令和4年再現答案 刑事実務基礎

第一 設問1
 1 小問1
(1) BはVを刃物で脅してVから暗証番号を聞き出すことや発覚を遅らせるためにVを縛る等、犯人又は関係者しか知らないことについて供述している。かかる供述は証拠①と一致するものであり、信用性がある。
(2) BがAと共謀して実行したと主張しているが、Aに罪を被せるためにかかる主張をしているとも考えられる。しかし、Bは自身が実行犯であることを認めており、他人に罪を被せる場合に、自身が実行犯と主導的役割であったことを認めるのは経験則上考えにくい。
 Aを巻き込んで虚偽の事実を述べている可能性もある。しかし、BはAから昔から面倒を見てもらっており、恩義に感じていたのであるからAを巻き込むことは不自然だと言える。
(3) 以上より本件被告事件に関与したのはAであるとする供述部分に信用性が認められる。
2 小問2
 (1) 3月9日午後0時56分、V方から喜多方約50メートルに位置するQマンション前路上に、車両番号「あ 8910」の黒色ワンボックスカーが止まり、同車両助手席から男が降り、南方に降りていき、同日午後1自11分、南方から同男と思われる男が走ってきて同車両助手席に乗り込んだ(証拠④)。
 ワンボックスカーが止まったのは、V方から約50メートルと近接した距離に位置しており、時間的に犯行があった時刻と一致している(証拠①④)。
 またワンボックスカーから降りた者は南方に歩いておりV方と方角が同じである。
時間的にも場所的にも近接しているため、ワンボックスカーに乗っていた者が本件被告事件と関わっていることが相当程度推認できる。
 (2) 3月3日から同月5日までの各日午前8時頃から午後6時頃までの間、黒色ワンボックスカーは駐車場に止まっていた(証拠⑮)。前述した犯行時に止まっていたワンボックスカーと車両番号が一致であることから、同じもの
だといえ、場所がQマンション前路上と犯行時に止まっていた場所と同じ場所である。同じ場所に約10時間止め同車両を出入りするというのは、近くで用があることが推認でき、犯行の下見に来たと相当程度推認できるため、ワンボックスカーの所持者が犯行に関わっていることを相当程度推認できる。
 (3) 黒いワンボックカーはUコンビニエンスストアに本件被告事件があった3月9日午後1時39分から同日1時41分までの間止まっていた(証拠⑦)。助手席にいた人間はUコンビニエンスストアでATM前に立っており、同時刻に同コンビニエンスストアATMからV名義のキャッシュカードが挿入されている。
 その時間にV名義のキャッシュカードを持っておりATMを使用した人物は、本件被告事件と時間的にかなり接着しているため、ワンボックスカーに乗っていた人物が犯人であることが強く推認できる。
 (4) 「車両番号あ 8910」のワンボックスカーは一台しかなく、その使用者はBであることが判明している(証拠⑤)。このことからワンボックスカーに乗っていた人物はBであることが強く推認できる。
 そのため、ワンボックスカーに乗っていたB及び助手席に座っていた者が本件被告事件の犯人であることが推定される。
 (5) BはAとメッセージで頻繁にやりとりをしていた。AはBと親しい関係にありAが犯行に関与することは可能であり意思連絡もあったといえる。
 (6) Aは本件犯行日である3月9日時点で、消費者金融Yに対して105万円、消費者金融Zに対して220万円の債務を負っていた(17)。合計で325万円と大きな債務であり、友人などではない消費者金融に借りていたことから、返済するためお金を必要としていたといえるため動機がある。
 (7) 上記債務を同月10日Yに100万円の返済、Zに200万円の返済をしており、合計で300万円というであり、かかる金額はBが主張するAの取り分300万円と一致している(証拠10)。突然300万円もの大金が入るのは不自然であり、Aが本件被告事件に関わっていたことが強く推認できる。
 (8) 以上を総合考慮すると、Aに共謀共同正犯が成立することを推認することができる。
第2 設問2
(1) 公判全整理手続きの制度趣旨は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うためにある(316条の2)。上記趣旨を全うするため、事件の争点証拠を整理する必要がある。
(2) 下線部イは、AB間の共謀が争点となっていることから、追加予定事実記載書の提出を求めたのである。
第3 設問3
(1) 下線部ウの時点ではBの証人尋問が行われていなかったため、Aが接見に来た人を通じて、Bに証拠⑰と違う証言をするよう働きかけを行う危険があったため、接見禁止の請求をしたのである。
(2) 他方下線部エの時点では、Bは既に証拠⑰と同旨の証言をしているため、上記危険がなくなっているといえるため接見禁止の請求をしなかった。。
(3) よって検察官は異なる対応をした。
第4 設問4
 1 小問1
 Bは証拠⑩の発言と異なり、Bの証人尋問で「今回の事件は全てAに言われたとおりにやった。当日私が来ていた作業着やロープもAが用意したものだ」と証言している。
 そのため、Bの証言を証拠⑩により弾劾証拠として使用する必要があり、供述が変わったのは公判前整理手続きが終了した後であるため「やむを得ない事由」があったといえる。
                              途中答案

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