令和4年予備試験再現答案 民事訴訟法

第一 設問1
 1 前段について
(1) Xは権利能力なき社団であるが、29条の「社団」として訴訟を提起できるか。
(2) 29条が社団に当事者能力を認めたのは、団体としての実質を備えているからである。
 そのため権利能力なき社団であっても、団体としての実質を備え、代表者の定めがある場合には訴訟を提起することができる。
 ア 団体としての実質を備えているかは、①団体として主要な点が確立していること②構成員の変動にかかわらず団体が継続的に存続していること、③多数決の原則が行われていることを持って判断する。
 イ Xは代表者の定めがあり、意思決定機関が構成員全員で構成される総会とされているため、①を満たす。
 Xは20年近くにわたって継続的に活動されているため②も満たす。
 Xの意思決定は原則として構成員全員で構成される総会とされている。また、構成員不動産等の重要財産を処分するにあたっては、構成員の3分の2以上の特別多数の同意を要する者とされており、多数決の原則が行われているといえる。
 よって団体としての実質が認められる。
 ウ また代表者がXと定められていることから代表者の定めもある。
 エ よってXは訴訟を提起することができる。
 (3) もっとも本件では、Xの中で訴えを提起することに反対している者が相当数いる。このような場合もXが原告となりAがXの代表者として訴えを提起することが許されるか。
 ア 29条において「代表者の定めがある」として代表者の定めを要件としている趣旨は、代表者に社団のための訴訟をすることが期待できることにある。とすると、社団の中に訴訟に反対する者がいる場合であっても、反対する者の主張が社団の利益にならず、訴訟行為をすることが社団の利益になる場合には、代表者が訴訟をすることが許される。
 イ 社団の中で本件訴えに反対するC等は、元々甲土地についてCに所有権がありそれをYに売ったと主張している。かかる主張はCが他人物売買の責任を負わないためにする自己の利益のためのものであり、社団の利益にはならない。
 またAが訴訟行為をすることで、Xの総有権が認められることになるため、社団の利益になるものといえる。
 よって、Xが代表者として訴えを提起することは許される。
2 後段について
(1) Xの構成員らが原告となって訴えを提起する方法は、固有必要的共同訴訟に当たる場合、合一確定の要請から総有権を有する者全員で訴訟をしなければならない。甲土地の総有権の確認を求める訴えは固有必要的共同訴訟にあたるか。
(2) 民事訴訟は実体法の問題を解決するための手段であるため、実体法を基準に考える。もっとも、原告の足並みが揃わない場合等手続き上問題が生じることも考えるべきである。そこで固有必要的共同訴訟にあたるかは、実体法的観点に加えて訴訟法的観点も加味して判断する。
(3) 本件では、Xが甲土地の総有権の確認を求める訴えが問題となっている。総有は共有と異なり個々人に物の処分権が与えられておらず、持分権も有しないものではある。とはいえ総有に関する権利が訴訟に参加したものにしか認められないこととなると、総有権の扱いが実質と異なるという矛盾が生じることとなる。
 そのため訴訟には総有権を有すると考えられる者は全員参加しなければない固有必要的共同訴訟にあたると解する。
 もっとも反対する者に対しては、被告として訴えを提起すれば前述した矛盾を解決し合一確定することができるため、被告として提起すればよい。
 (4)  以上よりXの構成員の中の反対者を被告として提起すれば、Xの構成員らが原告となって訴えを提起する方法をすることが許される。
 第2 設問2
 1前段について
 (1) 本件訴訟継続中に本件別訴を提起することが二重起訴(142条)にあたり違法ではないか。
 (2) 二重起訴禁止の趣旨は、訴訟経済に反する、相手方の応訴の煩い、判決の矛盾抵触の回避にある。
 上記趣旨から二重起訴にあたるかは①当事者の同一性②審判対象の同一性をもって判断する。
 (3) 本件訴訟は原告がXであり被告がYである。一方本件別訴は原告がYで被告がXと原告と被告が入れ替わっただけで同一である(①充足)。
 本件訴訟の訴訟物は総有権の確認を求めるものであるのに対し、本件別訴は所有権に基づく明渡しを求めるものであるため、訴訟物が異なるため審判対象の同一性が認められないとも思える。
 しかし、対象となっている土地はいずれも甲土地についてのものであるため、主要な争点が共通し前述した二重起訴禁止の趣旨全てに当てはまるものである。そのため審判対象の同一性も満たす。
 (4) よって本件別訴提起は二重起訴にあたるため違法である。
2 後段について
 (1) 前訴判決を経たうえで後訴を提起した場合、前訴判決の既判力(114条1項)が後訴に作用するか。
 (2) 既判力とは確定判決の通有性のことをいう。発生根拠は紛争の一回的解決と、十分な手続き保障による自己責任にある。
 以上のことから、既判力は前訴と後訴の訴訟物が、同一である場合、先決関係にある場合、矛盾抵触する場合に作用する。
 (3) 前訴判決はXの総有権の確認訴訟でありXの請求を棄却しているため、主文に包含される(114条1項)Xに甲土地の総有権が認められないという点について既判力が発生する。
 そして後訴は所有権に基づく甲土地の明渡しを求めるものであるため、Xが甲土地に総有権があることを主張することは前訴と後訴の訴訟物で矛盾抵触するものである。
 よって後訴でXが甲土地の総有権を有さないという既判力について、作用することとなる。
                                以上
                               

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?