令和4年予備試験再現答案 商法

第2 設問2
 1 Aらに対する責任追及等の訴え(847条1項本文)は、提訴請求をFに対してしている。しかし、Fは甲社の子会社である乙社の取締役に就任していることから、監査役としての資格を失っている(335条2項)ため、847条1項本文で提訴請求をされる「役員等」には該当しないこととなる。
 そのため、提訴請求が要求されている847条3の要件を満たさず責任追及等の訴えは違法になるとAは主張することが考えられる。
 2 (1) これに対しDは①「回復することができない損害が生ずるおそれ」(同条5項)があるという反論と、②提訴請求は有効であるとする反論が考えられる。
 (2) まず回復することができない損害が生ずるおそれとは、会社の対応を待っていては取り返しのつかない損害が生じるおそれがあるものをいう。
 本件では、そのような事情がないため認められない。
 (3) ア 提訴請求の相手方を請求当時「役員等」でなかった者に対してした者であっても有効か。
 イ この点、847条1項において提訴請求を要件とした趣旨は、会社に対して役員に対する責任追及する機会を与えるためのものであり、会社のための規定である。
 とすると、会社側が提訴請求があったことを知ることができ、対応することができたのであれば、機会があったといえ提訴請求が有効なものといえる。
 ウ 本件では、Dは役員等ではないFに対して請求を行っているが、Fは元々甲社の監査役であった者であり、乙社の取締役であるため甲社と極めて近い関係にあると言える。
 そして乙社の代表取締役は甲社の代表取締役と同じAであったことから、AはFから提訴請求があったことを聞くことができる関係にあったといえ、知ることが可能だったといえる。そのため会社側が知ることができ、対応することができたといえるため、機会があったと言えるので提訴請求は有効なものということができる。
 エ よって提訴請求は有効である。
 (4) よって②の反論は認められ、本件訴えは適法なものといえる。
第2 設問1
 1 DのAらに対する請求として、①利益供与にあたるとする主張(120条1項)、②株主平等原則に反するとする主張(109条1項)が考えられる。
 2 本件土地の適正価格は2億円であり、購入金額も2億円であったことから、財産上の利益の供与があったとはいえないため①は認められない。
                              途中答案

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