北山猛邦「『クロック城』殺人事件」考察（ネタバレあり）
引用、ページ数は文庫のものです。
【登場人物】
（）内は1999年9月時点での年齢。
＜南探偵事務所＞
南（みなみ）深騎（みき）（27）：「幽霊退治」を専門とする探偵。
志乃美（しのみ）菜美（なみ）：南深騎の幼馴染。
＜『クロック城』住人＞
黒鴣（くろく）瑠華（るか）（17）：南深騎に〈スキップマン〉退治を依頼。
黒鴣（くろく）心史（しんじ）（48）：黒鴣瑠華の父。
黒鴣（くろく）未音（みおん）（25）：黒鴣心史の娘。
黒鴣（くろく）鈴（りん）（13）：黒鴣心史の息子。
恋宮（こいみや）（32）：黒鴣心史の助手。下の名前は不明。
黒鴣（くろく）修史（しゅうじ）（40）：黒鴣心史の弟。
黒鴣（くろく）伶馬（れいま）（18）：黒鴣修史の息子。
天巳（あまみ）隆三（りゅうぞう）（43）：『クロック城』執事。
天巳（あまみ）護（まもる）（25）：天巳隆三の息子。
セティア・ドール：故人。フランス人。黒鴣心史の妻。
＜SEEM＞
五月（さつき）キキョウ：SEEM詩条（しじょう）方面第一中隊長。
東錠（とうじょう）：SEEMの狙撃手。
＜十一人委員会＞
サード・クロス（31）：十一人委員会の一人。第三の天使。『クロック城』に滞在中。
御都（みと）りえ（23）：クロスの助手。『クロック城』に滞在中。1976年9月3日生まれ。
ファースト・クロス：十一人委員会の一人。第一の天使。
【固有名詞】
〈ゲシュタルトの欠片〉：大抵の人間は幽霊と呼び、菜美は〈ゲシュタルトの欠片〉と呼ぶ。
〈スキップマン〉：古くから『クロック城』に棲む幽霊。もともとはフランス語で『Sautez la Personne（とびはねるもの）』と呼ばれていた。
『クロック城』：十八世紀にフランスで立てられた屋敷。一度解体されて日本に運ばれ、再現された。
『ジョフロワの館』：『クロック城』の正式名称。一番初めに館を作ったジョフロワから名を取った。
SEEM（シーム）：アメリカで発足したセキュリティー・チームで、終わり行く世界にあわせるように規模と拡大していった民間団体。活動目的は「世界を守る」こと。シンボルは三日月にかけられた二つのリングのマーク。
〈真夜中の鍵〉：十一人委員会は世界の救世主、SEEMは世界を滅ぼす存在と考えている。
三つの大時計：『クロック城』の外壁についている巨大な時計。真ん中の時計は現在の時刻は、左の時計は十分遅れた過去の時刻を、右の時計は十分進んだ未来の時刻を指している。
十一人委員会：世界の滅亡の謎を追う組織。世界各国の承認を得て、それぞれの地で〈真夜中の鍵〉を探している。
〈インサイド〉：クロスの名を持つ人だけができる、禁忌（タブー）を顕在化する方法。一時的な国境を作ってしまうようなもの。
【「『クロック城』殺人事件」作品内時間】
1999年 8月31日（火）サード・クロス、御都りえが『クロック城』を訪問。
1999年 9月 2日（木）瑠華が『クロック城』を出て南探偵事務所に訪れる。
1999年 9月 3日（金）瑠華が深騎、菜美を連れて『クロック城』に戻る。
1999年 9月 4日（土）黒鴣心史、修史の首なし屍体が発見される。
この後、日付を超えたのかどうかは不明。
【首切りの理由】
御都りえが披露した首切りの理由。（p.228）
１．被害者の屍体に残った証拠を隠蔽するため。
２．現場に残った証拠を隠蔽するため。
３．切断という行為にかかる時間を利用したアリバイ創作のため。
４．特殊な凶器によるため。
５．宗教的、観念的理由のため。
６．量的軽減のため。
７．見立てのため。
「『クロック城』殺人事件」に出てきた首切りの理由は上記のいずれにも当てはまらないものである。
【小ネタ解説】
「まさか屋敷の中にも、たくさんの時計が所狭しと置かれているとか。百八個くらい」（p.69）：綾辻行人「時計館の殺人」のこと。
黄色い薔薇（p.74）青い薔薇（p.78）、紅い薔薇（p.105）：「邸内にある三輪の色違いの薔薇は「虚無への供物（オマージュ）」。」（「少年検閲官のおまけ」自作解説より）
頭部を失った屍体は、アルファベットのＴを描いて床に仰向けになっていた。壁の十字架が屍体を見下ろしている。（p.199）：エラリー・クイーン「エジプト十字架の秘密」にもT字に貼りつけられた首なし屍体が出てくる。
予め失われた君（p.390）：メフィスト賞投稿時のタイトルは「失われたきみ」だった。
【城シリーズのゆるいつながり】
城シリーズは特に明言されていないが、ゆるいつながりがありそう。
ジョフロワの館：「『瑠璃城』殺人事件」の『瑠璃城』城主もジョフロワという名前である。
七芒星：「『瑠璃城』殺人事件」、「『アリス・ミラー城』殺人事件」にも出てくる。
詩条：「『瑠璃城』殺人事件」には詩条芸術大学が出てくる。
ドール家：「『ギロチン城』殺人事件」にもドール家が出てくる。
短剣：柄に星の形をした模様のある短剣。瑠璃城にも出てくる。