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川の流れのように

「カンテ・マガジン」 編集後記 (2003年11月3日)

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「カンテ」は川の流れのように色んな人が通り過ぎていく場所です。例えば学校のように、と言えば分かりやすいかな?「入学」して3年か4年経つと「卒業」していく、カンテはそんな場所だと思ってください。トータスの場合は4年ほどでカンテを卒業していったし、Junichiもそういえば4、5年かな。

そうやってカンテを卒業していった人達のうち何人かは、時々昔の「自分の居場所」を懐かしむようにカンテにやって来てくれます。「カンテが原点」という人もいるぐらいだし。メールでもそういう人達から、思い出話を聞かされたりします。(僕も一度カンテを辞めた事があって、時々カンテには来ていました。)

カンテが30年も続いている理由はそういうところにあるんだと思う。

で、僕の場合はというと、卒業したのに「自分の居場所」を見つけられず、出戻ってきて「カンテの用務員」をしている、そんなところでしょうか。先日久しぶりにカンテに来てくれた友達から「70歳になってもカンテにいてや。」と言われました。そんなことが可能なのかどうか分かりませんが・・・・。(笑)

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カンテの用務員になった僕は、今までしたことがないような色んな事をさせられました。と同時に、色んな人と知り合うチャンスを与えてくれました。

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カンテで働いているとホントに色んな人と出会います。というか、僕はおしゃべりなので、時々お客さんに声をかけられたりすると過剰に反応して訊かれていないことまでしゃべってしまうという悪癖があります。その成り行きとしてその人と友達になったりします。そうやってどんどん知り合いが増えていって、業者の人やアルバイトの人達とかを含めると、例えば1年に10人と親しくなるとして20年以上カンテにいるから、友達の数は200人は軽く超えている計算になります。

その人達が入れ替わり立ち替わりカンテに訪れていたら、僕はまたその人達と話をすることになるので全然仕事にならないけど、まあそんなことはないわけで、1ヶ月に1回とか1年に1回会う人から、ある日を境にばったりと会わなくなる人とか十年に一度会ってる人とか色々なので、結局平均すると友達の人数はいつも10人から20人の間でしょうか。

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昔、カンテの服屋「NP」の店番をしていた時に知り合った女の子がいました。その子は、カンテにお茶を飲みに来たあと僕の居るお店に入って来たわけで、後で訊いたら近くの予備校に通っているということでした。

僕はいつもの調子で「買わなくてもいいですから、気に入ったのがあれば試着してください。」とか言ったんだと思う。彼女は何を思ったか店に飾ってあった猫の貯金箱を指さして、「今はお金を持ってないんですけど、ここへ来るたびにこの貯金箱にお金を入れるので、いっぱいになったら服を買います。」ということでした。

その後何回か「NP」を訪れてくれて、その度に話をしてはお金を貯金箱に入れて帰っていくんです。でも、やっぱりカンテに来なくなりました。予備校を辞めたんでしょう。大学に受かったのかもしれない。

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さて、「いつかは来る」と思って待っている僕はその貯金箱をどうすることもできず、今も部屋の棚に置いています。

でも、ホントどうしたらいいんだろう。(カンテという川に沈殿しているお話でした。)

かつての神原ルーム


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