差分和分について④【部分和分】

部分和分

積の和分

$${f(x),g(x)}$$について、次が成り立つ。

$$
\begin{align*}
\Delta(f(x)g(x))&=f(x)\Delta g(x)+f(x+1)\Delta g(x)\\
&=g(x)\Delta f(x)+g(x+1)\Delta f(x)
\end{align*}
$$

これを、積の和分の公式とでも呼ぶことにします。
証明は、以下のとおり。

$$
\begin{align*}
\Delta(f(x)g(x))&=f(x+1)g(x+1)-f(x)g(x)\\
&=\{f(x+1)-f(x)\}g(x+1)+\{g(x+1)-g(x)\}f(x)\\
&=f(x)\Delta g(x)+g(x)\Delta f(x)+\Delta f(x)\Delta g(x)\\
&=f(x)\Delta g(x)+g(x+1)\Delta f(x)\\
&=g(x)\Delta f(x)+f(x+1)\Delta g(x)
\end{align*}
$$

ちなみに積の微分は

$$
(f(x)g(x))^\prime=f(x)g^\prime(x)+g(x)f^\prime(x)
$$

だったので、上の式の3行目と比較してみると、差分の場合は$${\Delta f(x)\Delta g(x)}$$の項が追加されるという感じですね。

部分和分

積の和分の公式について、両辺の不定和分をとって移項することで、次が成り立つことが分かります。

$$
\sum \{\Delta f(x)\}g(x)\delta x=f(x)g(x)-\sum f(x+1)\Delta g(x)\delta x
$$

これを、$${\{\Delta f(x)\}g(x)}$$の部分和分といいます。

瞬間部分和分の前に瞬間部分積分

$${f^\prime(x)g(x)}$$の部分積分は、

$$
\int f^\prime(x)g(x)dx=f(x)g(x)-\int f(x)g^\prime(x)dx
$$

でした。ここで、$${f(x),n\in\mathbb{N}}$$について、

$$
\begin{align*}
\frac{d^n}{dx^n}f(x)&=f^{(n)}(x)\\\underbrace{\int\cdots\int}_{n}f(x)\underbrace{dx\cdots dx}_{n}&=f^{(-n)}(x)
\end{align*}
$$

とかくことにします。($${g(x)}$$も同様です。)さらに$${g(x)}$$が、ある$${m\in\mathbb{N}}$$が存在して$${g^{(m)}(x)=0}$$になるような関数(例えば、$${g(x)=x^2}$$は3回微分すると0になるので$${g^{(m)}(x)=0,m=3}$$)であるとします。このとき、$${f(x)g(x)}$$の部分積分を繰り返し行うことで、

$$
\begin{align*}
&\int f(x)g(x)dx\\
=&f^{(-1)}(x)g(x)-\int f^{(-1)}(x)g^{(1)}(x)dx\\
=&f^{(-1)}(x)g(x)-\left(f^{(-2)}(x)g^{(1)}(x)-\int f^{(-2)}(x)g^{(2)}(x)dx\right)\\
=&f^{(-1)}(x)g(x)-f^{(-2)}(x)g^{(1)}(x)+\left(f^{(-3)}(x)g^{(2)}(x)-\int f^{(-3)}(x)g^{(3)}(x)dx\right)\\
=&f^{(-1)}(x)g(x)-f^{(-2)}(x)g^{(1)}(x)+f^{(-3)}(x)g^{(2)}(x)-\cdots+(-1)^{m-1}f^{(-m)}(x)g^{(m-1)}(x)
\end{align*}
$$

とかけます。これを巷では瞬間部分積分というみたいです。他にもUSA式部分積分だとか、$${f(x)}$$を積分した関数と$${g(x)}$$を微分した関数を表のように並べて、符号をつけて掛け算をするのでテーブル法ともよばれているようです。

$${f(x)=e^{-x}}$$とすると、

$$
\int e^{-x}g(x)dx=-e^{-x}\sum_{k=0}^{m-1}g^{(k)}(x)+C
$$

となって、簡単になります。
ただし、このやり方が使えない関数もあります。例えば、$${f(x)}$$あるいは$${g(x)}$$が$${\log x}$$のときは利用できません。この場合は、$${u=\log x}$$と置き換えれば...ちょっと話が違う方向に逸れていきそうなので、ここでやめておきます。

瞬間部分和分

瞬間部分積分と同じことを、部分和分でもやってみようというのがここからの話です。(ほぼ同じ流れですが、1つだけ注意するところがあるので、そこだけ書き足します。)

$${f(x),n\in\mathbb{N}}$$について、

$$
\begin{align*}
(\Delta)^nf(x)&=f^{(n)}(x)\\\underbrace{\sum\cdots\sum}_{n}f(x)\underbrace{\delta x\cdots \delta x}_{n}&=f^{(-n)}(x)
\end{align*}
$$

とかくことにします。($${g(x)}$$も同様です。)さらに$${g(x)}$$が、ある$${m\in\mathbb{N}}$$が存在して$${g^{(m)}(x)=0}$$になるような関数(例えば、$${g(x)=x^2}$$は$${\Delta g(x)=2x+1,(\Delta)^2g(x)=2,(\Delta)^3g(x)=0}$$すなわち、3回和分すると0になるので$${g^{(m)}(x)=0,m=3}$$)であるとします。このとき、$${f(x)g(x)}$$の部分和分を繰り返し行うことで、

$$
\begin{align*}
&\sum f(x)g(x)\delta x\\
=&f^{(-1)}(x)g(x)-\sum f^{(-1)}(\bm{x+1})g^{(1)}(x)\delta x\\
=&f^{(-1)}(x)g(x)-\left(f^{(-2)}(\bm{x+1})g^{(1)}(x)-\sum f^{(-2)}(\bm{x+2})g^{(2)}(x)\delta x\right)\\
=&f^{(-1)}(x)g(x)-f^{(-2)}(\bm{x+1})g^{(1)}(x)+\left(f^{(-3)}(\bm{x+2})g^{(2)}(x)-\sum f^{(-3)}(\bm{x+3})g^{(3)}(x)\delta x\right)\\
=&f^{(-1)}(x)g(x)-f^{(-2)}(\bm{x+1})g^{(1)}(x)+f^{(-3)}(\bm{x+2})g^{(2)}(x)-\cdots+(-1)^{m-1}f^{(-m)}(\bm{x+m-1})g^{(m-1)}(x)
\end{align*}
$$

注意するべきところは、和分される関数$${f(x)}$$の引数が、変化していることです。部分和分の公式をもう一度思い出すと、

$$
\sum \{\Delta f(x)\}g(x)\delta x=f(x)g(x)-\sum f(\bm{x+1})\Delta g(x)\delta x
$$

のようになっていました。したがって、和分を繰り返すと、引数が1ずつ増えていきます。

部分和分と瞬間部分和分について説明しました。次回は、最終回として、実際に瞬間部分和分を使って問題を解いてみます。

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