令和4年予備試験再現答案 労働法

設問
1 Xは裁判所に対し、令和4年4月1日以降もY社で有期労働者の地位を有することの確認を請求する。
2 XはYと有期労働契約を締結している所、勤務するようになってから5年経っていないため、契約期間を通算した期間が5年を超えていないため、18条1項の適用はない。
3 有期労働契約の更新を19条の要件を満たすとして請求できるか。
  19条の要件は、①19条各号のいずれかに該当すること②契約締結の申し込みをしたこと③「申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと」である。
(1) ア 1号該当性について検討する。
 Xは平成29年から毎年4月にこれまで4度にわたり契約更新されているため、「過去に反復して更新されたことがある」といえる。
 イ Xは有期労働契約者であり、契約更新されないと「有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させること」になる。
 ウ 「期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると」認められるか。
 Xは有期労働契約者であり、18条の要件も満たさないため、計約画更新されなければY社で働く地位がなくなることとなってしまう。そのため「期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると」認められる。
 エ したがって1号に該当する。
(2) またXは4年にわたって契約更新されており、営業成績もトップであり、これまでの契約更新の際に契約不更新の可能性が指摘されることはなかったため、19条2号の「更新されるものと期待することについて合理的な理由」も認められる。
 したがって2号にも該当する。
(3) よって①を満たす。
(4) Xは契約更新を望んでいるため②も満たす。
(5) ア 本件で、「申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと」が認められるか。
 イ 有期労働契約者にとって、契約更新しないことは解雇することと同レベルの不利益が及ぶ。そのため解雇の取り扱いと同様に考え、勤務態度や会社に対する影響力、手続きの適正さなどの事情を考慮しやむを得ないと認められる事情を必要とする。
 ウ 本件ではXはたしかに同僚とのトラブルが多く、Xの影響でA店全体の職場環境が悪化しているため、他の社員の働きやすい職場で働く利益を侵害している。また、新人販売担当従業員二名がXとの不仲を理由に立て続けに退職しているため、人員面で不利益を与えている。そのため勤務態度は良いとは言えず、会社に対してマイナスの影響を与えている点もある。
 しかし、Xは入社して1年半が経ってからは売り上げ成績に置いて、A店のトップに立ち続けているため、売上面で会社に大きな利益を与えている。
 また、たしかにXは勤務態度を改めるよう更新の際に言われている。しかし、4年いて2回しか指摘されておらず、会社側に指導不足があったといえる。そしてXに対して契約不更新の可能性を指摘することは一度もなく、期限の定めのない労働契約者になれる契約期間5年の直前に突然更新をしないとするのはXの信頼を裏切るものであるため、手続き上適正なものとは言えない。
 よってやむを得ない理由があるとはいえない。
 したがって「申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められ」ないといえるため、③を満たす。
 3 以上よりXの請求は認められる。
                                以上

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