令和3年予備試験再現答案 行政法(F)

第一 設問1
 1 本件条件の法的性質について
 (1) 本件条件は、本件許可の際に法第14条の5第2項及び第14条の4第11項に基づいて「積替え・保管施設への搬入は自ら行うこと。また、当該施設からの搬出も自ら行うこと」と、本件許可に、「搬入は自ら行うこと。搬出も自ら行うこと。」という法律効果を加えている。
 これは本件許可と従たる関係にあるため附款にあたるものといえる。
 (2) したがって本件条件の法的性質は附款である。
 2 提起すべき訴訟
  取り消し訴訟の対象として①本件許可の取消訴訟(行政事件訴訟法3条2項(以下法令略))及び、②本件許可の取消訴訟が考えられる。
 3 本件許可の取消訴訟の訴訟要件について
 (1) 本件許可は処分であるため、処分性(3条2項)が認められる。
 (2) Aは本件許可の名宛人であるため、原告適格(9条1項)が認められる。
(3) 出訴期間(14条1項)や被告適格(11条1項)等の訴訟要件も満たしていると考えられる。
(4) したがって本件許可の取消訴訟は、訴訟要件を満たすため、提起することができる。
 4 本件条件の取消訴訟の訴訟要件について
(1) 本件条件に処分性(3条2項)が認められるか。
(2) 処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち(①公権力性)、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの(②直接・具体的法効果性)をいう。
 そして、附款の処分性については、附款それ自体を行政処分本体と切り離して独立の処分性が認められると言える場合に限り、処分として取消訴訟で争うことができる。
(3)ア 本件では、B県知事により本件条件が付されているため、①公権力性が認められる。
 イ 本件条件は、法第14条の5第2項及び第14条の4第11項に基づき、「搬入は自ら行うこと。搬出も自ら行うこと」として、搬入搬出をさせる法的義務をAに対して課しているいる。これは搬入搬出を自らしなければならないという具体的な義務であり、直接的な法効果もあるため、②直接・具体的法効果性が認められるといえる。
 ウ そして、本件許可が法14条の4第5項1号で「申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境奨励で定める基準に適合するものであること。」という能力を求めているのに対して、本件条件は上記のような義務を課しており、別個の要件を定めているといえるため、切り離して独立の処分性が認められるといえる。
 (4) したがって処分性が認められる。
(5) 原告適格等の処分性以外の訴訟要件は、本件許可と同様に認められるため、本件条件は訴訟要件を満たす。
 (6) したがって本件条件について取消訴訟を提起することができる。
5 どちらの訴訟を提起すべきか
 Aとしては、本件許可の本件条件の部分について不服があるだけであり、本件許可について取消訴訟を提起し、認容されると本件許可全体が取り消されることとなってしまい、Aが望む結果とならない。
 そのため、本件条件について取消訴訟を提起すべきである。
第2 設問2
1 本件条件の違法性について、Aは①B県においてのみ本件条件が付されたとして、比例原則に反するという主張と、②本件条件が付されることについて事前連絡を受けていないため、信義則に反するという主張が考えられる。
2 (1) 本件条件が違法であるかを考えるために、まず本件条件に行政側に裁量が認められるかを検討する。
 本件条件は、法第14条の5第2項及び第14条の4第11項に基づいて行われているものであり、第14条の4第11項は「必要な条件を付することができる。」として、「できる」と書かれていることから要件を付するのに裁量が認められる文言で書かれている。
 また、法施行規則第10条の13第1号において、施設の基準、同条第2号において、能力に係る基準が定められているが、どちらも抽象的な文言で書かれていることから、行政側に専門技術的な判断を求めていると考えることができる。
 そのため、行政側に条件を付する裁量は認められる
 (2) 裁量が認められるとしても、「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合」には取り消すことができる(30条)。
 その判断としては、考慮すべき事情を考慮せず社会観念に反するといえる場に逸脱濫用があったとして、取り消すことができる。
 (3) 本件では、近隣県では本件条件のような内容の条件は付されていないのに、本件許可にあたりB県で初めて本件条件を付されることとなっている。
 本件条件のような条件を、他の事業者が付されていない中でAに対してのみ付されているため、平等原則に反し逸脱濫用にあたるとも思える。
 しかし、本件条件を付した背景には、保管量の増加と保管期間の長期化によりPCB廃棄物等の飛散、流出、異物混入などの不適正事例が発覚し、社会問題化したことがある。この社会問題を解決するために、他社搬入・搬出によって収集・運搬に関する責任の所在が不明確となることを防ぐため本件条件を付することとなった。
 この社会問題の解決は、法第1条が「生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」を目的としていることと合致しており、また法第4条第2項が「適正な処理が行われるように必要な措置を講ずることに努めなければならない」として、収集運搬業者に必要な措置がをすることを求めている趣旨とも合致しているといえる。
 そして、たしかにAは近隣の県やB県において初の本件条件を付された者にあたるが、これからB県においてAと同じ収集運搬業者に対しても同じような条件を付されることが想定されるため、格別不当に扱っているとはいうことができない。
(4) したがって、考慮すべき事情を考慮せず社会観念に反するといえるとはいえないため、平等原則に反しておらず、①の主張は認められない
3 (1) もっともAは本件条件が付されることについて、事前連絡を受けておらず、事前協議が無に帰してしまっているため、本件条件を付することは信義則に反すると主張し、この主張は認められると解する。
 (2) なぜなら、本件条件は、B県や近隣の県において前例のないものであるため予測できず、また本件条件が付されることで事業の効率化が著しく阻害されるというAにとって大きな不利益変更があるといえるため、事前連絡をしないことはAの信頼を裏切ることとなるため、信義則に反するといえる。
(3) よって②の主張は認められる。
                                以上

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