お前の膀胱にあるんだろうよ

ガサツな人っていうのは広い空間を一瞬でゆがめてしまうものなんだな。
そんなことを思った。

夕方、まあまあ混み合ったセルフ型のコーヒーショップ。
僕は注文を済ませて受け渡し口あたりでコーヒーができるのを待つ。
少し空気がゆがんだ気配がして入口の方を振り返ると、歳のころ60前くらいの男が入って来る。
小太りで上下ジャージ、「ズカズカ」という音が聞こえるような歩き方でレジの方へ向かう。
大きめの声でレジに立つ女性に言い放つ。

「お姉ちゃん、トイレ！おしっこ！ある？」

はあ？
「トイレ！おしっこ！」
って、子供か！？お前は！？
大声で何を言ってんだ？
おしっこある？って何だよ！
強いて言えば、おしっこはお前の膀胱にあるんだろうよ！！

って言えたら気持ちよかっただろうな。

ガサツ男は、レジの女性が無言で指し示したトイレの方向へ歩いて行ったのでした。
ズカズカと。
それを見送って、僕はゆがみかけた空間を出て行った。