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“クラスのマドンナ”ほど、実は裏の顔を持っているのかもしれない。


大学に1つ下の後輩がいた。

僕と彼女は、所属ゼミが一緒になったことがきっかけで知り合った。

年齢の割に大人っぽく、顔もスタイルも文句なしのパーフェクト。芸能人で言うならば、今田美桜に似ているかもしれない。以下、彼女を「今田」と呼ぶ。


今田は学内で所謂“高嶺の花”的な存在だったが、だからといって近寄りがたい雰囲気などは一切なかった。不思議なことに彼氏の噂は全く聞くことはなく、周りの男子から飲みの誘いがあれば快くOKする。めちゃくちゃ可愛い上に、フットワークも軽いところがより一層彼女の好感度を上げた。

男子はこぞって今田を飲みに誘っては、酔わせた上で“ワンチャン”を狙おうとしていた。しかし、今田は「絶対にヤれない女」と呼ばれるほど、股が硬いことで有名だった。


「ホテルまで行ったのに、セックスどころかキスもさせてくれなかった」

誰かがそうカミングアウトすると、同じように苦汁をなめた者たちは大勢いたようで、いつしか今田は「死ぬまでに一発でいいからヤりたい女」として、男子学生の憧れの的となった。


僕もゼミ飲みで今田と飲む機会があったが、彼女が酔っぱらっているところはほとんど見たことがないし、いつも必ず終電までに帰ろうとするしで、男に期待を抱かせる素振りなど微塵も見せなかった。本当に隙がなく、真面目な子なんだと思った。


今田は大学卒業後、表参道にある建築デザイン関連の会社に就職したと聞いていた。




驚くべき事実を知ったのは、つい最近のことだ。


僕と同じゼミに所属していた、同期のマサシから突然LINEが来た。

マサシは、「絶対に他言しないと約束してくれ」と言ったあとに、一つのURLを僕に送ってきた。


何のことだか全く見当のつかない僕は、特に躊躇することもなくそのURLをタップした。すると、少し間をおいてから、谷間を露わにした女性の写真が画面に表示された。



「何かと思えば風俗サイトかよ・・・(笑)」



そう思ったのも束の間、写真の女性に見覚えがあることに気づいた。


最初は半信半疑だったものの、全5枚のプロフィール写真を見るうちに疑いが確信へと変わっていった。


しかし、サイトの写真には肝心の顔が映っていなかった。シルエット、髪型など99%マッチしていたが、この時点でまだ断定はできない・・・。


不安感のような、または高揚感のようなものを感じながら、ページを下へとスクロールすると、「ブログ」の見出しが現れた。そして更にその下にリンクが貼ってある。僕はすぐにそのリンクをタップした。








今田の顔が、そこにあった。




(これは本当に今田の写真なのか?)

(そっくりな別人ではないのか?)


そうであってほしいと願いながらも、ブログに載せられた写真は紛れもなく彼女の顔だった。



なんで今田が風俗なんかで働いているのか?

一般企業の就職は嘘だったのか?

そんなにお金に困っていたのか?

はたまた性欲がメチャクチャ強いのか?



考えれば考えるほど謎は深まるばかりだが、ハゲでデブなオヤジ客ばかりの風俗店で働くなんて、なにか深刻な事情があるに違いないと思った。


僕はもう一度店のサイトに戻り、今田のプロフィール文を読んだ。そこには、こう書いてあった。




「夢のためにお金が必要で、風俗の世界に飛び込んでみました!私の夢は、将来自分のお店を持つこと!そのために勉強も仕事も全力で頑張っています。風俗は当店が初めてで右も左も分かりませんが、まんざらエッチが嫌いなわけでもないので、お客様に楽しんでいただけるよう頑張ります(*´ω`*)」



ふと思い出した。

大学で今田と話したときのことを。



将来は自分でアパレルブランドを立ち上げたいと言っていたこと。

幼い頃から父子家庭で、学費の何割かは自分で負担しなければいけないこと。



みんなにとって憧れの存在だったはずの今田は、誰にも明かせない“闇”を抱えていた。彼女のブログを遡ると、その店には数年前から在籍していたことが分かった。大学生の頃からずっと続けていたんだろう。



当時僕らは、何十万と積んでも絶対に今田とはヤれないと思っていた。


そんな彼女はいま、60分15,000円で自分の身体を売っていた。





人は誰も、人のことなど分からない。


自分の頭の中で固めた理想が全てであり、好きな人には「そうであってほしい」とそのイメージを刷り込ませる。


だからその理想が裏切られたとき、「お前は嘘つきだ」と声を荒げて責め立てる。


本当のことなど、最初から何も知らされていないのに。





                                終

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