すべらない話で小藪あたりが

とある弾き語りのライブを観た。
何曲か歌って、曲の合間に少ししゃべる。
親戚のおじさんのお葬式の話。
悲しげなトーンでありつつ温かく、ラストにはまさかのバカバカしいオチがあって、思わず泣き笑いしてしまう最高のパターン。
いい話を聞いたなーと充足した気持ちになった。

とてもよくできたエピソードだったので、例えばこれを「すべらない話」とかで小藪あたりが上手に喋ったら、信じられないくらいのエクスプロージョンになっちゃうんじゃないかなと想像する。
全体の構成を変えて、メリハリつけて、誇張したり省略したりアレンジして。
素材が良い話を、卓越した話術で聞いてみたいと思う。

それと同時に真逆のことも思う。

僕は、お笑いコンビのハライチのラジオをたまに聞く。
番組の中で、片方が今週あった出来事を話す。もう片方は相槌をうちながらそれを聞く。
話し終わると話し手と聞き手が交代する。
僕はひとりニヤニヤしたり吹き出したりしながら聞いている。
ラジオを聞き終わって、おもしろかったなーと思いながらさっき聞いた話を反芻する。
すると不思議なことに気付く。
彼らが話した内容を反芻してみると、あらすじ自体がおもしろいわけではないんだ。
基本的には大きな事件が起こるわけではなく、日常のトピック(家具を買ったこととか、妻の友達が家に来たこととか)を切り取って話す。
あらすじだけをたどり直してみると、別におもしろくはない。
が、話し方と聞き方がうまいんだ。ズバ抜けてうまい。
片方がおもしろい事を話してる感じで(こんな言い方どうかと思うが)話すと、もう片方は絶妙なタイミングで話の先を促すような相槌をうつ。
そのグルーヴがたまんないんだ。

と、いうことは。

おもしろい話=おもしろいエピソードってわけではないんだな。
仮に素材が良くなかったとしても、それを料理する腕が確かならばおもしろい話になり得るってことだ。
大切なのは話す技術。おもしろいことを話してると客に思わせる話術。
おもしろいエピソードであるに越したことはないが、そうじゃなくたっておもしろい話にすることができる、プロのすごさに恐れいる。

これはお笑いに限った話ではなく、あらゆる表現活動で共通することだ。
バンドだってそうだよなーと激しくうなずきつつ、冒頭の弾き語りの彼があの話をするのがめちゃめちゃ上手くなった頃にもう一回聞いて見たいと思った。


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