見出し画像

2020.05.03 とても静かで風の強い日

スーパーで、見切り品の棚にパセリの大袋があって、丁寧に「野菜見切り品 100円」というラベルが貼られていたので、思わずつかんでパンや卵や肉やなんかと一緒に買って帰ってきた。ぐるぐるにラップで巻かれているのでとりあえずすべて外してみるが、まあどれだけ圧し潰されていたのと思うくらい手の中で膨らむ。それをもう一度野菜室に戻すべく袋につめ直すことも憚られ、グラスに活けてみる。ほぼ森だ。顔を近づけると、みどりとしか形容しようのないにおいがちぢれた葉のすべてのすきまに詰まっているのがわかる。吸い込むとぬるい。

8階の窓からも、背の高い欅はよくみえる。春の最初の雨の日を境にどんどん幹に青みがさし、緑が萌えだし、今はもう風が見えるくらいに葉が増えた。先のほうにうす黄色を突き出してゆれている。ごらんパセリ、あれが欅だよ。強い風が吹いているのが、よくわかるね。それからバスタオルが飛びそうになってる。

洗濯物を取り込んでしまうと部屋がとても静かになる。台所で冷ましている料理から、ローリエと肉の脂の混ざった匂いが流れてくる。暖房をつけたらパセリが乾いてしまうだろうかと考える。料理をうっちゃって、カップヌードルを食べてしまおうかと考える。選んだわけではない音楽が小さい音で流れている。とても静かだ。永遠に午後が続きそうな錯覚が、体に満ちている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?