「男と女のモンダイはどこの国も同じ」 週刊サンケイ 1983.10 "私の映画評 『新しい家族』『インタビュアー』"

 去年の秋、シベリア鉄道でソ連を横断した。大平原をただひたすら走っていく汽車の旅は、それはステキだった。そこで、旅行記を書いた。ところが、やっと書き終わったら、なんと大韓航空機撃墜事件。事件直後はモスクワ行の飛行機も飛んでいなかったので、旅行記の出版はどうなる、とわたしはあわてました。やっぱりソ連はこわい国だとみんなはいうけど、ソ連のひとりひとりをこわいと思えない。

 だぶん、このソビエト二大女流監督特集を主催しているひとも、「間が悪かった!」と、あせっているのではないでしょうか。

 さて、映画は二本とも、「家族」をテーマにしている。『新しい家族』の主人公は、十五年前に別れた恋人が死に、残った自分の娘、他人の子供である弟二人、ついでに犬(とってもおりこう)までひきとっちゃうんだからえらい。『インタビュアー』では、新聞社に勤めていて、さまざまな女にインタビューする主人公の夫が、頭がもうはげかかっているというのに、ソ連には"愛人バンク"もないだろうに、若くてかわいい愛人をつくってしまう。

 どちらも、独身でポワーッと暮しているわたしには、ちょっとかけはなれたおはなしではあったが、男と女のモンダイはどこの国でも同じなのだろう。こわーい国の映画であることはすっかり忘れ、ひきこまれてしまった。



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