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ラブレター?

クリープハイプをきっかけに始めたことは沢山ある。

最近だと、CD党だった私がレコードプレイヤーを買ったのもそうだし、音楽が消費されるように感じて嫌悪感があったTikTokをインストールしたのもそう。始めてみると案外すぐに馴染むもので、食わず嫌いしてたなあと。

そんな私が今回新しく始めたのが、この「note」
クリープハイプはいつも新しい扉の鍵をくれて、背中を押してくれる。だから、その優しさに甘えてnoteを始めた私は、少しの緊張とワクワクを以てライナーノートを書く。

1『料理』

バンドが新曲をライブで演る時、言葉と音とを漏らさず聴こうと集中して結局曖昧にしか憶えていられないことがある。3月にガーデンシアターでこの曲を聴いた時もそうだった。だから、アルバムでこの曲を聴いて最初にしたのは「答え合わせ」。曖昧でも断片ははっきり憶えていて、あの時「愛の標識みたいだな〜」とぼんやり持った印象は間違いじゃなさそう(楽器隊の動きとか)。っていうのはMUSICAに正解が書かれているので100点でした。💮

曲の中での言葉遊びも、一人称を書かずにいつの間にか主体が変わるのも、尾崎さんの曲だ!とワクワクする。はじめのリムショットが包丁の音に聞こえたり、強火なサビだったり。歌詞だけじゃなくて曲そのものが料理をしてる!愛と平和を具材に、涙で味付けした料理はどんな味がするのかな?
ポコっていう音、私はガスコンロを点火する音に聴こえたよ。

2『ポリコ』

クリープハイプの曲は、タイトルを曲中で歌うものと、はっきり言葉にせず歌い込むものがある。何について歌っているのかじわじわ分かってくるのが謎解きみたいで好き。

でも……

ポリコってなんだ?こすったり走ったりしてるけど、隠喩?擬人法?ポリコがぽり子に変わるまでの間に何があった??初めて聴いた時、全く何もイメージが浮かばなかった。言葉を音で捉えて流れのままに楽しんじゃった。宮沢賢治的。文字通りの音楽をしました。ポリコのいない箇所は真っ直ぐで、クロールの息継ぎみたいに切実だった。

料理の後に聴いたからか「溝にこびり〜」が「味噌煮込みに〜」に脳内変換された。

3『二人の間』

相槌って漫才のツッコミとボケの緩急に似てる。
打ち込み特有の休符の無音が、その間が、音楽における相槌になっていて、だから、まぁなんかその、ちょっとあの、言葉にならない。そんな感じ。

4『四季』

配信リリースが続いていた頃、早く音をカタチとして受け取りたいな〜と待ち侘びていたのだけれど。尾崎さんのスマホのメモもちゃっかり保存していたけれど。実際にページを捲りながら活字を追って聴くとまた新鮮で驚く。何度も繰り返し聴いていても新鮮に受け止められること、四季と同じだね。

普段感じていても言葉にできなかった/しなかった様子を的確に言語化しているのが、やっぱり言葉のプロなんだなあと素直に感心する。「言葉」は誰もが使えるけれど、上手く使いこなすのは難しい。
「忘れてたら 忘れてた分だけ 思い出せるのが好き」
という言葉は忘れないでいたい。

5『愛す』

新しいのにどこか懐かしさと安心感があって、すっと馴染んだ。曲調が変わっても、クリープハイプであることは変わらないから、やっぱりクリープハイプらしい曲だなと思う。

伝えた言葉は誤魔化して、伝えられなかったことは何かのせいにして。遣る瀬ないけど、優しさは隠しきれない。

6『しょうもな』

照れ隠しのイジワルをゆったり歌った『愛す』の後に、そういうのは「もう流行らない」から『しょうもな』と自ら一喝。冒頭から一変するテンポに、余韻に浸っていた私の気持ちは置いてかれそうになる。時代に合わせて目紛しく変わる「普通」に置いてかれないように、でも自分を見失わないように、食らいつく。
自分で自分の変化に気付きたい。

7『一生に一度愛してるよ』

初期の曲ばかり聴いていた私は、悪戯がバレた子どもみたいな気まずさを感じたのだけど、そんなことを言いながらもCDを予約し、今こうしてプレイヤーで聴いているのは同棲(...クリープを聴くようになって)7年目の惰性ではなく、やっぱり今も昔も相変わらず(愛変わらず)好きだからで。

変わらないでいてほしいけど退屈はさせないで、なんて我儘だけど、一緒に歳を重ねていきたいな。
死ぬまで一生愛されてると思っていてね。嘘じゃないから信じてよ。

8『ニガツノナミダ』

制約の中の自由。否、自由は制約があってこそ成立し得る概念。
どんな選択をしたって後悔はするだろうから、何を基準に選択するか?ではなく、選択した道を自ら最善に変えていきたい。

そんなことを「それはそれで悪くないから ここはここ」という歌詞を聴いて想った。…とは言え現実はそんな簡単に割り切れないので、しぶとく残るアウトロの余韻に踠き溺れる。
やけ泣きして逆ギレしてやろう。

9『ナイトオンザプラネット』

私は自他共に認める映画好きで、去年は200本以上観た。中でもジム・ジャームッシュ監督は敬愛していて殆どの作品を観たし、勿論レトロスペクティヴにも行った。だからクリープハイプを知った時は勝手に運命を感じてしまったし、この曲は私の為の曲だと思っている。だって(ナイトオンザプラネットじゃなくてストレンジャーザンパラダイスだけど)額に入れたポスターを窓のそばの植物(サボテン)の隣に飾ってるし。

でも、誰かと二人で観たことはないから、その気持ちはいつかその時までとっておく。1位のまだ見ぬ未来の王子様の為にとっておく。そうしたら朝で溶かした甘さも分かるかしら?

話は逸れるけど、ジム・ジャームッシュ監督と尾崎さんの作品の作り方は似ている気がする。何気ない日常から紡ぐ、最小限で的確な言葉たち。散りばめられた秘密のパズルが日常の中でピタッとハマる、そういうところが似ている気がする。

10『しらす』

アルバムの楽しみの1つに、カオナシさんの新曲と出逢えることがある。尾崎さんの曲とは違った「クリープハイプらしさ」を内包していて、バンドの面白さを感じる。

声が出せないコロナ禍だからこそ、冒頭の踊りを皆んなで出来たら楽しいだろうな〜なんて美味しい妄想。

11『なんか出てきちゃってる』

きちんと締めていなかった蛇口から水滴が落ちるように取り留めなく思考が漏れ出て、たらいに ちびちび 溜まっていくような曲。

ループする曲は一人悶々として堂々巡りするみたい。だとしたら、途中のアレは思考停止させようとしているのか、はたまた、新しいアイデアが降ってくる様子なのか。

ベースがスチュアートゼンダーの時のジャミロクワイみたいで凄く好み。休符に緊張感がある曲が好きです。

12『キケンナアソビ』

核心には触れずに、周囲を浮遊し赤裸々に描く。尾崎さんの得意技ですね。
「そう」とか「この」とか「それ」だとか。曖昧だからこそ、聴いた人それぞれのリアルに結びつくんだと思う。

13『モノマネ』

この曲のMVは色々な〈モノマネ〉が隠れていて、映画のモノマネも沢山あったのだけど、ボーイズENDガールズの続きを作っちゃうなんて、音楽で映画のモノマネをしてますか?これは聴く物語です。

私はネタバレが苦手なので、色々書きたい気持ちを抑えてひとつだけ。特装版の歌詞集を行ったり来たり読むだけでぐっと歌の世界が広がる気がします。3分ちょっと、2曲合わせても6、7分なのに長い映画を観たような満足感。

14『幽霊失格』

幽霊は居ると思う。今年の夏、憧れで大好きな人を亡くした。だから居てほしい。心配、というよりも、不安な時や悲しい時の心の拠り所として居てほしいと思う。見守ってほしいと思う。
そんなことを思うなんて、見送る人として失格かしら?

物体として居なくなったとしても、残った人の生活は続き、生活に染み付いた記憶も残り続ける。その染みはなんてことない瞬間にこそ宿るから意地悪だ。
だけど、亡くなった人のことを思い出したら、その人の周りには花が降るらしい。忘れてたら忘れてた分だけ思い出したい。

15『こんなに悲しいのに腹が鳴る』

いい意味で〈らしくない 〉イントロにどきっとする。
冬の陽だまりのような優しさと哀しみを携えて、背中に寄り添う。

そうして1曲目『料理』の歌詞「なぜか腹が減る こんなに悲しいのに」に戻ってくる訳だ。
時計の針はぐるぐる周りまた同じ場所へ戻る。でも、どんなに繰り返しの毎日に思えても生きるということは日々変化するということで同じ一瞬は二度と来ない。そんな無意識下にあった諸行無常を思い出させてくれる曲。


これで私のライナーノーツは終わり。
相手のことを想いながら書くけれど、結局自己満足にすぎない、そんなラブレターに重ねて。
ベッドの上から愛を込めて。

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