新商品案の採用には客観的な事実を盛ろう

事業計画書を作ろう!事業計画書のない新商品案は単なるアイデア

先日、ある大企業(のグループ企業)A社に勤務しているBさんから、相談を受けたときのこと。

「僕の新商品案が採用されないんです。どうしたら良いでしょう?」

Bさんは、官庁でいうところの次長職。上長は、部長以上。年齢は、50歳前後。

20代の新入社員から見れば、親のような年代の、人生の古豪でもあります。

このメルマガを御覧になっているくらいですから、マーケティングへの造詣も深い。

そんなBさんであっても、ご自分の商品アイデアが採用されずに悩んでいます。

マーケティングを、知っているのと、できるのは、別ですからね。


以下、会話風に。

Bさん「当社のビジネスモデルは、衰退期に差しかかっています」

筆 者「インフラ事業の企業グループですからね。人口が減りゃあ売上も減るでしょう」

Bさん「はい。いずれ、現在の社員数を抱えられなくなり、リストラが始まるはずです」

筆 者「辞めたくないんですか?」

Bさん「待遇いいんで(笑)」

筆 者「あのA社グループですもんね。へたに起業するよりも、よっぽど安定していますよね」

Bさん「残るには、会社にとって、有益な人材でなければなりません」

筆 者「それで、新商品案ですか。実績を付けておきたいんですね」

Bさん「はい。勝ち抜くのに必死なのは、大企業も、中小企業も、社内の社員も変わりありません」

筆 者「それで?その新商品案は、売れるんですか?」

Bさん「わかりません」

筆 者「そんなバカな」と大爆笑。独りで、自腹を切って、事業を興すのならともかく、勤め先の、

・組織の一員として(ヒト)

・商材やトイレを使って(モノ)

・給料を受け取りつつ(カネ)

考えた新商品案ならば、商品の内容を、組織の誰にでも理解できるような紙にしておかなければなりません。


そのために、商品の仕様書と、事業の計画書は、必須。

特に、事業計画書のない新商品案は、単なるアイデアに過ぎません。

(事業計画書の作り方は、事業計画書 で検索すれば沢山ヒットします)

定量と定性、二つの切り口でフィージビリティ・スタディ

単なるアイデアに、カネやヒトを投じる酔狂な経営者は(笑)いませんよね。

「もしも、失敗したら、失ったカネ(資金)を、どうしてくれるんじゃ?」

ってナもんですので、新商品や新事業は、採算性が重視されます。

なので「こんだけ儲かりまっせ」という事業計画書を作らなければなりません。

利益を見越した事業計画書ですから、事業計画書が出来た時点で、その事業は、儲かる事業になっている(笑)というわけです。本当に儲かるかどうかは別にして。

それもそのはず、儲かるはずのない事業計画書が、稟議を通るワケありません
よね。

(なので、事業計画書を作る過程で「この事業は絶ッ対に儲かる」という思い込みにドップリ浸ってしまうわけです。危険)


その、採算性を重視した事業計画書ができあがったら、次に、その事業が実現する可能性を調べます。

これを、フィージビリティ・スタディ(実現可能性調査)といいます。

わかりやすく、汎用的な例を出しますと、定量的な調査の場合、

「この商品を買いますか?」と100人に訊いて、

・90人が買う …… その事業が実現する可能性は、大。

・90人が買わない …… その事業が実現する可能性は、小。

ということです。現実には「90%、イケる」なんて綺麗な数字は出ませんが。

定性的には、たとえば、

・買う理由を教えて下さい(買わない理由を教えて下さい)

と聞いて、

・今、買っているものより良い(反対に、良くない)

という回答でしたら「今、買っているもの」が競合になることを把握できます
し、

・今まで無かったのが不思議なくらい

という回答でしたら、新しい市場を開拓できる可能性があります。

どのような回答を、どう分析するか?は、リサーチャーやアナリストの腕次第。

観察力、洞察力、分析力もさることながら、直感的なセンスも関係します。


以上のように、定量と定性、二つの切り口で、フィージビリティ・スタディを行います。

(競合に漏れないよう、聞き取り先には注意を払って下さい)

これ以外に、フィージビリティ・スタディの実施方法を、筆者は知りませんが、

フィージビリティ・スタディで検索すると、不得要領な解説が頻出しますので、

もしかしたら、他に、調査方法があるのかも知れません。

もし、その他の調査方法をご存知の方がいらっしゃいましたら(URL等)教えて下さい。


余談ですが、アイーダの法則を「アイダ」と解説しているサイトがあるように、

フィージビリティ・スタディ(feasibility study)を

・フィジビリティ・スタディ

と解説しているサイトを見かけますが、筆者の現場体験では、フィーと伸ばすのが(どこのマーケティング部であっても)一般的でした。

今は、フィジビリティと呼ぶように、変わったのかもしれませんね。

F/Sレポートを作る気が起きない新商品アイデアは、あきらめよう

これが、所帯の小さな企業でしたら、

「社長!このアイデア、いいと思いませんか?」

「おおう!そりゃいい。早速、試作品を作ってくれ」

と、口頭で、話は進みます。


ある程度の規模になると、新商品案には、

1)「これが新商品じゃ」という新商品の仕様書

2)「こんくらい儲かるぜよ」という見積もりの事業計画書

3)「みんな買う言うちょる」という根拠を示すF/Sレポート

の三点セットが必要です。

以上の三点セットを見た上長(最終的には経営者)がGOを出せば、新商品案は、単なるアイデアではなく、社の事業として、ヒト・モノ・カネが動き出します。

逆説するならば、以上の三点セットを作らない(作る気が起きない)アイデアは、

単なる思いつきレベルのアイデアだったということで、あきらめましょう(笑)

思いつくことは誰にでも出来ます。その思いつきに、会社のヒト・モノ・カネを出してほしければ、三点セットを作ることです。


「三点セットは作りたくない。けれども、絶対に売れる商品だと思う」ならば、

自己資金で、会社とは関係なく、取り組むのみ(副業禁止の企業では、会社を辞めることになるかも知れませんが)

勤め先のみならず、銀行や公庫から融資を受けるにしても、三点セットが必要です。

とりわけ、三点セットの中でも、事業計画書は、主観的な思惑で作った計画書(悪くいえば、捕らぬ狸の皮算用の書)ですので、

事業計画書よりも、客観的な事実を積みあげたF/Sレポートがモノを言います。

平たくいうと、カネ(資金)を動かす経営者の本音は、

「君の主観的な読みは、どうだっていいんだよ。どれだけ売れるか?客観的な数字や、客観的な事実を見せてくれ」

ということです。それを調べるのが、フィージビリティ・スタディ。

本気で取り組むなら、調べに調べ抜いて下さい。マーケティングは、リサーチに始まり、リサーチに終わります。

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