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鋼の錬金術師

  • 概要
    今や言わずと知れた名作。月刊少年ガンガンで2001-2010まで連載された。夢や希望を描いた作品が少年誌のラインナップで目立つ中、"ダークファンタジー"という触れ込みとそれに違わぬ暗い影を背負った作風ででここまで売れた作品は当時珍しかったかもしれない。

  • あらすじ
    錬金術が一般的な世界。ある田舎町で暮らしていた主人公の兄弟エドワード・エルリックとアルフォンス・エルリックはその天性の才能から錬金術に親しんでいたが、母親を亡くしたことをきっかけに禁忌である人体錬成で母親を復活させようと試み、失敗してしまう。その際にエドワードは左足を、アルフォンスは体の全てを失ったが、エドワードは自身の右腕と引き換えに弟の魂だけを呼び戻し鎧になんとか定着させる。
    絶望に浸るエルリック兄弟は、たまたま町を訪れた軍人ロイ・マスタングから「国家錬金術師になれば軍に従属する代わりに手に入る様々な特権を使って自分たちの身体を取り戻すことが出来るかもしれない」と諭される。兄エドワードは壮絶な手術を経て鋼の義足と義手を身につけ、努力の果てに最年少の国家錬金術師となり、弟と共に"元の身体に戻る方法"を探す旅に出る。
    果たして兄弟は身体を取り戻すことができるのか。

  • きっかけ
    当時近所のTSUTAYAに5巻くらいまでが積まれていた記憶があるが、話題になりプロモーションが活発だったこと、何よりタイトルのカッコ良さに惹かれて読み始める。月刊誌という発刊までに時間がかかる媒体だったこともあり一時期離れてしまったが、完結したと知り2011年頃に読み終えた。最近ふと思い立って電子書籍版を購入し一気読みしたことで改めて感想的なものを書いてみようと思い立つ。

  • 良かったところ
    とにかくストーリー構成が素晴らしい。気にかかる矛盾などはもちろん間延びした部分も無く、最後まで同じ速度と勢いで読める、そして楽しめる作品になっている。長く続く作品は最初の設定が面白く勢いがあっても、途中で〇〇編が始まって間延びしたり、謎のキャラが入ってきたり、主人公たちの目的が迷走してしまうことがありがちなので、一本筋を立ててブレずに進んだことは本当に名作・傑作と呼ばれるに相応しい。
    また、個人的には変なお色気要素がないことや、出てくる大人に格好のいい、説得力と愛情のある人物が多いことは高い評価を受ける所以ではないかと思う。もちろん悪い人間や相容れない存在も出てくるが、登場人物の多くにどこかしら共感できる部分があり、ひどく嫌いになる人物が少ないのは珍しく、この点でも素晴らしい。
    技名を叫んで殴る作品も素晴らしいが、どの人物にもいわゆる必殺技らしいものがあるわけではないのに戦闘シーンに見応えがあるのも稀有ではないかと感じる。主人公が勝ったり追い詰められたりしながらも変な特訓をして新しい技を覚えたり、妙な装備をつけたりはせず最後まで進んでいく点も好感が持てる。

  • うーんポイント
    ほぼない。
    強いていうなら物語の鍵を握るエドワードとアルフォンスの父親ホーエンハイムに関する描写はあっさりしていて、人物像の細かい部分や背景が掴みづらい。キャラクターの性質的に敢えてそうしているとも思うし、掘り下げすぎると間延びするかもしれないので、作品としてのバランスは素晴らしいが、もう少し彼の背景に触れたかった気持ちはある。

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