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UEFA EURO 2024・グループF 第1節 トルコ vs ジョージア マッチレビュー

エンド入れ替わってる?
Attack Momentum by Sofascore

アベマの回し者TanaLifeです。#ユーロ2024アーカイブ化計画 でトルコを担当することになりましたよろしくお願いします。

トルコの前印象

カタールワールドカップ予選でもトルコを観察させてもらった。なかなかの不思議チームだった。パッションに溢れ縦の推進力やゾーン3でのダイレクトな連携。何人かの個性的なフリーマン。攻撃的だが守備ではチャレカバで脆さを見せる。そんな印象だ。

トルコはワールドカップ予選のグループでははじめ首位を走っていた。しかし途中ファン・ハールを招聘したオランダに順位を入れ替わられて監督を交代。古き良きスタイルのシェノル・ギュネシュから東京オリンピックでドイツ代表を務めたシュテファン・クンツが就任。このタイミングで現代フットボール化を図ろうとしたのは謎だった。案の定プレーオフのポルトガル戦に突如5-2-3で挑み、策に溺れ本戦出場の道は絶たれる。

その後もクンツが監督を継続していたが、引導を渡したのは皆さんご承知の通り日本代表だった。そして就任したのがヴィンチェンツォ・モンテッラ。戦術家として名を馳せるも結果面では評価し難いキャリアである。まあ現代化を推しはかりたいトルコがドイツの血がダメならイタリアで、と考えるのは分からなくもない。モンテッラのスタイルをトルコの時系列のなかで観察するのは面白そうである。と言うわけで、どうなんだトルコ!?シリーズはーじまーるよ。全3回か4回か?

トルコのボール保持、ジョージアの許容と我慢

ジョージアはボール非保持で5-3-2の守備的プレッシングを選択する。中央からの侵入を規制しつつトルコを引き込んで速攻を図りたい意図を見せる。対するトルコのビルドアップでまず注目するのはやはりチャルハノール(インテル)の振る舞いだろう。相手の2トップの間に立てばセンターバックが解放される。センバから縦のボールを前線に供給する展開がいくつかあった。

チャルハノールが横に移ればサイドバックの前進をサポート、もしくは前進キャンセルの起点となり逆サイドへの展開を促す。特に右サイドに流れてボールを受けるため、立ち上がりは反対サイドに流してからのボール前進が目立った。

その左サイドではサイドバックのカディオグル(フェネルバフチェ)の攻め上がりや、サイドハーフのユルドゥズ(ユベントス)とフリーマン気味のコクチュ(ベンフィカ)が絡んだトライアングルのロンドやローテーションのアタックを兼ね備えている。

ジョージアがサイド侵入をある程度許容していることもあり、序盤からトルコが高い位置でボールを持ちながら主導権を握っていた。ジョージアとしてはトルコの攻撃を耐えたあとに素早くサイドに展開しクヴァラツヘリア(ナポリ、以後だいたいクバと略す)にボールを預けて根性で突破口を開くことを第一としていた。そのため殴り合いの様相となる場面もあったが、クバに周囲のサポートが無い場合はトルコの守備が上回っていた。

また3-2-5での自陣ビルドアップを準備していたが、トルコのマンマーク守備の基準点を与えやすい振る舞い方のためハイプレスの回避が困難そうだった。切り替え局面ではトルコがゲーゲンプレスやセカンドボール回収に成功する場面が多く、波状攻撃に繋げてジョージアが我慢する展開が増える。その勢いからトルコがえげつないミドルシュートで先制ゴールを決めた。ジョージアはクバが下がり5-4-1気味で守るようになっていたがプレスバックの疎さを露呈してしまった。

ジョージアの反撃、トルコの脆さ

トルコの良い所であり悪い所でもあるが、勢いに乗じやすい性質があると思っている。得点後のトルコはカウンターからゴールネットを揺らすがオフサイドを取られる。前の意識が強くなったトルコはジョージアの自陣リスタートにハイプレスを仕掛けるも中盤で裏返されてシュートまで運ばれた。それが流れの変わるポイントとなり、ここからジョージアの時間帯が始まる。

トルコの自陣ブロック守備は4-4-2ベース。サイドを揺さぶりをかけられるような外循環のボール保持に対する2v2のチャレカバは不得手だ。特にカバー側が致命的なエラーを見せる傾向があり、センバが持ち場を離れやすかったり、意味のない空間を守ったりしやすい。ジョージアの同点弾はトルコ視点だとそのようなエラーが生み出した失点と言えるだろう。クヴァラツヘリアがトルコの守備ブロックの外側でレーンを横断しながらゲームメイクして影響を及ぼしていたのはニクいところだ。

トルコの新星アルダ・ギュレル

雨が降りしきる後半はトランジションゲームとなり、よりオープン性が強くなった。ジョージアはトルコのお株を奪うような推進力のあるボール前進を見せる。せこさんがティアランクが低いチームほど推進力のある選手を多く揃えていると話していて妙に納得した。

ただトルコはジョージアの攻撃で自陣に押し戻されながらも再び定位置攻撃を繰り広げていた。ジョージアが引き続き守備的プレッシングを敷いてトルコを引き込んでいたためであった。

追いつかれてからのトルコはバリシュ・ユルマズ(ガラタサライ)が右サイドに移りクバの裏を突くアタックを図っていた。ユルマズの振る舞いにより解放されたギュレル(レアル・マドリー)はインサイドの住人になるだけでなく、次第に逆サイドへの出張やセンターフォワード化する動きを見せる。そして極めつけにはえぐいミドルシュートを決めて試合の様相を変えてしまった。いやギュレル何者やねん。知らぬ間にえげつない19歳が登場してしかもマドリーに在籍している。覚えておかないといけない選手だった。トルコやりおる!

一方、ジョージアは後半も守備的プレッシングを継続せざるを得なかったのだろうか。カウンターのための最適解とはいえ、ロープレッシングだけでやり合うのはさすがに厳しい。ある程度はボールを持てていたと思うし、クヴァラツヘリアが下がって守備してくれるくらいなら、ハイプレスやミドルプレスを混ぜながらチャルハノールを規制して中小距離のカウンターを狙うこともできそうな気がする。

そんな妄想をしてみたところで今回はおしまい。あとせっかくのアーカイブ企画なので、後で読む人向けにハイライトシーンに対して何か一言付け加えておく。

ハイライト

9:30:ジョージアのゴールキックを跳ね返してダイレクトな速攻からのアイハン(ガラタサライ)のミドルシュート。アイハンはチャルハノールや右サイドのサポート役として良かった。

24:50:トルコ先制。ゴールキーパーからのポジトラでジョージアの守備の切り替えが遅かった。ボール前進ではチャルハノールとギュレルが入れ替わって3-1-2-4の構造に。ギュレルが大外のカディオグルにパスを供給して2v2が始まる。一旦は後方に戻し、アイハンが再び左サイドに展開しユルディズ、コクチュ、カディオグルのサードマンコンビネーションが発動。コクチュのダイレクトスルーパスの後に映像のシーンが始まる。W杯予選では見られなかったサイドアタックから始まるスーパーゴールだった。

26:25:ジョージアの3-2ビルドアップにマンマーク気味のハイプレスを敢行。ゴールキーパーがロングボールで中盤をすっ飛ばすもクバに届かず。セカンドボール回収したのはトルコ。ジョージアはゲーゲンプレスが間に合わず大外からポストワークによるカウンターが発動するもののオフサイド。

31:37:ジョージア同点。主導権を握れた理由は前述の通り。ジョージアのコーナーキック後、90秒に渡り7回サイドを揺さぶられてこのシーンに繋がる。

64:42:トルコ2点目。ハーフウェーラインでのトランジションゲームを抜け出したトルコ。クバが穴となる右サイドでユルマズが単騎で、その次はミュルドゥル、チャルハノールを絡めたトライアングルのアタックを仕掛けるも不発。ダメなら左サイドでユルディズ、コクチュ、カディオグルのアタック。中央でチャルハノールとギュレルがボールに絡む。左サイドからのクロスは不発。続くゲーゲンプレスからが映像のシーン。才能溢れるギュレルのスーパーゴールの裏にはコクチュ、チャルハノール、そしてアイハンの流動的な動きがある。

96:12:トルコ3点目。ラストプレー直前のフリーキックからゴールキーパーのママルダシュヴィリ(バレンシア)が攻撃参加。そちらの方がビッグチャンスだったがポストに嫌われてリバウンドも詰められず。頑張れジョージア!連続コーナーキック!からのパワープレー返しで決着。トルコのパッションここに極まる。

試合結果

EURO2024 グループF 第1節
2024年6月19日 BVBシュタディオン・ドルトムント
トルコ 3-1 ジョージア
メルト・ミュルドゥル 25'
ジョルジュ・ミカウターゼ 32'
アルダ・ギュレル 65'
ケレム・アクトゥルコール 90'+7


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