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台湾ひとり研究室:映像編「中国語学習にドラマをすすめる理由」

大学時代まで遡ると、実は何度か中国語を勉強してみようと思ったことがあって、そのたびに挫折してきた。若い頃はお金も時間もなく、学校に通う余裕がなかったし、何度も入門書や初級と記されたテキストを買っては、挫折を繰り返していた。継続ができない理由は、明らかだった。テキストの内容をおもしろいと思えなかったのだった。発音や文法の基本を身に付けさせたいのはよくわかる。だけど、それが私にはどうにも退屈だったのだ。ところが「台湾留学する」と決めてはじめた方法が、自分には向いていた。

それが、偶像劇と呼ばれるアイドルドラマを見ることだった。なぜ自分には合っていたのか。その理由をあげてみる。 

継続のきっかけになる

2010年代のはじめ、アイドルドラマは台湾ドラマの中でもまだ主流だった。王道はラブコメ。ラブコメはゴールがはっきりしていて話の展開が想像しやすい。最初の数回は人間関係や舞台設定を把握しなければならないので中国語の初心者には理解しにくい部分もあるかもしれないが、たいていのドラマは公式サイトで1話ごとにあらすじや人物相関図がまとまっていて、そこを読んでからドラマを観るのも方法の一つだ。あるいは原作を知っていればなお理解が早い。ドラマには必ず大きなストーリー展開がいくつか用意されているので、展開を予測しながら観るといいだろう。語学学習に継続は欠かせない。少なくとも教科書を読むよりは継続する理由が強まる。

多様な発音に触れられる

同じ一言でも、違う人が言うと違う音に聞こえる、ということはよくある。NHKのアナウンサーと隣の席の人の話し方が大きく違うように、相当の訓練を受けた人でなければ誰にでも話し方のクセはある。だからこそ、教材の音だけではなく、いろいろな発音に触れるのは大事だ。特に、日本で発売されている教材の多くは北京の発音を標準としている。それに慣れてしまうと、台湾で中国語に触れた時に戸惑う。台湾人の話す中国語は多くの場合、捲舌(けんぜつ)音の[h]の部分が落ちているためだ。また、滑舌、音の脱落、速度など、人によって違う。この違いを聞き分けるのも、聴解力の一つだ。ドラマにはたくさんの登場人物が出てくる。それらに触れるのは、中国語学習にとって有効な方法だ。

定型表現のバリエーションを知る

お礼の表現でも謝謝、多謝、謝了、感謝你、謝罪の表現にも對不起、道歉、抱歉、請你原諒我……といろいろな表現がある。いわゆる定型の表現は、もちろん教材に訳は書かれている。だが、それをいつ、どんな相手にどんなふうに言っていいか、言ってはいけないかまでは書かれていない。ドラマは、そうした背景の情報を映像という強力な力で補ってくれる。

字幕がある

台湾ドラマ、もしくは中国ドラマには、必ず字幕がついている。発音が聴き取れなくても、うっかり聞き逃しても、文字が大きな助けになるのだ。個人的には大助かりだった。最初はストーリーを追うのが大変でも、続けていくと徐々に慣れていく。その慣れが肝心なのだ。

お気に入りドラマの探し方

台湾ドラマは、韓国ドラマほど本数は多くないけれど、専門のチャンネルやサイトがある。そこならドラマには日本語字幕がついている。中国語学習には、中文字幕のほうがいい。「中国語でなんと言っているか」がわかるからだ。最も手っ取り早いのは、やはりYouTubeだろう。ドラマの予告編がたくさん上がっている。それで気になったら、Amazonプライム、Netflix、Hulu…いまは配信サイトがたくさんある。予告を見て気になったドラマをとりあえず1話だけ見てみる。ドラマの回数が少ないものや、好きな俳優さんがいる、とっかかりは何でもいいのだ。だめなら別のタイトルを試せばよい。

ぜひ好きな作品を見つけて、繰り返し見てみる。1度目よりも2度目、3度目と繰り返し見るうちに、きっと理解が進んでいることを実感するはずだ。

勝手口から見た台湾の姿を、さまざまにお届けすべく活動しています。2023〜24年にかけては日本で刊行予定の翻訳作業が中心ですが、24年には同書の関連イベントを開催したいと考えています。応援団、サポーターとしてご協力いただけたらうれしいです。2023.8.15