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Prusa i3 mk3sのモーターを冷却し、レイヤーズレを防ぐ

1.はじめに

 Prusa i3 mk3s(以下mk3s)でASAを出力していたところ、レイヤーのズレが発生していました。

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 直近のエラーログを見ると、Y軸に異常があったという事です。幾つか原因が考えられます。
 1つ目は、例えばフィラメントの残材がベルトに付着し、そのままギアと挟まれたという場合です。これについては目視で確認する事が出来ます。あるいは手でY軸方向に動かし、スムーズに動くかどうかを確認します。
 2つ目は、ベルトがゆるくなっている場合です。mk3sはCalibrationメニューのbelt testというベルトテンションのチェックを行う機能があるのでそれを使います。前回のチェックより数値の変動があればそれはゆるくなっていたりきつくなっていたりするという事になります。
 3つ目はステッピングモーターの脱調です。モーターの負荷がかかりる事によりモーターへの信号と動作が一致しなくなる、というものです。
 1つ目から順に確認していきましたが、ベルトに異物は無くベルトテンションにも異常はありません。すると、脱調が原因だと考えられます。これを抑える為には原因となる負荷を軽減する事であり、印刷速度を下げる或いはモーター自体の発熱を抑える事が必要になります。
 レイヤーズレが発生したのは今回が初めてなので印刷速度を下げる事が解決になるとは考えにくく、実際にモーターに触れてみると辛うじて触れ続ける事が出来る程度の発熱があった事を踏まえて、この発熱を抑えるという点からレイヤーズレ対策を検証します。 


2.モーター冷却方法

 ホットエンドを冷却するのと同じように、ヒートシンクにファンを付けた簡易冷却装置でモーターを冷却します。今回はテストも兼ねていたので、ファンはUSB給電のものを使いモバイルバッテリーに接続しました。

 あとはmk3sでモーターを取り付けるブラケットを作り、ヒートシンクごとインシュロックで固定します。もともとヒートシンクには熱伝導シートがついているのですが、粘着力が弱く印刷中の振動によりモーターより外れる事を防ぐ為のものです。

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 また、mk3sの構造上、モーターとヒートベッドを固定するプレートとの隙間が狭く、ファンの位置が高いとプレートと激突する恐れもあります。少なくとも、モーターより低くし、かつベルト側に寄らない位置に固定します。


3.冷却効果

 実際にこの冷却装置を取り付ける事でどれだけモーターの温度が下がるのかについて、取付前後で非接触式の温度計を使って測定します。

 一時間程度のPETG素材の印刷直後にY軸モーターの温度を測ると、冷却装置取付前は約55後、取付後では約40℃という結果になりました。上記の放射温度計は計測点との距離が離れると測定温度にばらつきは出るのですが、今回は少なくとも15℃程度差が出ました。実際にモーターに触れてみると温いという具合であり非常に冷却効果が出ています。
 この状態で、冒頭の部品を再度印刷しました。

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 レイヤーのずれは出ていません。モーターの負荷を抑えるという目的は十分に達成していると言えます。


4.所感

 ステッピングモーターを冷却する事でエラーの発生を抑え、レイヤーズレを防ぐ事が出来ました。mk3sのマザーボードには空いているコネクタが何箇所かあるので、今回の冷却装置をmk3s本体に接続する事も可能です。また、X軸のモーターは特に異常が見られなかったのですが、エクストルーダーのモーターは同じように熱を持っていた為、フィラメント送り出しに異常が出てきた場合はこちらも同じように冷却する事を検討する必要があるかもしれません。


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