。
 カーソルの動きをよくご覧下さい。

 そう、まっすぐ横を向かすのですから、デフォーマの制御点は横にしか動かしません。
 「曲線を作りたいので、ハンドルを動かして曲線を作った」
 それそのものは正しいのですが、そのために縦の動きを使ってしまうと、本来ありえない動作を強いてしまうことになるのです。横を向くとき、髪は上下に動きませんからね。

 もちろん奥行きの表現を足す場合は縦の変形も使う事がある……というか、その方がリッチになるので最終的には足すのですが、それは仕上げの話です。あくまで原則はX=横! その意識を忘れないようにしましょう!

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あとがき

 さて、いかがでしたでしょうか。

 言われてみれば当たり前ですが、言われるまでは気付きづらい。
 細かな内容にしてみればだいぶ大口を叩いている気もしますが、気付くか気付かないかは本当に大きな差になります
 間違いなく、ワンランク上がるための叩き台となるのではないかと思います。

 もちろん、『当たり前』はこの記事のみでは終わりません。
 現実の法則に則して考えれば考えるほどに、最終的なクオリティはどんどん上がっていきます。

 細かい事も便利な事も、隠している事だっていくらでも書けますが、ぶっちゃけあまり教えたくない類の知識です! 商売敵が増えるので!!
 ……ですが、裏を返せば、この記事の『考え方』から、実際に仕事を頂いているモデラーがそう判断するような知識が導き出せるということになります。ワクワクしませんか?

 何より、新たな気付きはあなたの武器になります。

 ひとつの気付きが代えがたい技術として、大切な武器になります。

 僕は、Live2Dをそんな技術の集合体だと思っています。
 だから、「モデリングは誰にでもできるよ」と豪語したくなるのです。だって、人体の知識なんてものはそれこそ資料がいくらでもありますし、自分の身体が動く感覚という最も頼りになる見本がそこにあるのですから。

 ですから、こう締めくくろうと思います。


 きみも気軽につよつよモデラーになって、先人たちを脅かそう!

 脅かされないように、僕も止まらず頑張ります……!
 最後までお読み頂きありがとうございました! よきLive2Dライフを!


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・宣伝

 ……さて、普段僕のことを追って頂いている方がいらっしゃいましたらお気づきになられた事と思うのですが。

 この記事に使用したモデル、未公開モデルです。

 僕が昨年より仕事に追われ続けていていまだに完成まで手を付けることのできていない、まだ見ぬデビュー一周年モデルです。(※絹漉もめんの一周年記念日は昨年の7月)
 おっと……二周年が近付いてきたな……??🤔🤔🤔
 先にちょっとした動きをチラ見せしちゃったわけですね。レアですよ!

 つまり、今Twitterをフォローしておくと、このモデルの完成版の公開をリアルタイムで見れます。そして、ずっとお仕事に追われているということは、手がけたモデリング仕事の発表がたくさん待っているという事でもあり。
 そしてそしてなんと今、多忙がすぎて実質活動休止中なので、今のうちにチェックしておくと配信活動も復帰と同事に追えてしまいます。お得ですね。

 復帰後の配信ではモデリング公開配信(+内容をまとめた講座動画)なども予定しているので、記事を読んでご興味いただけたら動向をチェックしておいて頂ければお役に立てることもあるかもしれません。

 よければ、TwitterのフォローならびにYouTubeチャンネルのチェック、よろしくお願いします! 以上! 宣伝でした!

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