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フィラメントの湿気と対策

1.はじめに

 Prusa slicerで3DBenchyをスライスし、Prusa i3 mk3sとanycubic i3 megaで同じフィラメントを使い何回か出力したところ、i3 megaの方で造形に大きな差が発生しました。
 まずはPrusaで出力したものです。

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 底面の文字もはっきりと視認できます。デフォルトのプリセットでここまで形成されていれば問題ないです。

 続いてその翌日にi3 megaで出力したものです。

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 表はそこそこキレイに出ていますが、ところどころスジが入ったり表面が荒かったりとさすがにPrusaには見劣りします。底面の文字もほとんど潰れています。
 その後、エクストルーダーのファンを変更するなどホットエンド周りの改造を行い、上記画像より約一週間後に改造後のテストとして再度出力したところ、以下の仕上がりとなりました。

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 積層不良が目立ち、表面のザラつきも視認できる程度です。とてもエクストルーダー周りを改造した後とは考えられません。試しに同データを別のフィラメントで出力したものが以下の写真です。

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 積層不良はありますが、それでも船の形はできています。
 一週間の間で大きく造形が崩れた事を踏まえるとこの造形の差はフィラメントの品質やプリンターの性能によるものだけだとは到底考えられなかった為、フィラメントの湿気を疑う事にしました。
 そこで、今回3Dプリンターのヒートベッドを利用して湿気ているであろうフィラメントを乾燥させます。結果、仕上がりが多少改善されました。次項より検証内容を記載します。


2.フィラメントの乾燥方法

 フィラメントをスプールごとヒートベッドに配置します。スプールの上にはこちらの乾燥剤を置きました。

 密着状態だとスプールそのものの加熱が心配だった為、下にABSの適当な部品をかませて隙間を作り、その後ヒートベッドごとラップで包みます。

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 この状態で約6時間加熱を続けます。
 尚、乾燥剤を同封させているからか、加熱の間特にラップ表面に水分が付着している様子は見られませんでした。

3.乾燥後の再印刷

 上記乾燥を経た直後に再度3DBenchyを印刷させたものが下記画像です。

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 底面の文字は潰れたままですが、積層の不良は大きく改善されています。表面のザラつきも減り、乾燥させた効果が出ていると言えます。


4.所感

 フィラメントの湿気は造形品質を大きく損ない、ノズルの詰まりの原因ともなるものです。今回検証に使ったフィラメントはパッキンつきの容器にシリカゲルを何袋かと一緒に入れて保管していたのですが、使用する時は容器の外ですし、保管環境を考慮するとどうしても湿気を防ぎ切る事は難しいと言えます。
 よって、保管だけではなく乾燥機能付きのフィラメントケースを買うかフードドライヤーを使う等、何かしらの方法で湿気たフィラメントを乾燥させる必要があります。これらの道具が無くてもヒートベッドで乾燥させる事も出来ます。ただし、当然ですがその間、その3Dプリンターは使用できなくなるというデメリットもあります。様々な要因との兼ね合いでより良い方法を選択しなければなりません。
 また、どのタイミングで乾燥させるべきかの基準についてですが、普段使用していて問題なく出力されていた造形物の表面が大きく荒れたり積層が崩れたりし始めたあたりが一つの判断基準となると考えています。一週間程度でもフィラメントの湿気が急速に悪化する可能性もある為、湿気のコントロールは3Dプリンターを使用する上で避ける事は出来ません。

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