映画「ユダヤ人の私」覚書

ホロコースト証言シリーズ第一弾「ゲッベルスと私」を見逃したので、第二弾のこの作品は是非見たいと思った。

映画はユダヤ人、マルコ・ファインゴルトの語り、そして当時の映像や彼が戦後受け取ったと思われる手紙などを間に挟む構成となっており、過去の映像と最後のエンドロール以外は、音楽などは一切ない、静かな映画である。
彼の子供の頃は第一次大戦中で食料も不自由で、さらに反ユダヤ主義の先生とかの存在で、恵まれた環境ではなかったが、青年になるにつれ、比較的自由な環境でダンスやファッションを楽しみ、後に兄と始めた商売も上手くいっていたが、ドイツと彼の住むオーストリアが併合したことで、人生がガラッと変わる。
強制収容所での6年の過酷な生活を生き抜き、マルコは戦後難民となったユダヤ人を、パレスチナに送る活動を行った。

映画を見る前は、何故ナチスから迫害を受けたユダヤ人である彼らが、イスラエルにおいてパレスチナ人にレベルは比較にならないにしても、同じようなことをしているのだろう、と思っていた。
この映画を見た後に思ったのは、今イスラエルにおける、ユダヤ人とパレスチナ人の対立は、そもそもナチスが生まれなければ、ヒトラーという人間が誕生しなければ起こり得ない事だったのではないか。
そして、マルコが語るユダヤ人迫害「前夜」が、世界の各地で起こっていること…自分と違うものへの嫌悪と排除しようとする動き、民意を無視した強引な意思決定、時間と手間がかかる民主主義への失望感と、それに伴い強力なリーダーシップを求める大衆…現在とかなり近い状況に、恐怖を感じた。

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