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写真と動画と宙ぶらりんこ⑨ ししょうせつ
カメラを手に、桜を。
けれど、その美しさを撮ることができない。
![](https://assets.st-note.com/img/1712807625401-kH2e3WpUqL.jpg?width=800)
何枚かシャッターを切るも、
すぐに諦めて土手にあがってみる。
亀が甲羅をかわかしている。
望遠レンズもないので、近づいてみる。
と、警戒して川にもぐってしまった。
![](https://assets.st-note.com/img/1712807955710-Qcb9szaffT.jpg?width=800)
って、この写真は鳥が逃げた波紋なので、映像なんてウソばかり。
少し川面を見ていると、ひょっこり顔を出してくれる。
![](https://assets.st-note.com/img/1712808090457-P1RzcOS1R2.jpg?width=800)
設定を変えてズームしようといじっている間に、また消えてしまった。
写真なんて、「撮れない痕跡」「記録できないことの記録」でしかないのかもしれない。
![](https://assets.st-note.com/img/1712810686535-04ksc7WjLC.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1712808320059-wmn1KBcuur.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1712810704987-XhTRXxWKIV.jpg?width=800)
昔、お世話になった撮影監督の小野寺眞さんに、「撮影は網を仕掛けて魚を待つようなもの。構えたところに魚が来たら上げるだけ。網で追おうとしたら、いつまでも撮れない。」という趣旨のことを言われたことがある。
いつも思い出す大切な言葉。
だから、待つことにする。
![](https://assets.st-note.com/img/1712809003117-ryAQHvEvXl.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1712810777309-w0gNWOcGed.jpg?width=800)
亀はもう出てこなかったけれど、まさに魚が。
とはいえ、やはり思ったように撮れない。
動物は人間が思ったようには動いてくれないから。
たむらまさき(田村正毅)さんが、「パッと鳥が飛ぶとか、そういう突発的な場面は、そもそも撮れない」という趣旨のことを(うろ覚えですません)言っていたと思う。
亀とか、魚とか、主人公や物語を求めていることがフレームを狭くしているんだな。
それに、「カメラで捉えよう」なんてイヤラシイことを考えているから、その場にあるすべてを感受しそこねてしまうんだ。
だから、カメラを構えるのをやめた。
![](https://assets.st-note.com/img/1712809607346-quGs5Xb2AP.jpg?width=800)
すると、ヒバリのさえずりが聴こえてくる。
「なにもいない」「なにもおこらない」と思っていた川の流れそのものが感じられるようになる。
世界はこんなにも豊かなのだ。
気づいていないだけで。
「見えるもの」にばかり気をとられて。
少しの時間、瞑想のようにその場にたたずみ、
帰路に。
桜を美しいと思うのは、桜が派手だから。
ジミに地にはいつくばって生きている美しさだってある。
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セイタカアワダチソウが芽吹き始めたのに気づく。
小さい頃にはほとんどなかった草だけれど、
もう、そこら中を覆ってしまった。外来種。
その繁殖力から、農家からは嫌われている。
それでも、秋になると黄色い花が土手一面を埋め、
もはやこの辺の風物詩でさえある。
この辺のと言っても、日本中だろう。
スマフォの普及や、インターネットの隆盛を想う。
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「撮れない」ことを経験したからか、「視覚」自体が変わって感じられる。
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もう桜の花にカメラを向けなくなった。
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光と影。
「見えているもの」と「見えていないもの」。
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カメラは本当の世界の美しさを撮ることができない。
その不可能性の中で、それでもカメラを向けることの意味を考えている。
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