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映画記録:2021

映画が好きだと言うと、お薦めの映画や一番好きな映画について訊かれることが往々にしてある。その度に頭をフル回転させるが「好みに合わなかったらどうしよう」だとか、訊かれたのが映画好きな人だったら「試されてるのかな」とか余計なことを色々考えて適当に濁しがちだ。そして、その帰り道に「あれを言えばよかった〜」「こっちの方が好きそうだったかも」と反省するまでがワンセット。(訊いてもらえるの嬉しいです。とってもありがとう)

だから予めお伝えします。超主観的です。
でもだからこそ自信を持って好きを語れます😹
それでは早速、今年公開の映画より5作品。

◼️JUNK HEAD  (堀貴秀 監督)

環境破壊が止まらず、もはや地上は住めないほど汚染された。人類は地下開発を目指し、その労働力として人工生命体マリガンを創造する。ところが、自我に目覚めたマリガンが人類に反乱、地下を乗っ取ってしまう。それから1600年──遺伝子操作により永遠と言える命を得た人類は、その代償として生殖能力を失った。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり、人口の30%が失われる。絶滅の危機に瀕した人類は、独自に進化していたマリガンの調査を開始。政府が募集した地下調査員に、生徒が激減したダンス講師の“主人公”が名乗りを上げる。地下へと潜入し、〈死〉と隣り合わせになることで命を実感した主人公は、マリガンたちと協力して人類再生の道を探る。今、広大な地下世界の迷宮で、クセ者ぞろいのマリガンとの奇想天外な冒険が始まる!
https://gaga.ne.jp/junkhead/

階層が下がるにつれ「人間味」は増し、肉体や生命を感じる。バーチャルとリアリティの対比。そして切に描かれた貧富の対比。知性と労働、交流。
人間らしいってなんだ?

慣れてしまって無意識下に追いやられていた問題意識に再び焦点を当てて問い直すような映画。制作期間約7年に納得の、細部まで作り込まれた世界。続きがあることを願います。

◼️ドライブ・マイ・カー  (濱口竜介 監督)

舞台俳優であり、演出家の家福悠介。彼は、脚本家の妻・音と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻はある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう――。2年後、演劇祭で演出を任されることになった家福は、愛車のサーブで広島へと向かう。そこで出会ったのは、寡黙な専属ドライバーみさきだった。喪失感を抱えたまま生きる家福は、みさきと過ごすなか、それまで目を背けていたあることに気づかされていく…
https://filmarks.com/movies/93709

本当に無駄のない、眩しい映画だと思った。

村上春樹の本は訳本以外はあまり得意でなく、でも今回は原作を読んでから臨んだ。あのまどろっこしくて、ひとつひとつを確かめる生真面目な文体が、読み合わせの様子に重なってなんかしっくりきた。内容がっていうのではなく書籍「女のいない男たち」と村上春樹を映している感じ。本の前書きにある通り、コンセプトアルバム的に要素を紡いでいる感じ。

作中の多言語劇から、翻訳という行為が孕む「同じ意味の言葉を用いたとしても、(ニュアンスなど)全く自分の思った通りに他者へ伝えることは難しい」という問題への答えを垣間見た気がした。

◼️WHOLE/ホール (川添ビイラル 監督) 

ハーフの大学生、春樹は親に相談せずに通っていた海外の大学を辞め、自分の居場所を見つける為、彼の生まれ故郷である日本に帰国する。春樹は日本に着くやいなや周囲から違うものを見るような目に晒され、長年会っていなかった両親にも理解してもらえない。
ある日、春樹は団地に母親と二人で暮らす建設作業員のハーフの青年・誠に出会う。「ハーフ」と呼ばれることを嫌い、「ダブル」と訂正する春樹と違って、誠はうまくやっているようにも見えるが、実は国籍も知らず会ったこともない父親と向き合うことができない葛藤を抱えていた。様々な出来事を通して彼らは「HALF/半分」から「WHOLE/全部」になる旅を始める。
https://www.whole-movie.com/

当事者以外当事者になり得ない、限りなく中芯まで寄り添い「知る」ことはできても、真に「理解する」ことはできない。そのうまく言語化できないもやもやした感覚がバシッと映像になっていた。
外見から分かることなんて殆どないのに、ね。

◼️Shari  (吉開菜央 監督) 

羊飼いのパン屋、鹿を狩る夫婦、海のゴミを拾う漁師、秘宝館の主人、家の庭に住むモモンガを観察する人。彼らが住むのは、日本最北の世界自然遺産、知床。希少な野生動物が人間と共存している稀有な土地として知られ、冬にはオホーツク海沿岸に流氷がやってくる。だが、2020年、この冬は雪が全然降らない。流氷も、なかなか来ない。地元の人に言わせれば、「異常な事態」が起きている。 そんな異変続きの斜里町に、今冬、突如現れた「赤いやつ」。そいつは、どくどくと脈打つ血の塊のような空気と気配を身にまとい、いのちみなぎる子どもの相撲大会に飛び込む!「あらゆる相撲をこころみよう!」これは、自然・獣・人間がせめぎあって暮らす斜里での、摩訶不思議なほんとのはなし。
https://shari-movie.com

監督がダンサーさんだからか、音の取り方が稀有で音の作り方も面白いなと思う。だから映画館で絶対に観たい!

慣れて麻痺した心にナイフを入れるように、ちっとも悲しくないのに涙が止まらない瞬間があって「これが心が震えるってことかあ」と、映画を観ながら自分を客観的に確認していた。

◼️偶然と想像  (濱口竜介 監督)

「魔法(よりもっと不確か)」
撮影帰りのタクシーの中、モデルの芽衣子は、仲の良いヘアメイクのつぐみから、彼女が最近会った気になる男性との惚気話を聞かされる。つぐみが先に下車したあと、ひとり車内に残った芽衣子が運転手に告げた行き先は──。

「扉は開けたままで」
作家で教授の瀬川は、出席日数の足りないゼミ生・佐々木の単位取得を認めず、佐々木の就職内定は取り消しに。逆恨みをした彼は、同級生の奈緒に色仕掛けの共謀をもちかけ、瀬川にスキャンダルを起こさせようとする。

「もう一度」
高校の同窓会に参加するため仙台へやってきた夏子は、仙台駅のエスカレーターであやとすれ違う。お互いを見返し、あわてて駆け寄る夏子とあや。20年ぶりの再会に興奮を隠しきれず話し込むふたりの関係性に、やがて想像し得なかった変化が訪れる。
https://guzen-sozo.incline.life

「寝ても覚めても」で好みじゃないかも、と思い苦手意識があったので、今年は濱口監督の作品の素敵さに(遅ればせながらも)気づくことができて良かった。

作り物の世界の中で、ごく自然に偶然が描かれていて、生活の延長を覗くような、それでいて画面の外にいることを意識させられる演出だったり「奇妙な時間」を過ごしました。

サブスクで観た過去作品の中だと、

◼️Why Are We Creative?(ハーマン・ヴァスケ監督)

"Why are you creative?"「あなたはなぜクリエイティブなのですか」シンプルな質問を30年以上問い続けてきたドイツ人監督ハーマン・ヴァスケ。世界で活躍する"クリエイティブ"な人物に、この疑問を問う為の長きに渡る旅をまとめた1つのドキュメンタリー。
https://filmarks.com/movies/85479

話を聞きながら自分の思考をも整理する映画。
正解のない問いと、矛盾していたり共鳴していたり多種多様な考え。何歳になってもその時の自分に合った言葉が見つかるような、心強い映画。今この歳で観ることができてよかった。

アイデンティティだったりコミュニケーションだったり自分の関心が強くでちゃったかな、、
気になるものがあったら是非◎

来年もどうぞよろしく。

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