見出し画像

北山猛邦「『瑠璃城』殺人事件」考察(ネタバレあり)

引用、ページ数は文庫のものです。

【登場人物】

1989年 図書館 日本

君代(きみよ):18歳。

霧冷(きりさめ):『最果ての図書館』司書。

歌未歌(うたみか):『最果ての図書館』司書。

美希(みき):大学生。

樹徒(きと):26歳。自称レインの生まれ変わり。

老人:99歳。元少尉。

スノウウィ:世界の混沌を管理する探偵。

1243年 瑠璃城 フランス

マリィ:ジョフロワの娘。

ジョフロワ:瑠璃城城主。

レイン:『マリィのための白の盾騎士団』の一員。

アノー:『マリィのための白の盾騎士団』の一員。

フランドル:『マリィのための白の盾騎士団』の一員。

イーブ:『マリィのための白の盾騎士団』の一員。

オラース:『マリィのための白の盾騎士団』の一員。

マティアス:『マリィのための白の盾騎士団』の一員。

スノウウィ:探偵。「雪降り」の意。

1916年 塹壕 ドイツ×フランス前線

ぼく:フランス兵。本名不明。レインの生まれ変わり。

マリィ:看護婦。本名不明。マリィの生まれ変わり。

ヘイル:フランス兵。

ジャン:フランス兵。戦死。

ライモン:フランス兵。戦死。

ルルー:フランス兵。戦死。

クリストフ:フランス兵。塹壕で戦死。

ロロ:フランス兵。

ドイツ兵:ジョフロワの生まれ変わり。

スノウウィ:無秩序を管理する探偵。

【生まれ変わりについて】

生まれ変わりについて、スノウウィの説明。

p.242 「生まれ変わりは重なることがある。(略)」

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

p.251 「ジョフロワは、次にトゥールーズ家の祖先に当たる家系に生まれることになっている。九世紀頃になるかな。(略)」

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

p.252 「(略)生まれ変わりには過去も未来もない。(略)」

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』
画像1
図.1 生まれ変わりの流れ

1989年に始まった生まれ変わりは、1989年に終わる。マリィとレインは互いを短剣で殺し合うことになった。

2回目の1989年で樹徒(ジョフロワ)は元少尉により銃殺、元少尉(レイン)は老衰で死亡して霧冷に。その後、君代(マリィ)は病死し、短剣での殺し合いは終わった。元少尉⇒霧冷は短剣で死んでないんだけど生まれ変わるのは短剣の呪いが解けたあとだからだろうか。

【呪われた短剣】

p.32 短剣は世界中に全部で六本存在する。

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

p.40 柄の部分には彫金のような装飾が施されていた。長さは三十センチにも満たない。

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

p.114 私たちが見た短剣はキヨン式と云って(略)

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

p.114 『フランスのある施設騎士団が所有していた六本の短剣。柄に七つの星が描かれている』

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

p.115 「『七つの星』というのは、正確に訳せば『七芒星』のことだろう。七つの角を持った星だ。確かに短剣の柄に、星の模様が描かれていた」

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

p.148 どの短剣にも七芒星の紋章があり、それぞれ『Ⅰ』から『Ⅵ』までの数字が刻まれていた。

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

p.267 ぼくらはぼくら以外の人間に殺されることはない。短剣のルールは絶対だ。

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

p.291 マリィは弾丸では死なない。短剣でなければ死なないのだ。

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

Ⅰ:1989年最果ての図書館で保管。

Ⅱ:言及なし。

Ⅲ:1916年のレインが所有。土に埋めた。

Ⅳ:1989年の樹徒が所有。

Ⅴ:言及なし。

Ⅵ:1243年にスノウウィが所有。1916年のジョフロワが所有。

p.129 凶器の西洋型短剣は現場に残されたままだったが、(略)

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

1971年に七芒星の中で死んだマリィの胸には樹徒が家から持ち出した短剣が刺さったままだった。となると、1989年に樹徒が持っていた短剣はどこにあったのか。2本持っていたのであれば問題ない。1971年に使われた短剣は警察が証拠物件として保管しているはずなので、言及のないⅡかⅤの短剣だろう。

【塹壕の地図】

p.193 ヘイルはグラスの液体を全部飲み込むと、手元の赤い本に地図を挟み込んで、

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

p.322 赤い装丁の本から、紙切れがはみ出しているのに気づいた。(略)
一枚の地図だった。一九一六年、僕が銃を持って戦った塹壕の地図だった。

北山猛邦『「瑠璃城」殺人事件』

地図は何処から出てきたのかと思ったら、1916年にヘイルが本に挟み込んでいた。少尉さんが図書館に置いたのだろうか。

【固有名詞】

財団法人「知識の会」:『最果ての図書館』を建てる。

『最果ての図書館』:財団法人「知識の会」私立図書館。日本の最北の地に建つ。

『六人の首なし騎士』:十三世紀フランスの伝承。

『マリィのための白の楯騎士団』:ジョフロワの娘マリィを守る騎士団。

『十字の泉』:瑠璃城の西の森の中にあるセテ湖の別称。

詩条芸術大学:東京の大学

【小ネタ解説】

まるで天使のような、探偵としての『例外』(p.322):メフィスト賞投稿時のタイトルは「天使の例外」。

ノベルスの定価は本体740円、消費税5%(2002年発売当時)で税込777円、発売日は2002年7月7日だった。七芒星にかけたのだとすると粋な計らいである。

【城シリーズのゆるいつながり】

城シリーズは特に明言されていないが、ゆるいつながりがありそう。

ジョフロワ:「『クロック城』殺人事件」のクロック城の正式名称はジョフロワの館。

短剣:「『ギロチン城』殺人事件」のギロチン城で『六人の首なし騎士』の短剣がコレクションされている。

七芒星:「『クロック城』殺人事件」、「『アリス・ミラー城』殺人事件」にも出てくる。

詩条芸術大学(p.298):「『クロック城』殺人事件」には詩条という地名が出てくる。