正しく成果を上げるためには『急ぐ』ことだけが正解じゃないという話

自分のスキルが上がってくると、これまで1時間かかっていた仕事が30分で終わるようになることもある。
業務効率化のステキな成果です。

業務効率を上げるためには、自己の成長のためのお金や時間の投資も必要です。
でも、それは他人からは見えにくいものでもあるんです。

『Aさん、最近仕事が早くなったね』『Bさんの今月の売上はすごいね!』と成果が目に見えるものであれば話は早いのですが、業務を改善するための仕事だとなかなか成果が見えにくかったりします。

Web屋にいた頃、毎度毎度『なる早で』という客先の担当者がいました。広告代理店の営業の人です。
彼は
『この程度、スグできますよね?』
『これ1時間でいけます?』
『ちゃちゃっとやれますよね?』
という感じの『何も分かってない人』で、きっと自分の顧客にいい顔をしたいので調子のいいことばかりをお客さんに言ってたんでしょう。

ある日、3ページのWebコンテンツをテキスト(校正もかかってない殴り書きのような原稿)支給だけのものを
『これ、今日中にサイトにアップ出来ますよね?前と同じレイアウトでいいので。あと、適当に良い感じの画像とかも入れておいて』
を午後一番くらいに電話で言ってきました。

当時の会社の前任者が甘やかし続けたのも悪かったんでしょうが、このクライアントの担当者は常にそういう状態だったので、先方の上司とそのまた上司にも
「今のままだと、そのうち大事故起こしますよ。その際に弊社に責任を転嫁してくるのは目に見えています。」
「このままだと、今のような包括的な内容の契約じゃなく、案件毎に契約書をお願いせざるを得なくなります。」
などなどと本人には知らせずに相談していました。

で、その3ページの制作に対しての見積書を盛って作成して1時間ほどで提出。
なぜ見積もりを盛ったかというと、
・必要以上のクオリティを求めてくる
・出来上がりのテキストはほぼ原形を留めない
・納期が短い
部署の管理者として、こういうクライアントからは徐々にフェードアウトして、もっと効率的に稼げる客にシフトをしないといけないからです。
月に10万程度の売上しかない客を、月に150万の売上のある客と同じには扱えません。

当然、
『なんか、この見積書高くないですか?』
という電話がかかってくるわけですが、
「何を基準にして「高い」なんでしょうか?相見積もりでも取られましたか?」
と回答。
『いや、お客さんからこの費用は取れない』
と言われたので、
「発注前に金額を言われたんですか?勝手に?」
『5万くらいでいけると思うと言ってしまってるので、3万まででやってくれないと困る』
「1ページ1万ですか?同じ大きさの文字だけ並べて納品でいいなら受けますよ。それも全部で1ページにして、校正無しのいただいたテキストのままですけど。」
『何言ってんの!!そんなの納品できるわけ無いでしょ!!』
「だって、お金が出せないならしょうがないですよね」
『次にもっと儲かる案件回すから、今回だけ!!』
「前回も同じこと仰ってて、今回のコレですよね。その前にも同じようなこと言ってましたよね?」
『ちょっと上と相談してから(電話を)掛け直します』
という展開に。

速くて、安くて、そこそこのクオリティなんて無理なんです。
だからワタシは
・制作は時間のかかるもの
・急ぐ場合はこちらの残業代分をのせる
というのを徹底するようにしました。

例え30分で終わる仕事であっても、原則として半日以上の納期。
17時以降に依頼のあった仕事は、翌朝以降の着手。

まぁ、例外的な対応することもあったのですが、このルールをできる限り守りました。

で、再度電話が
『さっきの件ですが、上司に相談しに行ったんですが、そこに上司の上司がやってきて、めちゃくちゃ怒られまして・・・』
「そうですか・・・大変ですねぇ・・・ニヤニヤ」
『で、相談なんですが、どうすれば3万円である程度の形になりますか?』
「そうですねぇ。フリーで仕事受けてる大学生とかに頼めばいいんじゃないですかね?」
『いや、御社で・・・』
「うちじゃ無理ですねぇ。前回言ったように、校正無しのままで画像も何も無しの文字だけの1ページだとしても、4万・・・いや4万5千円は欲しいですねぇ・・・ニヤニヤ」
『え・・・それじゃ売上が立たないですよ・・・』
「うちの売上はどうお考えですか?」
『え・・・』
「デザイナー、コーダー、校正と人を複数人使うわけですよ。他の仕事よりも優先度を上げて進めるんですよね?」
『まぁ・・・』
「じゃ、上司の上司さんと直接お電話して交渉しますわ」
『え・・・ああ・・・』
ガチャ・・・。

時には速い仕事も大事だし、客のわがままに付き合うことも必要だったりします。
ただ、無理を聞き続けると、無理を聞いてくれる存在としてしか扱われません。そうなるともう奴隷みたいなもんです。
そういう意識を持たせないためにも、いつでも納品できる状態まで出来上がってる納品物を丸2日寝かせたりという駆け引きも必要なんです。

手間がかかるものは手間がかかるという認識を持たせないようにするのは簡単ですが、手間がかかるものは手間がかかるという認識を植え付けるのはめちゃくちゃ時間がかかります。

納期の長いものは、隙間時間にも仕事を進めることが出来ます。
納期の短いものは、それにかかりっきりにならないと仕事が進みません。
当然、事故を起こす確率も上がります。
だからこそ、もったいつけることも時には必要なんです。

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