見積書を作るのにも人件費はかかるんだよ?

10年と少し前にいた印刷デザイン兼チラシ屋兼Web屋さん。
ワタシが入社した頃はこぢんまりとした会社だったけど、一昔前までは300名くらいの従業員がいる、そこそこの規模の会社だったそうな。クライアントは大手が2つ。でも、1つが傾いてしまって、規模を縮小。
さらに新聞購読者が減ってチラシのニーズも激減。
Webに活路を!!というところでお声がかかって入社。

で、この会社はあの頃よくあった「デザインやれるし、チラシも作れるし、ホームページくらい簡単に作れるやろ」という系統。
でも、デザインの基礎から紙とWebは違うんですよね・・・。

社長は二代目で先代の長男。ボンボン育ちで、見栄張って小さい外車をとっかえひっかえ乗り、よくわからん若手デザイナーとかに投資するタイプ。
で、ちょっと名が売れたら捨てられるという・・・ことを繰り返してました・・・道楽ですね・・・。

『過去の栄光よ再び!!』ばかりを追いかけるので、昔のツテをフル活用するのは良いのですが、営業手法が昭和のまま。
社長「いやぁ、今回頑張ったら、ドンドン仕事くれる言うてくれてはるんや、頑張ってええ仕事せんといかんな!!」
従業員「は・・・はい・・・(またか・・・)」
の繰り返しで従業員は疲弊するけど、給料は上がらないというブラック企業特有の環境でした。

で、京都の南の方にある地域に不釣り合いな高層ビルを構えた某大手上場企業からイベント用の臨時サイト制作の打診。
購買担当にけちょんけちょんに値引き交渉されるので、めんどくさいけど『3割乗せた金額』『わざと端数あり』のような見積書を作る。
社長は見積書の中の数字の意味が分かってないので、「こんなもんなん?」と聞くだけでスグにハンコ押して提出する。

サイトはランディングページとして1ページ、詳細用として1ページの合計2ページ構成。
なんやかんやで、大幅な値引き交渉を受けても25万くらいまでで抑えたいので、税込み35万くらいになるように設定。
※これでも激安です。
※※当時は消費税5%

この頃、社長は「たなかさんが来てWebに目途が付いた!これからはWebの時代や!!」みたいに調子づいてた。
で、大きな案件が欲しいと欲を出し始めたので、なんとしてもどれだけ安くても案件を取るというのが方針だったようで、ワタシとしては「売り上げ減ってまうやん・・・」というシビアな課題との闘いでした。

先方もよく分かってたのか、「いつもいいの納めて貰って助かります!」とか言って持ち上げる。
そして社長は満面の笑みで舞い上がる・・・。
「いつも・・・ってまだ2回しか納品してないやないかい・・・」と心の中では思っていましたが、大人なので口には出しません。

まず、担当部署から値下げの交渉
先方「ブースの費用など出展に関する部分はどうにもならないので、なんとかご協力いただけませんか?」
ワタシ「いくらくらいまでなら出せますか?下がった費用の分だけクオリティやら下がりますが問題無いですか?」
先方「いや、クオリティはそのままでお願いします。予算は10万程度しか確保できていません」
ワタシ「それなら企画の前に言ってくださらないと、見積書を作るのも時間がかかりますし、そこには人件費が・・・」
みたいな不毛なやりとり。

これを社長に報告すると
社長「ええやん。下げたったら。」
ワタシ「大赤字になりますよ。何で挽回するつもりですか?」
社長「今やっといたら、ちゃんと仕事くれるから」
ワタシ「次の仕事も値引きありきでしか来ませんよ?」
社長「今は試されてるんや。頑張るときや!!」
ワタシ「じゃ、今月のうちの部署の売り上げ、赤になってもいいんですね。」
社長「ええ!!かまわん!!」
とか、言いながら月末の会議で訳の分からんことを言い出すのは目に見えてるんやけど・・・。
社長「ほな、値引きして税込み10万で見積書出してくれ。」
そうですか・・・。

先方「ありがとうございます!では、発注書送りますので、最終の見積書の原本と受注書を持参してください」
ワタシ「これだけ値引きしてたら、持って行く人件費と交通費も出せませんよ」
先方「しかし、そういう手続きをしないと発注できないんです。」
ワタシ「検討しますので、少し時間ください。」
という流れを社長に報告。

社長「ほな、ワシの車で一緒に出しに行ったらええがな。明日朝一番で行こ!」
ワタシ「はぁ・・・(ノリノリやな・・・)」

で、なんやかんやで納品が終わると、またもやデータと納品書を持って往訪・・・となるのが通常なのですが、この会社ここで購買担当が最後の値引き交渉に出てきます。

購買「いつも担当部署が無理ばかりいって申し訳ありません。さらにで申し訳ないのですが、ここからもう少しだけお値引きしていただけないでしょうか?」
ワタシ「元の見積額はご存じですか?すでに60%以上値段下げてるんですけど?」
購買「いや、最終的に見積書から少しだけでも下げてもらうのがこの部署の仕事でして・・・」
ワタシ「はぁ・・・(しらんがな・・・)。で、おいくらをお望みなんですか?」
購買「いや、いくらでも構わないんです。ここで何も下がらないと仕事が評価されませんので・・・。」
ワタシ「少し検討させてください」
この流れを社長に報告・・・だるい・・・。

社長「ここはうちの努力の跡をみせるとこやで、たなかさん!!」
ワタシ「はぁ・・・そうかも知れないですけど、これもう0で出したらええんちゃいます?はぁ・・・」
社長「それはあかん。そや、半分下げて出そ!!」
ワタシ「また、見積書作るんですか?」
社長「頼むわぁ・・・協力してや・・・」
ワタシ「はぁ・・・(もう病気やな・・・)」

で、結局・・・税込み5万で最終見積もりを提出。

ここで得られるスキルや経験は、ECサイトの構築やら、大手との直取り引きやらくらいしかないなと早めに見切りをつけて、次なるステップへハンドルを切りました。

細々とまだ続けられてるようですが、ビジネスを成立させる能力の無い者が企業のトップに立ってはいけないという良い例だと思います。
また、泣いている外注先に支えられてるような企業は、恥を知った方が良いと思います。
正しい対価を支払えないなら、そこは諦めるのが正しい選択です。

まぁ、今ならそんなバカなことをやる企業とはお取引しませんけども・・・。
未だに『値引きこそ誠意』みたいなところが、発注側にも受注側にもあるのは悲しいことですよね。

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