映画が好きだと言うと、お薦めの映画や一番好きな映画について訊かれることが往々にしてある。その度に頭をフル回転させるが「好みに合わなかったらどうしよう」だとか、訊かれたのが映画好きな人だったら「試されてるのかな」とか余計なことを色々考えて適当に濁しがちだ。そして、その帰り道に「あれを言えばよかった〜」「こっちの方が好きそうだったかも」と反省するまでがワンセット。(訊いてもらえるの嬉しいです。とってもありがとう)
だから予めお伝えします。超主観的です。
でもだからこそ自信を持って好きを語れます😹
それでは早速、今年公開の映画より5作品。
◼️JUNK HEAD (堀貴秀 監督)
階層が下がるにつれ「人間味」は増し、肉体や生命を感じる。バーチャルとリアリティの対比。そして切に描かれた貧富の対比。知性と労働、交流。
人間らしいってなんだ?
慣れてしまって無意識下に追いやられていた問題意識に再び焦点を当てて問い直すような映画。制作期間約7年に納得の、細部まで作り込まれた世界。続きがあることを願います。
◼️ドライブ・マイ・カー (濱口竜介 監督)
本当に無駄のない、眩しい映画だと思った。
村上春樹の本は訳本以外はあまり得意でなく、でも今回は原作を読んでから臨んだ。あのまどろっこしくて、ひとつひとつを確かめる生真面目な文体が、読み合わせの様子に重なってなんかしっくりきた。内容がっていうのではなく書籍「女のいない男たち」と村上春樹を映している感じ。本の前書きにある通り、コンセプトアルバム的に要素を紡いでいる感じ。
作中の多言語劇から、翻訳という行為が孕む「同じ意味の言葉を用いたとしても、(ニュアンスなど)全く自分の思った通りに他者へ伝えることは難しい」という問題への答えを垣間見た気がした。
◼️WHOLE/ホール (川添ビイラル 監督)
当事者以外当事者になり得ない、限りなく中芯まで寄り添い「知る」ことはできても、真に「理解する」ことはできない。そのうまく言語化できないもやもやした感覚がバシッと映像になっていた。
外見から分かることなんて殆どないのに、ね。
◼️Shari (吉開菜央 監督)
監督がダンサーさんだからか、音の取り方が稀有で音の作り方も面白いなと思う。だから映画館で絶対に観たい!
慣れて麻痺した心にナイフを入れるように、ちっとも悲しくないのに涙が止まらない瞬間があって「これが心が震えるってことかあ」と、映画を観ながら自分を客観的に確認していた。
◼️偶然と想像 (濱口竜介 監督)
「寝ても覚めても」で好みじゃないかも、と思い苦手意識があったので、今年は濱口監督の作品の素敵さに(遅ればせながらも)気づくことができて良かった。
作り物の世界の中で、ごく自然に偶然が描かれていて、生活の延長を覗くような、それでいて画面の外にいることを意識させられる演出だったり「奇妙な時間」を過ごしました。
サブスクで観た過去作品の中だと、
◼️Why Are We Creative?(ハーマン・ヴァスケ監督)
話を聞きながら自分の思考をも整理する映画。
正解のない問いと、矛盾していたり共鳴していたり多種多様な考え。何歳になってもその時の自分に合った言葉が見つかるような、心強い映画。今この歳で観ることができてよかった。
アイデンティティだったりコミュニケーションだったり自分の関心が強くでちゃったかな、、
気になるものがあったら是非◎
来年もどうぞよろしく。