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<むかしむかしカンテで・・・>その53


「すっごく親切なお店」と「むちゃくちゃ愛想のない店」
(2005年の「カンテマガジン」より)
このふたつは、どちらもカンテに対するお客さんの評価です。これは、僕がカンテに入ってから25年ずっとそうですから、僕が入る前もたぶんそうだったんだと推測できます。「それでいいのか?」と問われれば「それでいいわけないじゃん。」と答えますが、「世の中には仕方がないこともある。」とも答えます。

前者の一例として、最近頂いたメールをご紹介しましょう。

「はじめまして。

先日、長野から中津店に伺ったものです。
HPはいつも拝見させていただいております。
遠距離なもので、なかなか行くことはできませんがそちらに出向く際には必ず足を運ばせていただいております。
いつもは時間の関係上お茶しかできないのですが、その日はゆっくりと(長居しすぎてごめんなさい)フルコースさせていただきました。
お店の方にも大変よくしていただいて、居座りにも関わらず素敵な笑顔で対応していただきました。
毎日の仕事が楽しいと言っておられたのも印象的です。
食事は勿論おいしいですが、空間としても心の休息の場です。身も心もまさにお腹いっぱいという感じです。
この場をおかりして御礼を言いたいです。有難うございました!!
また是非伺いたいです。(M.Y.)」

どうです?カンテで働いていて良かった、と思う瞬間ですよね。
「ありがとうございます!」と思わず感謝の気持ちでいっぱいになる、そんなメールです。
「カンテに来てよかった。」という感想もうれしいですが、対応した人に、マニュアルでは絶対に教わることのできない「接客の楽しさ」が感じられることが素晴らしい。「毎日の仕事が楽しい」なんて、ほんとにそういう気持ちがないと言えないですよね普通。
でも、M.Y.さん、次に来られた時に同じような接客をされるかどうかは保証の限りではありませんので、その点どうぞご留意ください。

さて、このメールとは反対に、「お宅ではどういう教育をなさっているのですか?!」とか「店員の顔が無表情で怖い!」とか「店員に返事ぐらいするように躾けてください!」とか「放ったらかしにされた上に注文を二度も間違えて持ってきた!!」とか「やる気がなさそう」とか、店員に対するクレームも多いことも事実です。そういうことを聞かされた時には、ホント凹みます。お客さんを怒らそうとして働いている人なんかいないはずなのになんでこうなるんだろう?

それは、考えてみると接客って要するにコミュニケーションですから、お客さんとスタッフの心の波長が合ってないとうまくいかないということだと思うんです。もし、ゆっくりくつろいでいるところへ「長居して困るなあ。」という気持ちを持ったスタッフが接客に行けば、その表情を見て「怖い!!」とか思われるでしょうし、フレンドリーに話しかけたつもりが「気安くしないでほしい」と思われたりとか。

それに、カンテで働いている人の中には、「もてなす」ということが理解できない人がいるんじゃないかとも思います。自分がもてなされたこともないのに、どうやってお客さんをもてなせるのでしょう?愛のない人に「愛を持って接してください。」なんて言っても仕方がないですよね。理解できないから。現実にそういう人はいるし、それは面接の時には見破れないですから、働いていくうちにそれが分かった時点でお客さんの気分を害していたということもあるかもしれない。

カンテにはアルバイト用のマニュアルがないのかというと、そんなことはなく、僕が入りたての頃のカンテにも、一応マニュアルっぽいものはありました。
手書きで書かれたそのマニュアルには、紅茶のセット(ポット、カップ、茶こし)の正しい置き方や、「いらっしゃいませ。」「ありがとうございました。」とかのあいさつなど、簡単な事項が説明してあったように思います。
もちろん今でも事あるごとに注意の告知は各店に配布はしています。

でも、どこの喫茶店でもそうですが、そんなマニュアルだけでスタッフをコントロールできるほど世の中は甘くはないです。ただ単に「かっこいいカフェで働きたい」ということだけで働いている人もいるでしょうし、こちらの思うようには動いてくれないのが人ですから。

人を楽しませるには技術も要りますが何よりもその人の温かい気持ちが第一です。

「あんたに言われたくない。」と突っ込まれたりして・・・。(神原)

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