現場でゆっくりとすごした殺人鬼。

世田谷で家族4人が殺害された事件で、いまも記憶につよくのこっているのが、犯人の犯行後の行動です。パソコンでとある劇団のホームページを検索し、冷蔵庫にあったアイスクリームをスプーンを使わずに5つほど食べたというもの。アイスはフォーションだったそうなので、高級品です。
両親と子供2人を惨殺したあと、すぐに現場をたちさるのではなく、ゆっくりと時間をすごしていることに違和感をおぼえました。捕まればまず死刑でしょう。それをおそれて、ふつうなら一刻もはやく現場から逃げたいのではないか。なぜかれはそこでのんきに構えていられたのだろうか。

ヒンターカイフェック殺人事件という、世界でもっとも有名な未解決事件のひとつといわれるものがあります。これはドイツの田舎の農家で起きた一家全員を殺した事件ですが、アウトラインを知って、世田谷の事件と共通するところがあるのにおどろきました。
犠牲者は祖父母とその娘、そして娘の2人の子供たち、および住み込みのお手伝いの女性です。子供たちは7歳の少女と2歳の男児で、おさない子供に情け容赦なくツルハシをふるっているのが世田谷の殺人の酷薄さとかさなります。2歳の幼児にたいしてツルハシを振り下ろすのはなかなかこころをもつ人間にはできません。
そして、ヒンターカイフェックの事件では、6人を殺害後、台所で料理をつくり、4回食事をしたといわれています。アイスクリームどころではない。料理をつくって食べるという日常的な行為を、じぶんが殺した遺体がころがる家のなかで行っています。4回の食事ですから、殺害後数日は犯人が暮らしていたとかんがえられています。
どちらの事件でも共通するのは、犯人の人間性に理解不能な壁のようなものがあることでしょう。感情がない、というのか、人を殺すことになんの罪の意識もためらいもない感じがあります。だからたぶん後悔もしていない。
現代のことばでいえば、サイコパスになるのかもしれません。

被害者の1人、住み込みのお手伝いのマリア・バウムガルトナーは新しく雇われた人で、当日、この農家に到着したばかりでした。その夜、彼女はこの悲劇に遭遇します。運がわるいといえばそれまでですが、到着があと1日遅ければ、と思わないではいられません。

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