『高雄港の娘』が勇気をくれた——20万部突破『静かな人の戦略書』著者ジル・チャンさんの推薦の言葉
仮に好きな本を選ぶように言われたら、どんなに厳選に厳選を重ねても『高雄港の娘』は外せない1冊だ。なぜなら、わたしに勇気をくれた本だから。
本書は、時代のうねりに立ち向かい、環境を変えることを余儀なくされても、新たなチャンスを見つけた勇敢な女性の姿を、生き生きと、かつ温かく描いている。
わたしは21世紀を生きる女性として、英語で国際チームを率い、諸外国でスピーチや取材を受け、多くの賞や賞賛を受けてきた。けれども、結局のところ小さな国からアメリカに渡ったわたしは、どこかで孤独と弱さを感じてしまうことがある。
「毎日、目の前に広がる海を眺め、往来する大きな船を見てきた人は、きっと心も大らかなはず」
これは、事故で亡くなる前、本書の作者である陳柔縉先生が取材に答えた言葉だ。こうした姿勢や感覚が、本書を通じてわたしの心に刻まれたのだろう。心弱くなると「だけど、島国生まれってことは冒険家の子孫ってことよ」と自分を奮い立たせている。本書の物語と、そこに描かれた勇気は、わたしの大切な支えなのである。
残念ながら陳柔縉先生とはご縁はなかったが、ある晴れた日の書店で、台北で日本語翻訳を担当した田中美帆さんにお目にかかった。そこで推薦文を書いてほしいと頼まれた時、本の神様がわたしたちを引き合わせてくれたように感じた。微力ながらも本書の応援をさせてもらえるなんて、有り難いし、恐縮の限りだ。
「どんな逆境でも、希望を失うことはない」
日本語版を読んでくださった皆さんに、南からそよぐ温かな海風のような勇気を感じられるよう、心から願っている。
余談だが、台湾プロ野球リーグ・台鋼ホークス(本拠地・高雄)で活躍するアメリカ人投手のニック・マーゲビチウスは、台湾でサインする時はいつも漢字で「哈瑪星」と書く。これは日本統治時代の高雄の重要な鉄道路線の「濱線(はません)」の音を中国語で当て字にした言葉だ。
百年経った今、台湾と日本は、本書の主人公・孫愛雪も想像だにしなかったような絆で結ばれているのである。(訳・田中美帆)
勝手口から見た台湾の姿を、さまざまにお届けすべく活動しています。2023〜24年にかけては日本で刊行予定の翻訳作業が中心ですが、24年には同書の関連イベントを開催したいと考えています。応援団、サポーターとしてご協力いただけたらうれしいです。2023.8.15