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東浩紀「一般意志2.0」読了。


昨日のYouTube収録でも少し話したんだけど、いわゆる『熟議民主主義』という理想、フランス革命を推進した「それまで、貴族や支配階級が独占していた知識や情報を、一般市民が学ぶことにより、より多くの有意義な議論が『成熟した市民によって』交わされ(あくまでも、『三人寄れば文殊の知恵』みたいな考えに基づくものだが)、より多くの人が納得のいく結論が出て、社会はより良くなる」という理想が、現実には、情報量の増加に伴い、人々は「何が正しくて何が間違っているのか」を考えることを放棄し(最初から考えてなどいない、という考えや立場もある、ポピュリズムとか)、自分にとって都合が良かったり、わかりやすかったりする物語を信奉する、ということが現実には広く行われるようになり(それによって分断が生まれ、『対話』の場は消えていった)、それでも『対話』をおこなおうとする試みはなされた(なされている)が、どこまで行っても平行線をたどることが多くなり、色んなことに対して、あきらめる人とあきらめない人がさらに分断し。

既存の民主主義システムが破綻をきたし(あるいは機能不全に陥り)、だからこそ、新しいシステムの構築、あるいは模索、夢想が行われているのは、高橋源一郎「ぼくらの民主主義なんだぜ」(をはじめとする民主主義を考えるシリーズ)、苫野一徳「子どもたちに民主主義を教えようー対立から合意を導く力を育む」といった本が一定のセールスをを得ていることや、あらためてルソーや社会契約論、20世紀フランスの現在思想(と呼ばれているもの)が再び読まれている(たとえば、NHKの「100分de名著」のような形ではあるが)ことからもわかる。

それらもつまり、そういった社会の閉塞感を、なんらかの形で打破したいという気持ちを持つものが多いからであるだろう。

本書「一般意思2.0」はそこに、IT(おそらくこのころは「DX」という言葉は一般的でなかった)を活用、活用というよりも、TwitterやSNS(このころは例として「mixi」も挙げられているのが時代を感じる)に立ち現れる「人々の様々な欲望」を、数理的に処理することで、「一般意思」を立ち上げ、えーと、長くなったので、興味を持った方は本書をお読みいただきたく。

もちろん、このころに著者が、たとえばTwitterに対して持っていた希望(のようなもの)が(一部)裏切られたり(なにせ、本書の初版は2011年で、著者である東さんはその後何度もTwitterにおける炎上を経験をもしたのので)、さまざまな事件事故、災害があり、戦争があり諍いがあり、それでもまだこの人間社会をあきらめることができない人たちの描いた夢想の1つの形がここにはあるような気がしている。

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