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ポカリの炎上案件に群がるその他大勢に思うこと

高校時代いじめに遭っていた友人は、主犯ではなく周りにいたその他大勢が許せなかったと語った。

元々仲の良かったいじめの主犯格と仲違いをした友人は次第に疎遠になり、主犯格と話すこともなくなっていったそうだ。そこまでならただの喧嘩別れでしかなかった。

すると今度は主犯格の取り巻きが彼に嫌がらせをするようになり、ついには関係のないクラスメイトたちまで彼を無視し始めた。彼はいつの間にかクラスで孤立していた。

クラスメイトの一人を捕まえてなぜ無視するのか問い詰めるとこう答えたという。

「みんなお前のこと嫌いだって言ってるから」

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ライターの塩谷舞さんがポカリスエットのCMへ問題提起したことが話題になっている。

素晴らしい映像美で青春の1ページを描いた60秒の最後、映ったペットボトルの映像を残念に感じたのだという。塩谷さんの元記事は以下。

サステナビリティが呼びかけられるこの時代だからこそ、大企業が率先して啓蒙してはくれないものか、という思いが見て取れる。それこそ美しい映像の中心にいた少女たちの世代に責任を押し付けることがないようにと。

それにしてもすごい映像だ。床が湾曲してたりするの、実際に床が加工されてるのかCGなのかすら分からないけどとにかく圧倒される。

Yahoo!ニュースの記事で塩谷さんは「友だち失う覚悟で批判した」と語る。

現にこれだけ各所で絶賛されるCMに環境配慮の一石を投じるのはそれほど勇気がいったのだろう。同時に出る杭が打たれることは目に見えている「強い言葉」だ。

この考えに賛成や反対といった立場を示したいわけではない。

何せ僕自身、家ではコーヒーか水道水のケチンボだが出先でペットボトル飲料を買うことに抵抗を持ったことはないし、妻が作業中に飲みたいというドクターペッパーや綾鷹を数か月おきに箱買いしている。ペットボトルって分別して出せば勝手にリサイクルされるんと違うの?ぐらいの認識だ。塩谷さん、すまねぇ。

そういうわけで、賛否両論(否の方が多いかもしれない)があるのは至極もっともだと思う。記事の中で彼女自身が語るようにペットボトルが環境問題に占める割合なんて取るに足らないのだろうし、他にもツッコもうと思えばツッコめる隙はいくらでも見つかる。的を射た批判もたくさんあったと思う。

なにせ人が生きている以上少なからず環境汚染してしまうから、環境問題について語るのは世論のサンドバッグになりにいくようなものってぐらい難しいのだ。揚げ足取りの一言で簡単に杭を打たれてしまう。

グレタちゃんも飛行機じゃなく船なら環境汚染してないとでも言うつもりか!ぐらい言われてたな。泳いで行けってか。

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塩谷さんへの批判コメントの一つに「この人知らないんだけど、バズライターってどこの世界の話?」というものがあった。

Twitterのリプライやネットニュースのコメント欄を見ていると、主題にかすってすらいない、本文の論点とはまったく別のアプローチで「叩き」を行う人間が少なからずいる。思ったよりたくさんいる。

「みんなが嫌っている」という主体性のない理由で友人を無視したクラスメイトたち。ネット上でサンドバッグを見つけ叩くその他大勢はそれらと同じものだ。

彼らは主体性なく、時には日々の鬱憤を晴らすように、自らの虚栄を満たすように、人を叩く。理念や意見がなくても叩くことはできる。誰にでもある綻びを見つけてつつけばいいし、話題と関係のない話にすり替えればもっと簡単にいちゃもんを付けることができる。

実に品がなく、おぞましい。

そしてそんなおぞましいものに、自分もなりかけている。そう感じた。

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そもそも今日どうしてこの話を取り上げたかというと、僕自身もこれと同じ行為をしていたことに気が付いたからだ。

ネットで著名人の炎上がトレンドに上がると、嫌でも目を向けてしまうものだ。それだけ事欠かないし、もしかしたら無意識に探しているのかもしれない。

自分の中でそれまで名前すら記憶していなかった著名人に対する批評が始まる。「こんなことを言ったら叩かれるのは当然だ」「こんなに叩かれているならろくでもない奴に違いない」果ては「顔がキモい」「声が嫌い」といった誹謗中傷までが思い浮かぶ。当然、その人がどんな人物なのか深く知ろうとはしない。

発言していないだけで、表面上の情報で手前勝手に批判をし溜飲を下げるのは彼らその他大勢と同じじゃないだろうか。

塩谷さんの言葉はいつもセンセーショナルで、僕が応援しているライターの一人だ。そんな人があることないことで叩かれる姿を見るのはとても悲しい。

そして同じように炎上を見かけて僕が心の中でレッテルを貼った数多の著名人にも、それを愛する人、元気づけられている人たちがいる。

そんなことを思うと、知らずに人を批判の対象にするのは控えようかな。などと思うその他大勢なのだった。

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