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水滴のすべて

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一般社団法人officeドーナツトーク代表の田中俊英は趣味で小説を書いており、これまで短編集と中編集を1冊ずつ書きました。いずれも本noteに掲載しています(短編集はリアル単行本…
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2021年8月の記事一覧

水滴のすべて chapter one

1.ひかる 昨夜がんばって設営したこのテントの床というか、いやテントの場合、床じゃないなあ、なんていうんだろ、こんな時ヒカリがいてくれたらすぐに答えてくれるんだけど、僕のボキャブラリーの貧困さといったら、ここフジロックの苗場でも笑うしかないよ。 2回目のフジロックも僕は旅館には泊まらずテントを選んだ。昨日僕を車で運んでくれたあの人たちのテントがどこにあるのか、もはや僕にはわからない。やっぱりヒカリとくればよかったかなあ。けど、僕の中のゴーストが、今回もひとりで行けって囁く