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電子書籍の配信料率について その3

間が空いちゃいましたが料率の件、3回目になります。
これでこの話題に関しては一旦打ち止めにしようかと思います。

ちなみに著作者人格権についても続けて書くつもりだったんですが、例の件の調査の報告が出た時点で、またあれこれと話題に上がると思うので、その時にでも書ければ。
それまでに著作権の基本書の該当箇所をザクっとでも読んでみることをおススメします。
著作権法は創作者の権利を守りつつ、それをどうやって多くの人にデリバリーしていくかという商業的な面も語っている法律だということが理解できるのではと思いますし、話の見通しが良くなるかと。
私のお勧めはこれです↓

邪魔なくらい分厚い上に値段もメチャ高いんで、一つ前の3版を古本で安く手に入れてもいいし、立読みでも。著作者人格権のところはほぼ同じだ思います。変わっているのはデジタルに関するところだけなので。

さて配信料率の件に参りましょう。


最近、知人の会社が料率改定に成功いたしました!

よく料率についてぼやき合っていたのですが、着々と実績を重ねた結果、ついに料率改定を配信サイトに飲ませたらしいです。
素晴らしい。

その会社さんは大手並みとはいかないまでも、現状ではこれ以上は望めないくらいの数字になったようで羨ましい限りです。

こういう幸福な例は私の周りではあまり聞いたことがなく、かなりの実績を上げて、しっかり交渉しないと実現は難しいのかなと思います。
地味な努力。大事ですね。

低料率の世界

さて、低料率の世界で何とかやっていくにはザクっとですが、4つくらいの考え方があるかなと考えてます。

その1.
料率の改善はあきらめて、今の料率を受け入れて生きてけるよう原稿料や業務を調整する。
短所

搾取されるばっかで、ちょっと悲しいかな…。
(著しく不平等な料率を鑑みあえて搾取と言わせていただきます)
なんかビッグブラザーにやられ放題な感じだし、社員の給料も作家さんの印税も増やせないので、私だとこの搾取状態を無条件に受けれいれるというのは耐え難いです。なんとか別の方法でチートしたいところです。
長所
波風立てずに生きて逝けます。

2.地道に売り上げを積み上げ、交渉力を増し、チャンスを見て交渉する。
短所

最初に書いた会社さんや、私が前にいた会社もこの道で料率改定を実現しているので、可能ではあるんですが、売り上げを上げる=ヒット作連発~!みたいなのは、思っている以上に難しいです。
交渉のテーブルにつくには誰もが知るヒット作があったり、配信サイト側が譲らなければいけなくなる何かが必要です。
配信サイト側が納得するほどの成果を短期で達成するのはあんまり現実的ではありません。
実際問題、上記の二社はそれなりの営業年数と複数のヒット作を出しています。
まあ、これは遠くない将来に達成すべき目標としておいて、今後の作戦を立てていけばいいんではないかと思います。目標があるとないとではだいぶモチベーションも違うので。
長所
1と同じで、やはりそんなには波風が立たないやり方かなと。
win-winの関係というやつなので。
ただ時間はかかりますね、多分。

3.料率のいい会社(取次)と取引して、そこ通して配信をする。
短所
短所はあんまりないです。料率のいいところは、力のある会社なので、配信サイトに対しての発言力もあります。
短所があるとすれば、そういう会社を見つけることと、見つけても取引の了解を得ることのハードルが高いかも…ということでしょうか。
ちなみに弊社ではこの方法を頑張って実践しております。
長所
言わずもがなですが料率が即座に改善されます。時短チートですね。

4.低料率の配信サイトとは付き合いをやめ、独自路線を歩む。
短所
販路が限られてきます。また、漫画専門配信サイトで売れるタイプの作品には向かないかと思います。逆にAmazonで売れるような作品には恐らく向きます。
そこの見極めが重要だと思います。
極端な例ですが、青林工藝社の作品がコミックシーモアでバカ売れしている絵は想像しにくいかと…。

ちなみに弊社で発行した『泥の女通信完全版』は、電子配信は最初はAmazonのKDPオンリーで、70%料率で配信しています。
前作のデジタルがAmazonで圧倒的に売れ行きが良かったことがわかっていたのでこの戦略を取りました。
そのお陰もあってか発売以来、kindleの女性コミックではランキング1位にずっと入っています。(3/29日現在)

Kindle unlimitedは相当数の会員がいると思うので、ハマればそれなりに数字が出るかと思います。
特にtwitterのフォロワー数が万単位でいる作家さんなら、そこから送客できるので、いけるんではないでしょうか。
逆に漫画専門の配信サイトで人気があってもフォロワーの少ない人は宣伝が行き渡らないので厳しい気がいたします。
コアなファンがいる作家さん向きかな。

長所
料率がいい!これにつきます。
あと取次を通さないので配信も簡単。
AmazonはEPUBさえ作ってしまえば、あとはサイトにアップするだけです。面倒な書誌とかもないですしメチャ楽でした。
Amazonで売り切った感じになってきたら、他の料率の良いサイトを探して配信を広げていけばいいんではと。トラたぬかもしれませんが、まあ試しにやってみます。

*ところで、なぜ日本の配信サイトは電子取次が必要なんでしょうかね。
AmazonのKDPは料率も基本2パタンしかないし、上にも書いたように自分でEPUB上げればいいし、上げたら2、3日で配信してくれます。
売上の振り込みも勝手にやってくれる。(末締め60日後払い。多くの電子サイトは末締めの翌末払い。ちょっと遅いけどそんなに気にならない。紙の取次の半年以上とかと比べれば天国。)
自分でデータをアップする方が手間もかからないので料率も上げられると思うんで、他社ももっとそういう仕組みを作ればいいんじゃないかという気がするんですが、難しいんでしょうか。いやでもAmazonとかはやってるしな。pixivだって自分でデータ上げる仕組みだし、どうしてわざわざ手間暇かかる方法を取るんだろう。誰か教えてください。
集金のシステムだって今は色々あるし、無料のビューワーもあるからサイトに漫画を掲載するのもすごく簡単。
既存のシステムを組み合わせるだけでもかなりのことが出来る気がするんですけどねえ。

つー感じで、地味にしっかりやるか、チートでいくか、あなたならどっちでいきますか?



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