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ぬれた子雀

やなぎの青ばが
ぬれてゐる
きれいな はかげに
子雀が
たのしさうに
あそんでる  数え年 八歳(大正十三年五月)

チドリは小動物に惹かれていたようです。
この詩を書いた一月ほどあとに「かちみ(浜村の勝見地区)の、ふじたん」から「小雀」をもらい、「小雀日記」を綴っています。
六月十五日
わたしのかわいい子雀は
いつでもちゆんちゆん
なきまする
江さをやると口をあけながら
あわてゝばかり かわいゝな。
雀は私のたからです
雀は私のおともだち
雀は私の、めざましどけい。

かわいがって飼っていた雀は、その後「ふいにしんで」しまいます。
しんだかわいい子雀は
私のなくのが
わかつたか
しんで、なみだを
こぼしてる

「小雀日記」の末尾には母:古代子のことばが添えられています。
 * * *
死んだ雀のまぶたを開けて見ると涙が出てゐたと云つて、この詩をつくつてゐた。子雀の初盆に、ちようちんをたくさんともさうと考へてゐた彼女自身が、お盆の頃には、すでに深い昏睡の裡にあつた。
 * * *
大正十三年(一九二四)八月十八日、チドリもまた七歳半でこの世を去っていきました。来年二〇二四年は、千鳥歿後百年の節目の年を迎えます。いろんな催しを準備中です。ご注目ください。
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