バイアスとクリティカルシンキング [7-7]
バイアスとクリティカルシンキング [7-6]おさらい
前号までの温習、プラス、補足から始めましょう。
イ)
critical thinking(クリティカル シンキング)を 意 訳すると、疑う思考。
ロ)
その定義は
『目の前にあるものを丸のみせず、信じていいかどうか、自分で考えるための思考法』
なので「疑う」思考を、英語に逆翻訳するとすれば、
・否定的に疑う Doubt(ダウト)ではなく、
・じゃねーの?と勘ぐる Suspect(サクペクト)でも、
・信用しない Mistrust(ミストラスト)でも、
・異議を唱えて正当性を疑う Challenge(チャレンジ)でもなく、
・疑問を持つ、問う Question thinking(クエスチョン シンキング)
になるでしょう。英語に堪能な方々、いかがです?
ハ)
疑う思考の進め方は、マーケティングの初動プロセスと同じ。
【守】情報集め = 調査
【破】情報の読解 = 分析
【離】自分なりの見解の確立 = 企画
三つの「誰」を疑う
ニ)個人を疑う
個人発の情報(人言や記事)を、信じる前に、疑ってみる
ホ)集団を疑う
集団発の情報(宣伝や発表)を、信じる前に、疑ってみる
ヘ)専門家を疑う
専門家発の情報(知識や見解)を、信じる前に、疑ってみる
・オーソリティ(権威の)エンドースメント(承認)
例)大学教授が言うことだから正しい(その人物が小学校の教頭になったら?)
・閉ざされた空間では、権威者に服従してしまうミルグラム効果
例)部長は常に正しい(怒鳴るのも正しい)
→ パワハラは間違っている。が、部内では 部長に限り パワハラが許されてしまう不思議
新しいから、古いから、という理由づけを疑う
ト)新しきを疑う
「昔のピッチャーは、ひじを温め、今のピッチャーは、ひじを冷やす」のように、
日進月歩の医学でしたら、古きは誤りで、“最新”が正しいのかも知れませんが、『最新』であることが、医療以外でも、正しいとは限りませんよね?
正しいどころか、ひじを温めるケアが最新だった頃、ひじを冷やすのは、自殺行為。
ということは、当時の最新アフターケア(温める)が、大袈裟にいうと、選手生命を縮めていたということに他なりません。
このように、最新は常に正しいなんて、神のみぞ知る。それを「最新が正しい」という人は、
神か(笑)、ソフィスト(詭弁家)といっていいでしょう。
以上。
で終わっては、読み応えが無さ過ぎますので(笑)、わかりやすく、切り口を全く変え、
身近な例を挙げてみましょう。
たとえば、AT(オートマチック トランスミッション。自動変速機)とMT。
50代以上の皆様でしたら、ご記憶でしょう。昔は、AT車なんて、ありませんでした。
ほとんど、MT(マニュアル トランスミッション。手動変速機)車でした。
あの痛ましい池袋暴走事故を例示するまでもなく、
AT車のアクセルとブレーキの踏み間違いによる交通事故が社会問題になっている昨今は、ご存じの通り。
もし、これが、スクーターのようなオートマではなく、クラッチ操作を必要とするMT車だったら?
交差点を駆け抜けるのならばともかく、交差点で一時停止、あるいは、右左折すべく徐行するとしたら、
ブレーキと間違って、どれだけアクセルを踏もうと、暴走するハズありません。
なぜならクラッチを切るので(MT車を運転したことのある皆様は知っての通り)、
動力がタイヤに伝わらない、または、半クラッチで徐行するからです。
いくらアクセルを踏もうと、ぶっちゃけ、ブォーン!ブォーンと空ふかしするダケ。
または、ノッキング(異常燃焼)して、エンスト(エンジン停止)
もう、おわかりですね?
AT車を使いこなす人もいますが、AT車がなかったら、死なずに済んだ人も大勢います(ここ大事)
このように、新しきが、どんな分野でも、素晴らしいとは、限りません。
古いほうが素晴らしい分野も沢山あります。
そうして考えてみると、例示の場合、高齢者の免許返納を促すよりならば、
「普通車はATに限る」の反対に「もみじマークはMTに限る」にしなければ、
ブレーキの踏み間違いによる事故は、残念ながら、今後も起きるでしょう。
立法(交通法規)の責任です。
同じように、自動運転車のような最新のテクノロジーが、どんな惨禍を招くか予測せず(立法を後回しにして)、
「最新にこそ、価値がある」
と、手放しで賛美するのは、いかがなものでしょう?
のべつまくなしに、最新を理由にするのは、詭弁の始まりですからね。
詭弁といえば、私事で恐縮ですが(苦笑)思い出しました。
筆者の処女作を読んだ読者さんから、
「あなたのマーケティング論は、最新のマーケティングではありませんね?」
と質問(詰問?)されたことがあります。そこで、
「そりゃそうですよ。最新の研究は、学問に任せておきます」
と答えたところ、それっきりになりました。
同じ共通項を持つ(あとになって分かったことですが)、別の読者さんからも何人か、上から(苦笑)質問されたことがありますが、
それは、話が逸れますので、また、いずれかの機会に♪
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