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映画記録:2022

本当は年末の帰省時に飛行機で書くつもりだったが、「旅するクラシック」を聴いていたら行きも帰りも離陸に気がつく前に寝てしまったので、今に至る。惰性で書くなら書かなくても…とは我ながら思うけれど謎の使命感で書いている。
早速、本題。2022年公開の映画より5作品を。

◼️フレンチ・ディスパッチ 
ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
(ウェス・アンダーソン)

20世紀フランスの架空の街にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部。才能豊かな記者たちが、様々なテーマに深く斬り込んだ唯一無二の記事で人気を獲得している。ところが、編集長が急死、彼の遺言によって廃刊が決まる。何が飛び出すか分からない、思いがけないほどおかしく、泣ける、追悼号にして最終号の全貌とは──?映画・フランス・活字カルチャーへ愛をささげた、唯一無二の映像と、ウェスにしか描けないエスプリ(機知)とユーモアの集大成!
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/french_dispatch

ページを捲るような物語の展開。映画だからできる魅せ方(ウェスらしいカメラワークと構成、色使いにテンポ感、エトセトラエトセトラ)にそこはかとない温かな愛を感じた。

これまでの作品をぎゅっと集めて編集し、推敲して校正して付録もつけて出来上がった雑誌みたいな映画。否、雑誌が映画になってた!一見バラバラの内容がひとつの意図で纏め上げられるワクワク。

最近の私は、既存媒体の思考やことばを、別の媒体に変換しアウトプットすることに関心があるらしい。

◼️CODAあいのうた (シアン・ヘダー)

聴こえない家族の「通訳」係だった少女の
知られざる歌声。
それは やがて家族の夢となる──
https://gaga.ne.jp/coda/

私が大事にしている考え方のひとつに『当事者以外当事者には成り得ない。』というのがある。
他者のことは「分からない」のだからどんなに寄り添ったとしてもそれは主観的な想像の域に留まり、真に理解するなんてできっこない。だから共により良く生きる方法を探す必要がある。
この映画はそれを視覚化しているようだなと思った。

台詞がなくて音楽だけで描写する映画は沢山あるけれど、こんなにも説得力を持って美しく伸びやかなものは初めて。

お父さんの目で伝えようとする演技がとても素敵だった。手話は静かで賑やかな言葉だな、と思った。時に話し言葉より雄弁。

◼️TITANE (ジュリア・デュクルノー)

幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。
彼女はそれ以来<車>に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサンと出会う。10年前に息子が行方不明となり、今は孤独に生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた──
https://gaga.ne.jp/titane/

これは頭をぶん殴られた。只々「とんでもないものを観てしまった…」と圧倒され、エンドロール終わっても緊張で身体が強張り席を立てなかった。

男らしさ/女らしさや、符号としての男性/女性ということへの違和感を持つ一方で、自分の体は(生物学的に)女性であると生活の中で強く感じさせられることへの嫌悪感とやりきれなさ。
男でも女でもなく、ただひとりの人間として、アレクシアとして認められた時、漸くその苦しみから解放されたのかなあ。

トラウマ映画が増えた。もう暫くは観ない。

◼️ベルファスト (ケネス・ブラナー)

ベルファストで生まれ育ったバディ(ジュード・ヒル)は家族と友達に囲まれ、映画や音楽を楽しみ、充実した毎日を過ごす9歳の少年。たくさんの笑顔と愛に包まれる日常は彼にとって完璧な世界だった。しかし、1969年8月15日、バディの穏やかな世界は突然の暴動により悪夢へと変わってしまう。プロテスタントの暴徒が、街のカトリック住民への攻撃を始めたのだ。住民すべてが顔なじみで、まるで一つの家族のようだったベルファストは、この日を境に分断されていく。暴力と隣り合わせの日々のなか、バディと家族たちは故郷を離れるか否かの決断に迫られる――。
https://belfast-movie.com

ストーリー展開はかなり王道で少し物足りない気もしたけれど、切り取ったどのシーンも"名シーン"として記憶に残るような映画。子どもの視点で見る牧師さんの説教のアングルや、おじいちゃんとおばあちゃんのダンスシーン、おばあちゃんのアップのカットなど、どれもこれも印象的だった。

おじいちゃんの哲学が個人的に好きだった。
「選択肢を増やせば、チャンスは増える。」はすぐ無意識下に追いやられてしまうので意識していたい。

『一緒に月に行かない?』と誘われたいね🚀

◼️川っぺりムコリッタ (荻上直子)

誰とも関わらず生きようと決め、
ボロアパート「ハイツムコリッタ」で
暮らし始めた孤独な山田。
底抜けに明るい住人たちと出会い、
ささやかなシアワセに気づいていく。
https://kawa-movie.jp

「食む」ことって生命感に満ちた行為でちょっとグロテスクだな、と。でも、弔うという行為はとても人間的だった。

それぞれの過去とそれぞれの弔い方。
生活らしい生活を完璧に再現することでどこまでもフィクションに感じられる矛盾。どのショットも計算し尽くされた物の配置に色合いで所々感心してしまった(烏滸がましい)。

「生きる」ことの延長にある「死」、という穏やかな死生観を観た。

2022年はあまり食指が動かず、そんなに新作を観に行かなかった。楽しみにしていたカラックスも私にはあまりハマらず…(アダムドライバー:推し が出ているのに⁉︎)。その代わり古い映画や先延ばしにしていた映画を色々観た。

その中だと「PASSION(濱口竜介)」や「大人は判ってくれない(フランソワ・トリュフォー)」が特に記憶に残っている。

あと「死霊の盆踊り(A・C・スティーヴン)」をはじめとしたZ級ホラー映画たちは2回目はないにしても観て楽しかったので良かった。

今年は買ったものの観ていないDVDを消化したいな。

おわり

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